ところてん

一昨日、「橙が実るまで」で田尻さんの記憶に触れ、自分の記憶につなげながら夜を過ごしていた。連日の猛暑でその夜もとても暑かったからか、夏の記憶ばっかり思い出して、近所のところてん屋さんや家族がやってた海の家、その近くのすべり台みたいなオブジェを懐かしく思っていた矢先に、妹からところてん屋さんの店仕舞の知らせが届いた。

ところてん屋さんは夏の間だけ営業する。家からは子どもでも歩いて1分で着く場所にあって、妹や弟、いとこと、祖父母にねだった100円王を握りしめて、きゃっきゃと通ってた。⁡店に入って左手に、銭湯を思わせる水色のタイル作りの水槽があって、四角くて半透明のところてんがぷかぷか浮かんでる。天突きを通してぬるぬるっと出てくるのが好きで、よくやらせてもらってた。最後のひと押しは難しいからどうしてもできないのだけど。涼し気な浅めのお椀で、おばちゃんに出汁とすりごまをたっぷりかけてもらって、割りばしで食べる。たまには一緒に冷やしてあるビー玉入りのラムネも飲んだり、家族の分も買って帰ったり。店の目の前には、みんなが「やまご」と呼んでる湧水があって、ところてんもラムネもこの湧水で冷やしてた。今の横浜生活では考えられない贅沢な夏を過ごしていたなと思う。

小学生の頃によく通ってたと思ってたけど、記憶をたどると、中学の部活帰りや高校の土曜日の半日授業の後に、制服のまま妹と行っていた記憶がよみがえってきた。⁡ここ数年は、お盆休みに帰省してもコロナで営業してなくて、とうとうみんなで話してた「来年こそは」が叶うことはなかった。大人になった今なら、テーブルの真ん中に置いてあった柚子胡椒だってつけて食べられるのにな。

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