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不老不死の薬と養老の滝

不老不死は、秦始皇帝が不老不死薬を探し求めた例をはじめとして、古来から人間永遠の願望のようである。始皇帝の命を受けた徐福が数百人を率いて日本列島のどこかにやってきたというのも伝説の域をでないようだが、弥生時代に多くの渡来人が稲作文化を持ってやってきたことを思えば、あながち荒唐無稽でもない。王朝の支配を嫌う者たちが、始皇帝を騙して船を手に入れて、新天地に向けて船出したという筋書きは小説としては面白い。不老不死の薬を求めた始皇帝は49歳で亡くなった。

実際に不死の薬ができたら人間はどうなるのだろう。長生きしたら不幸だと言ったのは17〜18世紀のイギリスの作家スウィフトで、ガリバー旅行記の中に登場するラグナグ国の不死人間ストラルドブラグの不幸について、彼らは一時代に2、3人しか生まれない稀有な存在であり、歳と共に心身が衰えるが、自分の子どもや知人は先に死んでいき、年を経るほど益々孤独化していき、心身が衰えた状態のまま永遠に生きなければならないとその不幸を記した。

不死が幸福とは相反する理想なら、せめて健康で長生きしたいということになる。養老の滝の昔話は、滝の水を飲むと病気が治り、元気になるが、水は酒だったという話だが、更に若返りの水になると若返りの効果があり、欲深い男が飲みすぎて皮肉にも幼児になってしまう。

かつて徳川夢声が若返りについて、今の心持ちを失わないで若くなるのは良いが、心もいっしょに昔の自分に戻るのは嫌だとテレビ番組で言っていた。常に自己肯定感を持ちながら生きてきたからこそ言えたのだろうと思える。かつての自分より、長年成長を続けてきた今の自分がよいと思うことは素晴らしいことだ。

歳とともに次第に身体は衰えていく。心はいつまでも前向きで意欲的であるのがよい。きっとそうすれば身体が衰える速度も遅くなることだろう。心の元気が大切だ。



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