スカイツリーからの眺め
展望デッキに着くと、空気がどんよりとして厚い層をなし、景色は霞んでいた。はっきり見えるのは墨田区や隅田川の対岸の台東区の浅草辺りだ。
大横川が真っすぐ南に伸びている。その左側のうす緑色の大きな四角い建物は、日本たばこ産業で、戦前明の古地図を見ると異常に広い専売公社の工場地があり、改めて広大な建物だと再認識した。四ツ目通りが南に走っている。錦糸公園が見える。長年親しんだ街並みが見える。
北十間川が中川へと流れ、途中で横十間川と交わっている。旧中川が蛇行するのが分かる。イトーヨーカドーのハトの赤い看板が見えるので、この辺りが京成曳舟駅のようだ。曳舟川通りがはっきり分かり、先の方に水戸街道が荒川の方に走っている。荒川に架かる四つ木大橋や木下川橋が見える。知っているからこそ分かる向島百花園の緑。一軒一軒の家も墨田区住民にはわが家と分かるに違いない。
江戸東京博物館がある。遠くのビルは認識できない。ただ東京ドームは光輝いているので、気づきやすい。新宿ビル群は特色あるドコモのビルや都庁舎は分かるが霞んでいる。隅田川の吾妻橋のアサヒビールの觔斗雲(金斗雲)が見える。清洲橋、隅田川大橋、永代橋の向こうには月島のビル群があるが、中央区までの距離で、すでに霞んでいる。
スカイツリーは近くの景色を認識するには優れた展望台であり、眼下の墨田区を鳥の目で俯瞰することができる。しかし、天候が良くなかったせいか、遠景はかすんでいた。
塔とは、遠くを見るためのものだろうが、この日は、遠くは知覚的な認識ができず、近くだけが認識できた。遊覧飛行ならば、遠くに飛べるが、目が景色の動く速さについて行けず、結局景色を具体的には認識できない。スカイツリーは、立ち止まって、ゆっくりと近くの景色を眺め楽しむだけのものなのだろうか。せめて富士山が見える空気の澄んだ日に来れば、また印象は違っていたのだろうが。
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