中学校技術・家庭科技術分野の現状について

はじめに

プロフィール欄にも載せていますが、私は、中学校理科(専修)と中学校技術(1種)の教員免許を持っており、現在勤務校で理科と技術を教えています。大学4年間で技術教育を専門に学び、理科教育も同時に学んで免許を取りました。大学院2年では理科教育を専門にやりました。そんな変な経歴です。

先日の文部科学省の発表によると、現状、中学校技術で4人に1人は正規の免許を持たずに教えている現状から、令和10年度を目標に免許外を0にしようということのようです。

これに、JSTEも意見を表明しています。

個人的な雑感

「…まぁ、いいんじゃない?」

ただ、今更感がありますけどね。

「技術・家庭科」という教科

中学校技術・家庭科の技術分野は、そもそも、その成立過程から家庭分野と抱き合わせです。(抱き合わせ、という表現が正しいかは議論があるかもしれません)
そのため、基本的には技術科と家庭科が別々の免許で別々の教員が教えますし、成績も「技術・家庭科」としてつけます。

これは、昔は、同じ時間に男子が技術科、女子が家庭科を学んでいた時代があったからだと認識しています(男女別修)。
現在は、男子であろうが女子であろうが両方を履修します。(自分自身は男女共修の時代)

ちなみに、記事を書く上で、男女共習?男女共修?となったのですが、Wikipediaに男女共修の項目がありましたので、そちらに合わせています。
なんとなく、いつもは男女共習の方をつかっているような気がする。
とはいえ、「男女共しゅう」自体ほぼ死語で、普段は使いませんが。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B7%E5%A5%B3%E5%85%B1%E4%BF%AE

昔は、男女別々に履修していたので、「技術・家庭科」は男子は技術科、女子は家庭科の成績がついていたため、何の問題もなかったはずです。
しかし、現在では、全員が技術も家庭も履修するので、成績は両方の教員が各分野の履修状況を鑑みて成績をつけます。したがって、「技術はいいんだけど、家庭がね…」とかその逆が起こったりします。

もし、文科省が本気で技術分野にテコ入れする気があるのであれば、現状に合わせて「技術科」「家庭科」に分離させるべきなんだけどな…と思っています。ホントは男女共修になった時点で分離しとけばよかったのに。同じ教科のまま、ズルズル35年も経ってしまいました。
まぁ、当時は当時で事情があったのかもしれません。
あと、誤解を避けるために書いておきますが、「技術・家庭科」としての状態が嫌なわけではありません。「そうすべきだ!」と強く分離を勧める気持ちがあるわけではなく、別に現状のままでも構わないのですが、ただ、本来的にはそうだよね、という話です。そこに何かしらの感情的なものは存在しません。

時間数の問題

現行の学習指導要領において、技術分野では中学校1年・2年は週1時間、中学校3年は週0.5時間となっています。

0.5時間?と思うかもしれませんが、「技術・家庭科」としては週1時間です。つまり、隔週で技術と家庭を行うイメージです。

まとめて履修するケースもあります。4月は技術、5月は家庭、とか、前期は技術、後期は家庭、みたいな…まぁ、あんまり例はないと思いますが)

技術の履修内容は、4領域あり、材料と加工の技術、生物育成の技術、エネルギー変換の技術、情報の技術です。技術・家庭科の技術の部分を技術「分野」と呼ぶ関係で、これらは「領域」と呼びます。多岐にわたる領域の内容を週1時間や0.5時間で教えていかなくてはなりません。指導要領上は全て履修することになっており、履修は可能といえば可能ではあるのですが、内容を深めていく余裕はなく、様々な工夫を凝らしながら、浅く、広く教えているのが現状です。
……異論はあるのかもしれませんが、少なくとも自分はそうです。もっと教えたい内容があるのにな、と思いながらやっています。「いや、こうすれば深く広く教えられる!」という方は連絡をください。ぜひやり方を教えてもらいたいです。

これも、高度経済成長の中で必要とされていた教科だった「技術」という科目のあり方が変わってきたため、時間数を減らしてきたためであると認識しています。その割に、教える領域の内容は減らず、むしろ、情報のように新しく履修するようになったものもあり、時間数は減る、やる内容は減らない、といういつもの文科省の感じのやつです。
近年は、IoT、AIなど、社会の情報化によって情報の技術の領域の重要性が増してきていますが、時間数は増えません。

しかも、教える当事者としては、どの領域も1つ1つしっかりやると深い内容なのでその領域の必要性とか面白さとかをちゃんと伝えようとすると時間が全然足りません。当然のことながら、その領域をちゃんとやろうとすると、内容的に難しい部分があったりする(そこがその領域の面白い部分でもある)ので、しっかり伝えようとすると時間がかかるのに時間はない、という……。教える内容と時間数がもう、全然ちぐはぐで、何を教えたいのかを見失いそうになります。

最後に

文科省の、免外が4人に1人という現状を公表し、改善しようという発表は素晴らしいと思いますが、本質的な問題はどこか、というところにメスを入れてもらえると更によいと思います。

技術科の時間数がほとんどない現状の一方で、STEAM教育の推進、みたいなことを言われても……という気持ちがあります。本来は自分は一人でSTEまでは専門的に扱えるので、「STEAM教育の推進?望むところだ!」という立場ではあるのですが、なんというか、ブレーキ踏みながらアクセルも踏もうとしてる感じがすごくします。

推進するなら、「推進するよ」と表明するだけでなく、それなりに制度を整えて欲しいものです。

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