GoogleClassroom とMoodle (3)

※パスワードまわりに多少追記をしました。例示をしてあります。大筋では変わっていません。(2020/09/18)

さて、そんなこんなで現在のところ両方使っているわけですが、両方使っている身からするとどっちにも利点と欠点があるなぁというところ。(1)では触れていなかった部分についても触れたいと思います。

前提条件

本題に入る前に前提条件を示しておきます。
<Google Classroom>
私の所属している自治体の導入したG Suite for Educationは
・アカウント名が「連番@自治体のサーバ」のメールアドレス形式だがG mailの機能が切られている
・初期パスワードが「@以前の連番+サフィックス」(サフィックスは全員共通で申し訳程度のもの)というセキュリティ的にどうなんだという運用
(変えられるので、うちの中学では授業の中でセキュリティの話とともに変えさせました)
・どうもOAuth2を切られている(生徒アカウント管理用の管理者アカウントも配られたものの、Google API ConsoleでOAuth2を有効にできないのでどうやら更に上の権限で切られている)
・他にも切られている機能がある(Googleサイトとか)
・MeetはON

●(参考)G Suite アカウントでログインできる Moodle 3.5.9+ を業務効率化のために導入した話 (Qiita)
https://qiita.com/k-kana/items/0269d1f831483c39f3e7

<Moodle>
・出身大学の出身研究室に置いてあるサーバ(当然グローバルIP)にインストールしてあるもの
・ある程度カスタマイズは効くものの、セキュリティ上の理由から大学まで行って操作する必要があるので、めんどくさい
・別にサーバを立てて運用予定

GoogleClassroomの利点

まず、1つ目はUIがモダンだということ。Moodleも頑張っていると思うんだけれど、大昔に静的なUIからスタートしている関係か、いまいちモダンさが足りない。
あ、(1)で触れていた、Remi UIは、Moodleに導入しました。高かったけど。だいぶいいと思います。

2つ目はG Suiteの一部なので、GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシート、Googleスライドなどが統合されているところ。
これは大きい。課題をGoogleドキュメントで作成して、個人個人にコピーで配布、配布された側は編集して提出、提出されたものを先生が採点(ルーブリック/評価基準を設定しておいてワンクリックで評価も可)、コメントを入れるなりフィードバックして返却、生徒側は返却されたものの評価やコメントなどのフィードバックを確認したりできる。といったオンライン上で完結するフローが用意されている。

3つ目は、なんてったってGoogleのサービスだということ。サーバの安定性をはじめ、セキュリティ的にも(サービスとしては)高い。
ただ、前述のようにうちの自治体では運用が微妙なのでせっかくのGoogleのサービスも霞んでしまう。

4つ目は3つ目と被るが、将来的にMoodleよりもG Suiteを使用している企業が多いだろう(推測)ということ。G Suiteで慣れていれば、生徒が企業に就職した際も、0からのスタートではなく、「あ、これ学校でやったやつだ」となることが期待される。(まぁ、学校でちゃんとやることが前提ですが)

5つ目。Google Meetがある。Zoomのような使い方ができる。現状、Meetを使うのは(生徒側の環境面や、授業で使うとして効果的な使い方かどうかで)厳しめだけれど、機能としてあるのは大きい。Moodleだと標準では用意されてなくてBigBlueButtonとか別サーバで用意して、連携すれば可能なようだけれど、敷居は高いよね。

Google Classroomの欠点

お次は欠点。

1つ目は、拡張性に乏しい?こと。
前の記事で触れたように、別アプリとの連携ができるようだけれどG Suiteに標準として用意されていないのはやっぱり手をだしにくい。
うちのように、ガチガチに権限を絞られていると多分うまく連携もとれないのではないだろうと思われるので、プレーンな状態で使うしかない。

2つ目は、課題の種類が少ないこと。
Moodleは標準でたくさんの課題モジュールがあるので、必要に応じて課題モジュールの種類を選んで使うことができる。「この課題にはこのタイプのモジュールだな」という感じ。

3つ目。前も述べたけれど、生徒の行動の追跡性は薄い。
やったか、やってないかくらいは大丈夫だけれど、「いつ」「何回ぐらい」アクセスしたのか個人で追ったり、集団で追ったり(よく見られているコンテンツはどれか)みたいなことから授業コンテンツを改善することが難しい。「このコンテンツはいまいち反応がよくないな」とかね。ただ、これもインターネットが今ほど普及していなかった時代からあるMoodleとここ最近のネットの流れから出てきたG Suiteのありかたとで、プライバシーだなんだとかを考慮しているのかもしれない。

うちの自治体のG Suiteの問題点

ここからは、G Suite全体ではなくて「うちの自治体」の問題点を述べます。

1つ目。Gmailが使えません。義務教育段階で、メールアドレスを学校が付与するということに消極的なようです。無用なトラブルを避けるとかの意図があるのでしょうが、それは分からんでもないんだけど、個人的には、別にそれ止めてもプライベードでLINEだTwitterだ何だとトラブルが起こるので、一緒だと思います。どうせインターネットサービスのよろしくない使用をしたときには、指導するのだから、学校のアカウントで何か起これば、学校のアカウントなら一定期間停止とか、措置が取れるのになぁと思っています。効果があるかは別だけれど。あと、一応、ed.jpドメインなので、教育機関に属している証明にもなるでしょう。アカデミックパッケージがあるようなソフトウェアをオンラインで購入するなどできるはずです。
また、保護者への一斉連絡に現在はメールを使用していて、専用ソフトを使ってはいますが、とどのつまり、メールソフトでメール送っているという前時代的なものなので、登録作業や変更作業、キャリアメールとかだと届かないとか、迷惑メールに分類されているとか煩雑すぎるので、Gmailを有効にして、メールアカウント配布にして、保護者の使ってるスマホとかにGmailの設定をしてもらうだけでいいと思うのです。
専用ソフトなんていらないし。これだけで安くない更新費用かかるのですよ?デメリットに対してメリットが大きすぎるのにやらない理由が分かりません。

2つ目、パスワードの問題。前述のようにパスワードがパスワードの役割をしていないです。情報教育の観点からすると、ここが致命的だと思います。
アカウント名が連番なのはしょうがないと思います。アカウント名はメールアドレス(Gmail使えないけど)だから、公開前提としていいでしょう。
問題はパスワードが、「アカウント名の@以前+サフィックス」(サフィックスは全員共通)というものなので、アカウント名がわかれば、パスワードも分かってしまうという、言ってしまえばザル仕様。

これが、どのくらいザルかというと、

例:
自分のアカウント 0000@test.ed.jp
自分のパスワード 0000xxx

出席番号が自分の次の人のアカウント 0001@test.ed.jp
出席番号が自分の次の人のパスワード …書かなくても分かりますね?

※当然ですが実運用のものとは違います(ほとんど同じですが)

他者に公開前提のメールアドレスからパスワードが「推測できてしまう」ことが問題です。ひどいと、メールアドレスの数字を打ち間違えたから、違う学校の子のアカウントに間違って入るなんて事例も(実際うちで)ありました。
厳密には不正アクセスなんじゃないかと思うのですが、まぁ同一自治体の配布するアカウントの中だからよしにするのか、どうなのか。
意図的でないにしろ、原理的にそういう間違いは起こってしまうはずなので、どうかと思っています。
たちが悪いのは、中学校技術科でセキュリティについて教えなければならないのですが、そのときに、もちろんパスワードについても教えます。
「他人に推測されにくいものにしましょう」という指導をするのですが配布されているアカウントが既にそれを守っていないというのはいかんともし難いです。(追加で言うなら「数字だけのパスワードをやめましょう」とも言う)
まぁ、うちの学校では私の技術の授業でアカウント配布とパスワード変更をさせました。ただでさえ少ない技術の授業で半ば必須とも言える指導をしなければいけない(そして、きちんとやればその必要はない)のは釈然としません。必要だからやりますが。
そういう学校ばかりではないだろうし、小学校だとそういうのに明るい、危機意識をもっている先生もいるとは限らないから、難しいと思います。
また、お家の方にも、セキュリティに詳しい方がいらっしゃるはずで、そういう方からすれば、「学校から来たこのアカウントのパスワードは何だ?」となりかねません。信頼を失うだけだと思うのですけどね。
そういう方は自分のお子さんはきっちり変えるので問題ないとは思いますが、学校に言ってきてくれればいいんだけど、言ってはこないだろうなぁと思います。
この辺の話は上にも報告して、文書まで作って送ったのですが、特に改善の指示はきませんでした。分かってなさすぎる。正直言って失望しています。
こういうときの解決策は、アカウント作成段階でランダム文字列にして配布することですが、そうしなかったのは、きっと児童生徒がパスワードを忘れるからだろうとは思います…。
再発行のスキームもあるので、バンバン再発行させればいいと思いますけどね(実際、うちでは「忘れた」って子が結構います。「わかった。再発行するからおいでー。」と、再発行にも抵抗がなくなるように指導をしています)実際、プライベードで何らかのサービスを使うときもパスワード再発行するようなこともあるだろうし。
この点に関しては、手順を踏ませることが経験になるのでよしにしていますが、休み時間に再発行してくれって言ってくる生徒はまずいません。全員に環境が保証されている授業の中で使う練習をさせているのですが、そうすると、授業中に「パスワードを忘れた」と言ってきます。
それはそれで、こっちで「アクセスできていない生徒」を把握するという点ではよいですが、余計な仕事がふえるし、それだけでほぼ毎回授業時間を5~10分はもっていかれるので不満点ではあります。
まぁ、パスワード管理をしっかりさせる、のも生活指導だと思って割り切ってやるしかないでしょうか。

3つ目。まぁ、これは個人的に、ですが、OAuth2が切られているというのが痛いです。Moodleの認証をOAuth2でG Suiteで行えれば、アカウントの共通化ができ、両方のいいとこどりをスムーズに行えるのですが、(そして、OAuth2を体験させることにもなる)残念ながら切られているようです。
まぁ、これは、教員とはいえ、エンドユーザーに好き勝手なことさせないようにするという意味では正しいと思いますが、使いたかったな…。
要望はあげても聞き入れられるとは思わないので、言わない。
どうせMoodleは(私は)使うので、生徒はアカウントを2つ持つことになります。まぁそれも勉強ということでいいけれど。いろんなサービスでアカウントをもつなんて、ザラですしね。

Moodleの利点

ここからはMoodleです。

基本的にはGoogleClassroomで挙げたものを裏返す形になると思います。

1つ目は、GoogleClassroomに比べて拡張性があること。
プラグインで機能の拡張ができます。まぁ、よく使われるプラグインは決まっているようです。私は「Level Up!」という、閲覧や投稿などにポイントをつけて、レベルアップさせるというプラグインとかを入れています。
Classroomはそういう遊び心のある機能はないかなぁと思います。

2つ目は、課題の種類が多いこと。
Moodleは標準でたくさんの課題モジュールがあります。最近のMoodleだとH5Pプラグインが標準に入ったので、インタラクティブ性のある活動を取り入れることもできます。

3つ目は生徒の行動の追跡がかなりできること。
プライバシーの問題があるかもしれませんが、行動の追跡は結構なところまでいけます。前にも書きましたが、根本の理念に構成主義があるので、生徒がどのように感じ、何を学んでいったのか、というのを大事にしている感じがします。トラブルがあったときも、ある程度解決しやすくはなりますしね。

Moodleの欠点

1つ目はUIですかね。悪くないけれど、モダンさはやや欠けます。
Remi UIを導入したという話をしましたが、結構よいです。
ただ、日本語化がされていないので、こっちで言語パックの修正をしましたけれどね。まぁそういうことができるのはよいところですが。
日本語化も、Moodle上のWebインターフェースでできます。

2つ目はセキュリティ面でしょうか。私が使用しているのは自前のサーバー(研究室のだけど)だったので、融通は効きますがサーバーのセキュリティ上の設定は全て自前でやらなければなりませんでした。
もっとも、穴があれば大学の情報センターが逐一セキュリティ的にまずいよ!と言ってくるので、そこを塞げばある程度はセキュリティは確保できますけれど。
10年以上もやってると、「そこまで細かく言ってくる?」というところまで突っ込まれた(いや、いいことなのだけれど)勉強にはなりましたね。
ムカッときたこともあるけど。

3つ目は、LMSの中ではMoodleはかなりのシェアがあるようですが、きっとG Suiteには勝てないでしょう。勝つ必要もないのですけれど、Moodleでやったことも他サービスで活用できるように指導していかなければなりません。

終わりに

長くなりました。自治体で入れたG Suite for Educationへの愚痴みたいになっている部分もありますが、基本的にGoogleClassroomもよくできていると思っています。Moodleも負けてはいませんが。

一応、自分のところでは目的に応じて両方使っています。
GoogleClassroomで全部できるようになればいいのでしょうけどね。

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