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「理解できない」と言える強さ

この記事は3年前に執筆されたものの転載です。

Jeff Bezos、Bill Gates に続く、世界で三番目の大富豪である Warren Buffet が CNBC によるインタビューでビットコインについて尋ねられた時の答えが、とても心に響いたので紹介します。

We don't own any, we're not short any, we'll never have a position in them. I get into enough trouble with things I think I know something about. Why in the world should I take a long or short position in something I don't know anything about. 

株の取引に関する専門用語がいくつか出てくるので、少し分かりにくい英語ですが、直訳すると、「ビットコインはまったく所有していないし、空売りもしていない。今後もいずれのポジションを取る気もない。私は自分がそれなりに知っているものでさえ十分に苦労しているのに、なぜ何も知らないものに対してポジションを取らなければならないんだ?」となります。

ちなみに、long とは株の値上がりを期待して株を保有することで、short とは株の値下がりを期待して株を空売りすること(自分では持っていない株を借りて売り、しばらくしてから買い戻して返済すること)です。そして「ポジションを取る」とは、株の値上がりもしくは値下がりを期待して、long もしくは short をすることです。

文中で「自分がそれなりに知っているもの」とは、彼の会社(Berkshare Hatherway)が株を所有するコカコーラやAppleのことであり、「何も知らないもの」とはビットコインのことです。

Warrent Buffet が経営する Berkshare Hatherway は、GEICO(保険会社)、コカコーラ、American Express、Wells Fargo(銀行)、IBM、Apple などの会社に投資することにより成長してきた持ち株会社で、時価総額は今や $580 billion(約60兆円) です。

彼の投資戦略は、会社の財務諸表を徹底に読みこなし、明朗な会計(つまり誠実な経営者)と健全なキャッシュフローを持つ会社の株を(適正価格より)安い時に買って長期保有すると言う非常に堅実なもので、多くの投資家たちから尊敬されています。

インターネットバブルや不動産バブルにも決して踊らされることなく、逆にリーマンショックで市場が完全に冷え切ったタイミングで資金繰りに困っていた Goldman Sachs に資金を提供し、その見返りに短期間に巨額の利益を上げることに成功しています。テクノロジーに関しても非常に慎重で、Apple に投資をしたのも、利益の割には株価が伸び悩んでいた2016年になってのことです。

そんな Buffet から見れば、2017年末のビットコインの高騰はバブル以外の何ものでもなく、当然、投資(long)の対象にはなりません。とはいえ、ビットコインのように適切価格が存在しないものに対しては、たとえバブルが膨らんだからとはいえ、空売り(short)の対象にもならないのです。

ここで注目すべきなのは、Warren Buffet ほど経済や会社経営に詳しい人が、ビットコインを「私には理解できないもの」と表現していることです。本当に頭の良い人、自信のある人だけが、自分が知らないもの、理解ができないものを正直に「知らない」「理解できない」と言うことができるのです。

ビットコインに関しては、それに適正価格が存在しないことと、価格形成が人々の欲によるバブルであることだけが確実で、そのバブルがどこまで膨らむのか、そしていつ崩壊するのかなど誰にも分からないのです。

分からないものを分からない、知らないものを知らないと堂々と言える強さを、私自身も持ちたいと思いました。

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