【荻上チキ・Session 文字起こし】「放送法をめぐる文書、総務省が「行政文書」と認める」(デイリーニュースセッション)【2023.03.07(火)放送】

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(南部)
~放送をめぐる文書・総務省が行政文書と認める~
松本総務大臣はきょう記者会見で放送法の政治的公平の解釈に関する文書について、
全て総務省の行政文書であることが確認できたと明らかにしました。
文書は立憲民主党の小西参院議員が公表したもので、2014年から15年にかけ当時の安倍政権の元で、磯崎総理補佐官が報道番組でコメンテーター全員が同じ主張をしていたとして問題視し、1つの番組でもおかしい場合があるのではないかと総務省に対して放送法の事実上の解釈の見直しを求めたとしています。
総務省は午後に、この文章をホームページ上で公表。
ただ、内容については一部正確性が確認できない部分もあるとしています。
一方、この文書が捏造と指摘していた高市経済安保担当大臣は、きょうの記者会見で『自らについて書かれた4枚については内容の正確性や作成者・日時が確認できない』とし、不正確であると断言しました。
 
(荻上)
それでは立憲民主党の小西議員が提示した放送法を巡る文章、こちらを総務省が行政文書と認めたというこの動きについて取り上げます。
TBSラジオ国会担当の澤田大樹記者です。澤田さんこんにちは。
 
(澤田)
こんにちは、よろしくお願いします。
(南部)
おねがいします。
 
(荻上)
さて文章の中身についてはまたのちほど紹介しますけれども、文章をめぐるやりとりの経緯・いきさつはどんなものだったんでしょうか。
(澤田)
はい、元はですね、先週立憲民主等の小西洋之議員が記者会見をしまして、総務省から内部文書を入手したということで、それが放送法の解釈変更にかかわるやり取りが記された文章ということで、それをメディアに対して示したと。それをもとに、先週金曜日ですかね、総理および関係閣僚に質疑を行ったという流れですね。
(荻上)
なるほど、小西議員、この文書の公開をもって、どういったところを問題氏しておるのでしょうか。
 
(澤田)
はい、放送法の定めている政治的公平性に関する解釈について、当時の政権…2014年から2015年にかけてなので、安倍政権の政権幹部が、解釈変更にどうも関わったんじゃないかということを問題視しているということですね。
 
(荻上)
なるほど。まあそれまではその局放送全体として見るとされていたものが、個別の番組ごとに見るという余地を残すようなそういうような解釈というものを補足するという向きになったわけですね。
で、この文章が出てきた際に先週の金曜日3月3日参議院予算委員会でこんなやりとりがありました。
立憲民主党の小西議員と、当時総務大臣で現在では経済安全保障担当大臣の高市早苗大臣とのやりとりです。
 

(高市)
その…小西議員がですね、入手された文章の信憑性について、私は大いに疑問を持っております。
あの、一冊読んでおくようにということで自分の名前のあるところだけを見ました。
安倍総理との電話がどうのこうの、ただ(日時不詳)と書いてある何月何日に私と安倍総理が電話をしたか、それすら書かれてませんよね。
で、あの。申し上げますけれども。官邸からもしレクを求められたら私は参りますけれども。放送法について私は安倍総理と何か打ち合わせをしたりレクをしたことはございません。
で、もしも私と安倍総理の電話の内容がですね、そのような文書に残っているとしたら、電話に安倍総理が何をおっしゃったかなんてのは入らないはずですので全くそれは捏造文書だと私は考えております。
そのような話をしたこともないし、特定の番組名を伺ったことすらございません。
(小西)
仮にこれが捏造の文書でなければ、大臣そして議員を辞職するということでよろしいですね
(高市)
結構ですよ
あのー、じゃあ私もですね、小西議員からいただいた資料を見ましたけれども、私の名前出てくるの4枚だったと思うんですが、私が行ったとされる発言について私はこのようなことを言ってませんし、当時の秘書官も同席してましたので確認しましたが言ってません。
言うはずのないことがたくさん書かれております、非常に悪意を持って私を辞めさそうようとしたのかどうか分かりませんが、これは作られた文章だと思います。

 (荻上)
と、このように先週の段階で高市議員はこの文章が捏造、あるいは悪意を持って作られたのかどうかそういったような文章だと言うふうに述べたわけですね。
それを踏まえて総務省の方でこの文章がそもそも行政文章なのか再確認するというようなことがあって、今日の記者会見、松本総務大臣と高市大臣それぞれの会見をお聞きください。

(松本総務大事)
小西議員が公開した文章については全て総務省の行政文書であることが確認できましたので・・・」
(高市大臣)
「きっちりと調べて、4枚については内容が不正確であるということについて、確信を持っております。」

(荻上)
はい、ということで、“行政文書として認められた”、 だから何かフェイクの情報とかフェイクのペーパーを持って質問したというわけではなくて間違いなく総務省が作ったペーパーを質問しているということはわかった。ただしその内容については高市大臣は不正確ではないかということを言い続けているということでした。
今日の動き澤田さんいかがですか。

(澤田)
はい、まああの、この文書についてはほぼほぼ、総務省が作ったものであろうということは先週の時点である種わかっていたというかですね、えーと松本大臣も内容が不正確という趣旨のことは先週の答弁の時点でも言っていたんですけれども。
偽物であるとかですね捏造であるということは松本総務大臣の方は言ってないということでかなり精度の高いものであろうということはわかっていたのは、やはりそうだったということがわかったということですね。
 
(荻上)
そうですね。松本総務大臣に関しては基本的には精査が必要な場面があるとは言っていたけれども行政文書でないというふうには否定はしてきませんでしたね。

(澤田)
そうですね。小西議員のサイドが総務省から入手したということは言っているので、まぁ、ほぼ間違いないんだろうということではあったということですね。
 
(荻上)
今回のこの政治的公平に関する文書、これが総務省の公文書であるということがわかりそして行政文書公表されたんですが、その中身というのは澤田さんいかがですか。

(澤田)
当時の安倍政権で総理補佐官を務めていた磯崎耀介氏…今落選中なんですけれども、彼が放送法のその…政治的公平の部分について解釈の変更を求めていったと。
で特に、特定の番組…まあTBSテレビのサンデーモーニングなんですけれども、そちらを例示しながら、そこの解釈の変更を何度も面談しながら求めていったというののやり取りが割と本当に細かく書かれているということですね。
 
(荻上)
生々しいやり取りが相当ありまして、例えば磯崎補佐官がサンデーモーニングの放送後ツイッターで連投した後、様々な総務省関係者を呼び出して、そこでいろいろなことを指示を出したり、ヒアリングを行っているということが長らく続いている、というペーパーですね。

(澤田)
はい、そうですね。で、その中で、官邸の中でも止めようとしていた人がいたり。それが当時の山田総理秘書、官元総務省出身で菅内閣だったらしくは内閣広報官とかもやられてた方ですけれども、その方が止めようとしていてですね、その中で総務省と折衝を持つ中で、いやあの『磯崎保佐官は官邸内で影響力はない』ということを喋っていたりとかですね、結構細かく書かれていて。あの…例えば『今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか』というような言い方をしながら、させないように止めようとしていたというかですね。
どうやったら止められるかみたいなやり取りをしているというような動きがあったりだとか、やはり総務行政に割りと精通している当時の菅官房長官には情報を入れないようにするだとか、そういうやり取りが入ってますね。
 
(荻上)
はい。元々この磯崎当時保佐官が相当前向きに、この放送法の解釈を変えようということで度々アプローチを行っていた。
で、秘書官も磯崎総理保佐官室の保佐官も、たまにレクチャーする場面にあったんですが、今朝は磯崎氏が疑心暗鬼となり激昂するような結果になっていたなど、相当感情的に磯崎氏が振る舞っていたということも記されたりしていますね

(澤田)
そうですね。

(荻上)
一方で今指摘があったように、官邸側というのはこの段階ではとても慎重で、「これは言論弾圧ではないか。どこのメディアも萎縮するだろう」というふうにちょっとこう引いた目線で述べつつこういうのことも述べている。
『総理はよくテレビに取り上げてもらっており、せっかくうまく言っているものを民主党が岡田代表の出演時間が足りないと言い出したら困る」みたいな。
時間的公平というと政権側にとっても不都合だよみたいな仕方でちょっと危機意識を持つというそんなような場面もあったりして相当生々しいやりとりですね。
 
(澤田)
そうですね。
官邸の中でどういう人たちがこの解釈変更に前向きだったのかっていうのがすごくよくわかるメモというかですね文書になっているということですね。
これ本当にホームページにアップされているので、お時間ある方は78ページと非常に長いんですけれども、読んでいただけたらすごく興味深い中身になっているかなという風に思います。
 
(荻上)
はい。そして官邸がそういったようなある程度の消極性を示したことに対して礒崎保佐官などが、例えばこれは政治的な話なのだと、高度に政治的な話なのだと、ただじゃ済まないと首が飛ぶぞというのはそうしたある種の脅しというか圧力をかけるというか、そうした場面もあったりと相当こだわっているという様子も見えてきました。
その中で高市当時総務大臣の発言というのもいくつか出てくるということになるわけですが、この高市発言については如何でしょうか。
 
(澤田)
はい。高市さんについては総理と電話していただという電文に近いメモが残っていてですね。
それについて日付がついてないだとかその文章を誰が作ったかがわからないということを、今日の会見でも高市大臣はそのことをもって不確かであるということを言っている、ということですね。
 
(荻上)
なるほど。これはなかなか問題なのは、しかし当時の総務大臣だった頃に作られたペーパーの不確かさを当時の大臣が否定すると指摘するというような格好になると、行政の信頼性を倒下する立場であった自分の仕事をある程度否定するということもなるので相当入れ子構造というか、様々な問題点がありそうですね
 
(澤田)
自らを刺しにいっているような感じがずっと金曜から続いているなという感じがあってですね。まあ捏造とおっしゃらなければよかったのではないかなという風に単純に思うわけですけれども、はい。
 
(荻上)
なるほど。
またあの、さらに悪意を持って作られた文章であると、そして大臣辞職だけではなくて議員辞職もするというような指示のことも述べていますが。そのあたりの今日の動きなどは反応いかがですか。
 
(澤田)
はい、今日の会見でもそのことについて質問が集中したんですけれども、さっき申し上げたように作成者が書いていない日時が特定できていない内容が不正確であるということで、不正確であると理解しているということを言っていて、当時の安倍総理とはそんな電話をしてないとかですね、そういうような発言が今日出ていました。
辞職について問われるとですね、『私に対して大臣を辞職する辞職議員辞職するということを迫られるのであれば場合によっては4枚の文章が完全に正確なものであるということ相手様も立証しなければならないのではないでしょうか』という風におっしゃっていて引き続き捏造という認識かという風に問われて、『私に関して書かれた4枚についてはそのように認識しています』ということは言っているということですね。
 
(荻上)磯崎氏の方の反応というのは今のところどうなんでしょうか。

(澤田)基本的にそのやりとりがあったということはもう認めておられます、ツイッタ上でですけれども。あと一部メディアに対しても答えているということですね。
 
(荻上)
なるほど。あの、相当ね、解釈を変えるだけではなくて例えば磯崎氏は別のところで『特定の番組にはテレビに出演できないようなゲストばかり質が悪い』とか、『とにかくサンデーモーニング、バン記者にもいろいろ言っているが総務省もウォッチしておかなくてはダメだろう』『決しからん番組は取り締まれるスタンスを示す必要がある
というような仕方で、本当に個別の特定の番組を想定した上で動いているのかな、という気配が見えて取れますよね。
 
(澤田)
そうですね。具体的な名前が先ほどサンデーモーニングの他に報道ステーションなどが挙げられてましたね。
 
(荻上)
これについて政府側の、特に岸田総理などに関しては「個別のことについては発言というものを控える」というような消極性をこれまでは示していましたが今後の対応はどうなっていくでしょうか。
 
(澤田)
そうですね、あの国会の質疑では当然問われていますし、その今日予算委員会も参議院で行われてますけれども、その中で理事会・理事懇談会が午前午後と行われまして、野党側の立憲民主党の石橋理事からはですね、この高市さんの発言についてはどこがどう違うかということを理事会に出していただくことになっていると。
これ昨日の質疑の中で高市さんも約束されていたのでそれについてどこがどう捏造なのかということが多分出てくるということになります。
で一方与党の人からもですね、ちょっとびっくりする発言が出ていて、大臣自ら言われたことに対してはしっかり対応するようにという風に言っていてある種サジを投げているというかですね、あなたが言ったことなんだからあなたがちゃんと説明してくださいねということが野党側からも出るような事態に今なっています。
 
(荻上)
あー、余計なことを言ったから大事になっているのであってということなんですかね。
 
(澤田)
まあ多分そういうことなんでしょうね。
 
(荻上)
これは日常的に磯崎氏が官僚に対して相当強い口調でアプローチをしていることなどに加えて、高市氏の発言とされる部分についても、“相当放送全体というのは一定程度公平ではない”というスタンスを示したりしているのでそのたび政治が放送にどう関与するのかどう見ているのか。そういうものを考えさせられるとても重要な行政文章であることは間違いなさそうですね。
 
(澤田)
そうですね。それに関して当時の頃当時高市さんが総務大臣をやられてた頃にある種その『公平でないメディアに関しては電波を止める』という趣旨の発言もあったりとかもしていてですね、そういう発言が出た背景というのがある種この文書で見えてくるというものになるかなというふうに思いますね。
 
(荻上)
それが特定の補佐官、磯崎さんがサンデーモーニングを見てご立腹したみたいなそうしたものが感を発して出発していたということなどを含むと、全体の公益性というものを考える政治家あるいは政治の役割とは一体何か、そして放送に介入することについて慎重である、例えばその当時の官邸一部スタッフとそうじゃない人たちとのやり取りの様、それというのはやっぱり重要な資料となるのでより多くの人に見てほしいですね。
 
(澤田)
そうですね。本当に誰本当に実名が入っている資料なので、これ誰のことだなということはすぐわかるというかその名前の通り書かれているということで。
ま、ただ松本大臣は繰り返し言うと不確かな部分があるということを言っているので、そこがどういうところが不確かなのかというところは今後の審議で野党側も追及していくということになると思います
 
(荻上)
ちなみに今回あの、今言われて思い出したんですけど黒塗りされてないですね
 
(澤田)
そうなんです。あの、フルで出てますね。
 
(荻上)
名前の欄とかも本当に全部出ているので、その点でいうと公表した点自体はこれがスタンダードであってほしいなと思いますね。
 
(澤田)
本当そうですね。
 
(荻上)澤田さん引き続き取材よろしくお願いします。
(澤田)はい失礼しました。
(南部)ありがとうございました。
(荻上)国会担当の澤田大樹記者でした。


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