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「キャリア」はどこにある?シングルマザーズシスターフッド的就労支援の出口戦略
NPO法人シングルマザーズシスターフッドの就労支援プログラムでは、「自分らしく働くこと」と「収入を上げて生活を安定させること」の両立を応援しています。
多くの就労支援プログラムでは、支援者が用意した求人や就職先を、プログラム参加者に紹介する「出口戦略」を重視するケースが一般的です。
しかし、私たちの出口戦略では、具体的な求人を用意するのではなく、本人が「自分らしいキャリア」を考え、選択する「力」を育むことを重視しています。
シングルマザーが抱えるキャリアの課題〜シングルマザーの「キャリア」はどこにある?〜
シングルマザーにとって、「就労」は避けることのできない重要課題です。
母子家庭世帯の就労年収
令和3年度のひとり親家庭の主要統計データでは、
母子家庭世帯の平均年間就労収入は236万円
これは、全国の子育て世帯の平均就労収入を遥かに下回る額です。
妊娠・出産でキャリアの中断を経験する女性は依然として多く、キャリアが未形成のままひとり親になれば、そこからのキャリア形成を自力でおこなうのはかなり厳しい道のりと言えるでしょう。
ひとり親の就業率は高い
一方、日本のひとり親の就業率は非常に高いのです。
母子世帯の母 86.3% 父子世帯88.1%
就業率は高いのに、年間就労収入は低い、というのが特徴です。
家計を支えながら日々を回す中で、仕事を得ることが最優先となり「とりあえず仕事が決まれば良い」「収入が上がれば良い」という選択をしてしまうのも無理はありません。
一方、支援する側も、まずは目先の生活を支えることを最優先しがちです。
短期的な目標にフォーカスする弊害
しかし、子どもの成長とともに、生活も変化しますし、就労やリスキリングに割ける時間も変わっていきます。
人生100年時代の日本で「とりあえずお仕事が決まれば良い」「とにかく収入が上がれば良い」こうした短期的な目標のみを掲げて、本当に、ひとり親の豊かなキャリアは実現するでしょうか?
目先の収入アップなどの結果を急がず、長期的な視点を持って支援することが、一人ひとりの人生を自分らしく生きることの支援につながるのではないでしょうか。
支援者が用意した「出口」に依存しない就労支援とは
支援者側が「出口」を用意することは、一見すると合理的なアプローチに見えます。
しかし、支援者が用意した出口が、参加者一人ひとりに本当に合っているかどうかは別問題です。
どんなに「魅力的」とされる就労先でも、用意された選択肢が必ずしも最適とは限りません。何を魅力的とするかは、人によって異なるからです
特にひとり親は、生活や家庭の事情が多様で複雑です。
働きたい業界も、保有する知識や技術も、積んできた経験も、本当にさまざまです。
仮に、「せっかく用意してもらった」「条件は悪くないから」と、用意された仕事に就いたとしても、その職場に未来が見出せないとわかってしまった場合、次の仕事に就くには、時間もエネルギーも必要です。
自分で選び、努力して獲得する力
私たちが目指すのは、私たちのプログラムを受講したシングルマザーが、自らの可能性を信じ、自分自身で自分らしいキャリアを切り拓ける力を育むこと。
就労支援の出口として、支援者側が「働き口」を提供することで、その大きく広がる可能性を狭めてしまうことはしたくないと思っています。
世の中にあまた存在する就労機会の中から、自分が力を真に発揮できる職場を見つけてアクセスし、その機会を自らの努力で獲得する。
シングルマザーズデジタルキャンプの実施期間中、受講生のそんなアクションを私たちはたくさん見てきました。
仲間のそんなアクションに刺激を受けて、そんな方法があるんだ、私も頑張ろう!と鼓舞された仲間の姿もありました。
わたしたちの就労支援アプローチ
「自分らしく働く」に欠かせないのは「自己探求」
ひとり親が真の意味で自立し、自分の人生の舵を取ってキャリアを歩むためには、自分は何者で、どんな人生を歩みたいかを理解する「自己探求の時間」が必要です。
「自己探求の時間」は、日々の生活に追われている間は、なかなか取れません。そこで、私たちは、敢えてその時間を作り出せるよう、プログラムをデザインしています。
仲間と切磋琢磨しながら自己探求していくことを軸にして、就労の土台となるスキル形成をしながら、ひとりひとりの「自分らしく働く」に向けたアクションできるように工夫を重ねています。
その工夫をご紹介します。
①心身のセルフケア
自分らしく働き豊かな人生を送るには、こころとからだの健康は欠かせません。
しかし、心身の健康を害して就労から離れてしまっているシングルマザーも実は多いのです。健康に問題を抱えながら働く方も。
プログラムのベースとなるシングルマザーのセルフケア講座では、心身のケアの習慣化をサポートしています。
あたりまえすぎて、自己責任とされている心身の健康。
自分の心身の健康のことは、どうしてもあとまわしになってしまうというのが現実です。
そういった問題意識から、私たちは、心身のセルフケアの習慣について折に触れて呼びかけ、セルフケアに取り組めるようサポートしています。
②キャリア面談と仲間との振り返り(グループリフレクション)
キャリア面談のための準備では、職歴と保有スキルだけでなく、自分の価値観や大切にしたいこと、得意なこと、大好きなことも棚卸して整理します。
また、どんな相談時間にしたいかを書き出してからキャリア面談に臨みます。
就労支援プログラム期間中は、中長期のキャリア目標を短期目標にブレイクダウンし、仲間と2週間ごとの振り返りを通じてスモールステップを積み重ねていきます。(グループリフレクション:隔週60分全5回)
この「仲間と振り返る」というソフトな強制力が、着実な前進をサポートし、最終的には自己肯定感の向上にもつながります。
③仲間との切磋琢磨で視野を広げ、枠を超える
プログラムには、全国から様々なシングルマザーたちが集まっています。
日々の忙しさの中で見過ごしていた自分の思いや価値観を、業界や職種も異なる多様なバックグランドを持つ仲間たちと共有し、掘り下げます。
このように普段の環境とは違う場で、客観的に就労を捉えなおすことで、自分らしいキャリアの輪郭を描くきっかけが生まれます。
この経験は、これまで無意識に持っていた「限界」や「枠組み」を超え、挑戦へのエネルギーになります。
住む場所や状況は違えど、「自分らしく働く」を目指すシングルマザー同士。
「ひとりではない」と感じられる仲間の存在が、時には背中を押し、時には新たな視点を与えてくれるのです。
安心感と刺激が共存する特別な空間だからこそ、ピアサポートも生まれます。
就労支援の場に必要なことは何か?〜受講生の声〜
これまで5期、78名にわたる就労支援プログラムの実施を通して、受講生から下記のような声が寄せられました。
「いままで自分のキャリアをじっくり考える機会が持てなかった。」
「普段、自分のための時間も取れず、気持ちの余裕もなかった。このような機会が本当にありがたかった。」
これらの声から、就労支援の場で、自分自身ととことん向き合い、キャリアを探求する時間と機会がシングルマザーのキャリア構築に欠かせないことがわかります。
90%の参加者が自己肯定感向上
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就労支援プログラム修了後のアンケート回答では、参加者の90%が「自己肯定感が高くなった」という結果が出ました。
一連のプログラムを通じて、自己肯定感の向上が自らの可能性を信じ、自分らしいキャリアを切り拓ける力を育むことに繋がったとも言えるでしょう。
より客観的な指標として、ローゼンバーグ自尊感情尺度で測定した結果でも、コース全体の平均値はBefore 25.53からAfter28.98に上昇しました。(日本人の平均値は25)
シングルマザーだからこそ「自分らしく働く」
時間もエネルギーも限られていれば、自分らしいキャリアを考える余裕がないまま、あっというまに年月が経ってしまう。それはどんな人にも共通の現象です。
でも私たちは「シングルマザーだからそれも仕方がない」と諦めて欲しくないのです。
だからこそ私たちは、あえて強く「自分らしく働くこと」を肯定し、仲間と切磋琢磨する場が不可欠だと、確信しており、そのような場を作り出して提供しています。
次期プログラム募集開始は2025年2月
さて、次回の就労支援プログラム「シングルマザーズキャリアデザインラボ4期生」の募集が、いよいよ2月にスタートします!(デジタルキャンプから名称を変更して、キャリアデザインラボとなります)
「自分らしく働く」「自分らしいキャリアを設計する」ために自己探求し、仲間と切磋琢磨する3カ月間のオンライン就労支援プログラムです。
自分のキャリアを前向きにデザインしたいかた、その第一歩を踏み出したいかたは、ぜひご参加ください。
まもなく説明会の情報を発表します。
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