Ren Keon / day(bandcamp self release)

Ren Keonは独Engram Recordingsからリリースされた「key」を機に、
個人bandcamp上には５つのリリースがあり、その作風はひたすらにコンセプチュアルで、
作品自体はパソコンと音楽制作ソフト、少しの生楽器とプラグインによるオーケストレーションで成り立っているはずだ。
こういった事はこの2020年以降からは、
音楽制作をする人々にとってはもう何ら驚きのないことではあるが、
僕は「key」を一聴したときから、何かそれらの既成事実を飛び越えてくるような、確かな音楽性を感じていた。

「key」以降の個人リリースからはName Your Priceであれ僕は幾らか払って音源を購入していたことを、
日々の膨大なその他のリスニングの中でたまたま気づかされたので、何か所感を述べてみようと思った。

取り急ぎ、かなりテーマや趣向が凝らされたこれまでの作品群に対して、
少しリラックスした作風といった感じの、
先日リリースされた「day」というEPについて書いてみたい。

これまで多様なスタイルの楽曲を提示してきたが、
アニメーションの日常風景場面のサウンドトラックとして、
盤面に収められていてもおかしくはないようなクオリティがあり、
これまでの作品も、そう考えれば日本のアニメーションで本当に流れていそうな楽曲ばかりだ。

今作「day」のテーマはおそらく裏打ちのリズムもしくはレゲエミュージックであり、
僕自身はダブやレゲエミュージックにはあまり深い理解はないのだが、
主軸のベースラインはひたすらカラッとしており、
一般的にそういった楽曲には、だいたいもっと重苦しい、
音の輪郭自体は削がれたようなベースラインがあるイメージなので、
あくまでもレゲエ調のリズムを取り入れた、もしくはRen Keonさんなりのそういった音楽性への挑戦である気がしてしまう。

もともと自身がベーシストらしく、
ゆえに全体的にベースラインの粒立ちが非常に個性的であり、
一曲目「day」は、エレキベースと並行してサイン波の低音を切り取ったようなベースラインが面白く、
ほのぼのとした曲調のなかにも刺激を含ませいて、エッジがある。
メインは３曲という小品的な作品なので、全曲に共通するが
やわらかくレイヤーされたオルガンのメロディーがあしらわれている。

聴いてみる方にはぜひとも素直な気持ちで楽しんで欲しいのだが、
他のEPと今作が違う点はメインの３曲目以降、
同じ楽曲名に「 (your melody) 」という副題が入る３曲が加わっていることだ。
いざ聴いてみるとなんとなくは理解できそうだが、
これは例えばこちらが聴きながら、てきとうな口笛を吹いてみたり、
同じメロディーを口ずさんでみるカラオケ的なアプローチであったりするのかもしれない。

個人的にTwitter上の色んな人のDTM音源に耳を通すこともあるが、
実際にRen Keonさんのデータを購入して聴いてみると、
その行き届いたミキシングにはあまり非のうちどころがなく、
とても健やかなマインドで制作していることがありありと感じられるのだ。

Ren Keonさん自身にはあまりそういった交流は見受けられないのだが、
こちらのカラオケ楽曲には、ぜひあなたのメロディーをということであれば、
他にDTMをやられている方々が個性的な楽器であったり、もしくは誰かが歌を乗せてくれるという日も近いのかもしれない。

Ren Keonをいつも聴く時はとてもリラックスできるので、
これからも新作が楽しみであり、ずっと気ままに同じマインドで作り続けていて欲しいです。
*アーティスト写真、アートワーク画像はご本人から提供頂きました。