稟議制度構築について

皆さんこんにちは、タウンズの永井です。

稟議プロセスの構築について、とある上場準備中ベンチャーのCFOの壁打ちをしていたので、メモとしても以下を残しておこうと思います。
あまり体系的でなく、断片的な質疑応答ですので、もう少し詳しく知りたいという方はお気軽にご連絡ください。

なお、本内容は過去の経験に基づく永井個人の意見ですので、温かい目で見守ってください。

稟議制度の意味

Q. 現在、勤怠及び経理申請のみしか、ワークフローのプロセスが構築されていません。そこでこれから急いで稟議制度を構築していく必要があると証券から言われたのですが、そもそも稟議制度ってなんで作るんでしたっけ?

A. 基本的な考え方として、稟議制度は経営上のスピード感や簡便さと犠牲にしながら、経営リスクを下げる(決めるべき人が正しく物事を決めることにより)ことが目的です。

稟議制度によって下げられる具体的なリスクとしては、①不正リスク、②非効率経営リスク(正しくない人が物事を決めてしまうことによるミスジャッジ)。ただし、会社の倒産リスクと人命リスクの2つは、特に徹底的に下げないといけない。今だと環境配慮や反社会的などのサステナビリティリスクも排除の必要性がますます高まっています。

スタートアップなどではリスクを取って全てを社長が単独で意思決定することも良くありますが、それが許される(現実的にできる)のは、社員数が少数で社長が全社を理解できて統制も取りやすく(社員による不正等のリスクが低い)、また特定少数の株主(投資家)からしても経営者とのコミュニケーションが十分に取れるなど、経営者リスクをある程度見極められる間だけです。

リスクを排除しようとしても、失敗は一定確率であるので、振り返りをすることで説明責任を果たせることが重要です。

上場企業では、一般に少数精鋭であるスタートアップよりも社員数も増え、事業規模も大きくなり、また株主数も増えていることが多い。そのため株主や従業員のほか、取引先や顧客、ユーザーなどのステークホルダー保護の文脈から、より一層上記のリスクを回避するための仕組み(性善説に頼らない、内部統制のシステム)が必要になります。
この仕組みがしっかりしている、ガバナンスが効いている(ことをアピールできる)会社においては、株式市場からもリスクプレミアムを低く見積もってもらえますし、リスクプレミアムを下げれば株価を向上する「代理変数」となりえます(=ESG)

という本質的な話を抑えて、経営陣や社員にも理解してもらうことが肝要ですね。ここから入らないと、現場からすると単にめんどくさい、手間が増えて事業のスピードが落ちるといった不満につながり、引いては「顧客のためじゃなくて経営陣がIPOで儲けたいからこんなことするんだ」みたいな良く分からない話へとズレていきます。

稟議制度構築の優先度。どこからやり始めるべきか?

Q. では永井さんのご経験(前職スポーツフィールドおよび現職タウンズ、その他社外役員先等の上場準備における経験)から、どのような稟議フローを優先的に構築されましたでしょうか。

また、稟議フロー構築に当たって留意すべきポイントはどういった点でしたでしょうか。

A. 上記の原則に立ち返ると、リスクが大きいところ(金額インパクト×発現可能性)から入ると良いと思います。

ワークフロー構築においては、職務権限規程&権限判定表の作成とセットだと思いますが、具体的には以下等から優先して構築していくと良いと思います。
予算策定、重要な人事(採用、解雇など)、重要な資産(取得、譲渡、売却、廃棄)、金額の大きな投資、経費(交際費、出張)、押印、契約締結、財務(借入等)、情報セキュリティ等)

また、どのインフラ(ジョブカン、freee、サイボウズetc)を使っても良いと思うのですが、以下の5点などは個人的に気を付けながら取り組みました。

①重要性の原則から最小限のワークフロー構築から始めて、慣れるに従って対象を拡充する(ただしN-1だとそうもいってられないと思いますが)

②ワークフロー(稟議)の上げ方として、何を記載するかのガイドラインなどを明記して全社に勉強会を実施する。申請の際に記載されている情報の解像度や必要十分性などが個々人によってかなりブレるので。上長や社長が、知るべき情報を知らずにリスクを的確に見極められないままに、なんでも厳しく落としてしまうことや、逆のケースを回避できるように簡潔に知るべき情報を書く。

③自己決裁を許さない(部長承認決議事項の場合、その部長が自分で起案して自分で承認することは不可。ダブルチェックを要する)、権限委譲は慎重に(当該権限者が不在の場合などに、下位役職者に権限を付与する場合のルールや委譲対象を明確にする)

④自己決裁を表面的に回避するために、申請者を下位役職者(部下など)にさせて、本人が承認を行う(例:会食の交際費を部下に申請させて、マネージャーが承認し、マネージャーが自分で使う。会食に部下は同席しない)ケースを許さないように、申請内容の当事者が自分で申請し、その上位役職者に承認してもらう。※社長の場合は、管理担当役員などが承認し常勤監査役がチェック。

⑤金額基準などは年に一度見直し、実態と乖離しないようにする。例えば規模の小さなころに数万円の経費申請を社長承認にしていたが、上場後に同じ権限判定にするか?等。また、ルール通りに運用されていないものがないかについても、きちんと一定期間ごとに(毎期末など)チェックして、正すことが重要。運用を徹底させるか、規程を実態に合わせるか、どちらでも良い。

いかがでしたでしょうか?
少しでもご参考になれば幸いです。

その他にもご興味があるテーマがあれば、コツコツnoteに書いていこうと思いますので、Twitter、facebookなどでも構いませんのでお気軽にご連絡ください。

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