ドラマ『アンメット』は医療ドラマではない 前編 ※ネタバレなし

こんにちは、えまです。
初めてドラマ感想文というものを書いてみようと思います。

ドラマ中毒になって長いけれど、なかなか感想文を書くということに前向きでなかった当方。
恐らく熱が入りすぎて良い文章が書ける気がしなかったんでしょうが、今回はそうも行かない。

なんたって『アンメット』(カンテレ・フジテレビ系月曜22時放送中/Netflix配信中)が良すぎる。

私なんぞが言うまでもなく『アンメット』は話題沸騰中なのだが、一つ私に言えることは、これは医療ドラマではないということ。

まあ確かに医療ドラマなんですけどね(どっち?)。

単なる医療ドラマとは一線を画す


当方、医療ドラマは大好きでして。
コードブルーはもちろん、救命病棟24時、コウノドリ、ブラックペアン、PICU、TOKYO MER、見てきた医療ドラマは挙げたらキリがない。

ただ医療ドラマというのは、時に人を選ぶ。
亡くなるのが見られない、手術シーンが見られない、1話完結で大体いつも同じパターンに見える、リアリティがない、など。苦手な人や先入観を持っている人も多い。

『アンメット』はそんな方に見てほしい。

医療ドラマ苦手!痛いし血だらけだし人死ぬし泣くし毎週緊急事態だから無理!なあなたに見てほしい。

※ネタバレなしですのでお気軽にどうぞ。

“記憶喪失モノ”への偏見

杉咲花さん演じるミヤビは、事故に遭って事故以前半年間の記憶を失い、その後も新しいことを記憶できない障害を抱えている脳外科医。

なんだそのあり得ない設定。と、これだけ聞くと、そう思ってしまうかもしれない。実際、ミヤビが自身の状況を『あり得ないよね』と言うシーンもある。

もうちょっと聞いて。ただの”記憶喪失モノ“と思って踵を返さないでほしい。

毎朝、昨日の記憶がないことに驚いて目を覚ますミヤビは、目覚まし時計に貼られた「机の上の日記を読むこと」という付箋を見て、昨日までに起こったことを日記で把握する。そして、記憶のない昨日と同じように出勤し、仕事をして、毎晩その日に起きたことを事細かに日記に記す。そして眠りにつき、またその日の記憶を失う。

ところがそこに三瓶(若葉竜也さん)という脳外科医が現れる。記憶障害によって手術をしないミヤビに、「あなたできますよ」と淡々と言ってのけるその医師によって、ミヤビの日常が少しずつ変わっていく。

“記憶喪失モノ”というのは、もちろん好まれる方もいらっしゃるだろうが、嫌悪とは行かないまでもそれだけで偏見や先入観を持ってしまう方もいると思う。

やはり記憶喪失モノと聞いて一番に思い出すのは韓国ドラマだ。

『冬のソナタ』に始まり『私の頭の中の消しゴム』など劇的な作品が多い韓国では一時期記憶喪失モノが大流行していた。

それはいまや韓国だけではない。日本国内においても段々と増えてきているように思う。

ところが2024年4月期のドラマでは、なんと渋滞した。同時期の多くのドラマに記憶喪失者が多発しているのはネットニュースでも散々書かれている通りだけれど、にしてもすごい。ここまで重複することがあるのか...テーマの重複は日本ドラマの七不思議。

感情が流れて見える

しかし。『アンメット』は明らかに他作品とは異色である。いったい何がこのドラマを異色たらしめているのか。

要素はいくつかあるが、主にはやはり杉咲さんと若葉さんの芝居と、「障害や病は日常の一部である」というそのシナリオだと思う。

まず前編ではずば抜けた2人の芝居について書きたい。

まず若葉さん。恥ずかしながら私は若葉さんのことをよく知らなかった。お名前は知っていたものの、しっかり芝居を見たことはなく。

ところがいざ見てみるととんでもない役者だった。三瓶という医師を描くのは容易ではない。大抵ドラマに出てくる仕事脳で研究肌のキャラクターはただ無口でぶっきらぼうで極稀に優しい、ところで止まってしまう。

しかし三瓶は優しい通り越して、存外理性的でない部分がある(あまり書くとネタバレになってしまうので我慢我慢)。

人間の中にある感情の静と動を、若葉さんはけしてはっきり演じ分けず、流れるように心を動かしていく。その表情に圧倒される。

杉咲さんは比較的感情を爆発させるキャラクターが多かったように記憶している。子役の頃から他の子役とは一線を画す芝居をしていた印象だけれど、今回のミヤビは杉咲さんがまた1段階上のステージに上がったように感じる。

それを強く感じるのは、患者との会話シーン。

いままで医師役というと、患者に冷たく優秀(コードブルー藍沢先生やブラックペアン渡海先生)、意欲的で感受性が強すぎる(コードブルー緋山先生ブラックペアン世良先生)といったパターンが主流で、劇的に描かれることが多かった。

しかしミヤビは患者と対等に、丁寧に、冷静に向き合う。診断の説明がとにかくリアルで、言葉を選びながら伝えるべきことははっきり伝え、でも患者に寄り添うことを忘れない。

まるで芝居であることを忘れてしまうような、自分が診察を受けているような感覚に襲われる。ああ杉咲花は一つ頭を抜けてしまった、と寂しさすら覚える。

後編ではシナリオについて書きたい。

気が向いたら読んでいただけると嬉しい限りです。

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