印象に残ってる占い師(危ない方)の話 その2

前回、印象に残った占い師として、見た目と行動は……?だけど、すごく当たる占い師改め統計学士の話を書いた。

今回は全く逆の、占い師という名の自称霊能者の話。


ある日、イベント出店するから遊びに来てほしいと友達に誘われ、”オーガニックやスピリチュアルで生活の質を高めよう!”的な
どちらかというとちょっと意識高めの、普段欲望のまま生きている私には不相応なイベントに参加した時のこと。

オーガニック石鹸を販売していた友達のブースで付き合い程度のお金を落としたあと雑談していると、雑談の流れで「今日はすごい占い師の人がブース出してるんだよ!いったほうがいいよ!」と勧められた。

なんでもその占い師は生まれたときから背中に龍を背負ってて(既に意味不明)人間の全てを見通せるらしく、とにかく占いの的中率がすごいのだとか。
普段は美容師として働いていてプロの占い師ではなく気まぐれで診断を行う程度の人で、その人に見てもらえるのは奇跡的なレベルらしい。


そこまでハードルを上げられると本当にそうなのか試してみたくなるのが私の悪い癖。
基本的に占いなんて都合のいい所以外は信じてないんだから、無駄にお金を落とす必要がないのに、そんな評判のいい大先生がどれほどのもんか、実際に自分の目で見てやろうと占ってもらうことにした。


ブースを覗くとちょうど先客が帰る頃だったようで、泣きながら何度も「ありがとうございました」と頭を下げていた。
泣いている人が居る=当たる占い師?!という謎理論があったのでこれは期待できるかも?とウキウキして席についた。

占い師は見るからに普通の主婦って感じの私より3つ4つ年上かな?ってくらいの女性。
服装も装備品も、今の所占い師らしさは微塵も感じられない。

「私は特別な力を使って視るから、料金高いけど大丈夫?」

席に着くなり聞かれた。

「え?いくらです?」

「20分で5000円だから」


スピリチュアルなイベントって事もあって他にも占いブースいくつか出てたけど、どこも素人が趣味でやってます程度のブースだったから鑑定料30分1000円~3000円が相場の中での20分5000円とはかなり強気な価格設定だ。

でも席に座ってしまった以上こっちも引くわけにはいかない。
20分5000円のお手並み、とくと拝見しようではないか。

「いいですよ、お願いします。」

と即答した。


「じゃあはじめるね。今日はあなたの肩にいる、いつもあなたを見守ってる人の力を借りて霊視するね」

占い師はそう言うと私の肩越しの何かを見て、と「うんうん」と大げさに頷いたあと、

「あなたの…おじいさんかな?」と言った。

確かに祖父はふたりとも亡くなってる。
どっちの爺さんだろ。どっちも優しかったけど、私を見守ってくれてんだなぁ…と一瞬流されそうになったが、事態はすぐに急転した。


「メガネをかけててね…」

「んっ?いや、ふたりとも亡くなってるけどどっちもメガネかけてないですね」


「あれ、じゃあおじいさんに見えるけど叔父さんとかかなぁ?メガネかけた男性…」

「え、いや。うち女系一族なんで祖父以外の男性そんな居ないし、そもそも身の回りで鬼籍に入ってるのは祖父だけですね」

「え、ええー…とにかくあなたのおじいさんの力を借りるね」


おや?雲行きが怪しくなってきたぞ?
ここでふと、バーナム効果のことを思い出す。
 ※バーナム効果 誰にでも該当するような曖昧な内容を自分のことだと捉えてしまう心理学の現象

そういえばこの人、さっきからやけに誘導するような聞き方してないか?
私の爺さんが見えてるなら最初から

「長身でイケメンだけどハゲ散らかしたおじいさん(母方の祖父)」
もしくは「子泣きじじいにそっくりなタレ目のおじいさん(父方の祖父)」
ってわかりやすく特徴を表すワードが出てきてもおかしくないか?

「おじいさんかな?」…と祖父とは断定せず幅をもたせ
「メガネをかけた男性」…と親族の誰かには当てはまりそうなことを言う。
対象の祖父がメガネを掛けていたらビンゴだし、祖父でなくても親族にメガネの男性がいたらもしかしてその人かな…?と無意識に当てはめてしまうだろう。
そうなると、無条件でその占い師は「私の親族がわかるすごい人」だと思ってしまうに違いない。

ところがどっこい。
私の親族は先祖の呪いにより末代まで女しか生まれないんじゃないかと思うくらい女系だし、
マサイもビックリの視力を持った野生児一族だし、そもそも健康優良一族なので三どころか四親等以内でも鬼籍に入ってる人間自体が少ない。
誘導尋問を生業とするインチキ占い師からしたらとんだハズレ物件だろう。


まだ開始数分だが、私の守護霊?が見えてない時点で私の霊能者へ対する不信感は拭えないどころか「いっそのこと、コイツがどこまでボロを出すのか見てみたい…」という気持ちが大きくなっていった。

とりあえず、身に覚えのない私のおじいさん(仮)の力を借りた霊視がどんどん進んでいく。


「お仕事大変なんだね…転職とか悩んでたりするのかな?」

「え、いや全然。むしろ今の会社で定年迎えようかなってくらいです」

「なにか悩みを感じるけど…なんだろう…家族とか健康とかかな?」

いや、ざっくりとしすぎだろ。
絶対どこか引っかかるやつやん。

「えー…今のとこ特に悩みとかないっすね。」

自分でも答えながらなんで悩みもないのに占いなんか受けてんだって思った。
でも何か一つでも悩みがある人はどこかで引っかかってしまうんだろうな。


その後もなんとか私に当てはまることないかざっくりとした誘導尋問を続ける占い師と、そもそもなんで占い受けてるのかわからない人間の攻防が続くも
箸にも棒にもかからない状態で時間だけが無駄に過ぎていき私の5000円だけが虚しく消費されていく。


10分ちょっと経過した頃、私にこの占い師を勧めてくれた友達がブースを覗きにきた。
どうやら友達はこの占い師にイベントのたびに見てもらってるらしく顔見知りらしい。

「あらーKちゃんのお友達だったんだ!」

「そうなんですー、先生の占い当たるからさくらちゃんも紹介したくて!」

二人が嬉しそうに会話している間も私の5000円は刻一刻と消費されていってる。
お前ら雑談は占いが終わってからにしやがれ。


「さくらちゃん、先生のブレスレットの話聞いた?」

「あーそうそう!ブレスレット買わない?一つ一つに私の龍のパワーを込めるから」

「使っててパワーが落ちたときとかは、1回2千円払ったら先生がパワー入れ直してくれるよ!」


ちょっと待て、風向きが変わったぞ?
コレはもう当たる当たらん超えてヤバイやつだ。


「いやー、そういうのはいいですかね…」

「でもめちゃくちゃご利益あるんだよこれ!私もつけてからすごく体調いいし!」


もう宗教の域に入ってきてる。
早めに撤退せねば…

「あーごめん、私スパモン教だからそういうのはいいわ」

「え?…あ?…そうなんだ…ごめんね。」

とっさに出てきた言葉で占い師と友達が一瞬で黙った。

聞いたこともない宗教の名前が出てきて怯んだようだ。


ちなみにスパモン教というのは本当にある宗教(仮)である。

正式名称、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教。
なんか世界平和を祈りお布施の代わりに電話料金の値下げに勤しむパロディ宗教だ。
自分が教徒だと言った時点で入信できるお手軽宗教で、私は昔からしつこい宗教勧誘を受けた時はスパモン教徒だと言って相手を丸め込んでいる。
なんか突然よくわからない単語で強気に言われると相手も引くんだろうな。

まあ、しつこい宗教勧誘にお困りの方はぜひファッション入信するといい。
謎におしゃれなスパモン教のHP→  https://spamonjpn.wixsite.com/home


話がそれたが、私がスパモン教徒と言ったことで占い師も友達もそれ以上の勧誘はしてこなくなった。


代わりに、雑談タイムが始まる。
何度も言うが、まだ私の5000円は消費され中である。
占いのために支払った5000円がいつの間にか占い師との雑談費に当てられてる。


「先生さ、◎◎村出身なんだよー!」

「え、そうなんですか?◎◎村のどこの地域なんですか?」

「▲▲ってめっちゃ山奥なんだけど、知らないでしょー?」


ここでまた突然風向きが変わった。
それも台風並の猛風が私の背中を押してくるレベルで。


「え、私の父の実家、▲▲にあるんだけど」


占い師の出身がまさかの同郷だった。
しかも、その▲▲という地域は田舎も田舎、集落の中には数えるほどの家しか無いし、子供の頃から頻繁に父実家に行ってたので集落に住む人たちも顔見知りがほとんどだ。

「占い師さん、フルネームなんて言うの?」

「え…」

占い師が口ごもったが、空気の読めない友達が

「山本花子(仮)さんだよー!え、さくらちゃんもしかして知ってた?!」

と嬉しそうにいとも簡単に個人情報をばらした。


山本花子(仮)…どっかで聞いたことある…
30年以上分の記憶を一気に振り返って自分の記憶の中から山本花子(仮)を探す。
はっ。居た!!!!

「山本花子(仮)さんって…もしかしてじいちゃん家の裏に住んでた?!私旧姓佐藤(仮)ですけど!佐藤太郎(仮)の孫です!」

正直、20年以上昔の記憶であやふやなところもあるが、間違いなく居た。
子供の頃祖父の家にあそびに行った時によく一緒に遊んでくれたお姉さんだ。
あの頃はあんなに面倒見が良かったのに、今はこんなうさんくさい事してんのか。

占い師も記憶の中で私が誰か紐付いたのか、気まずそうな顔をしている。
そりゃそうだ。私の祖父である子泣き爺の顔が思いうかんで、私の肩に憑いているらしい謎のメガネのおじいさんの取り扱いに困ったんだろう。

どこまでボロを出すか見てみたいと思ってたが、
無意識に占い師にとってマイナスの情報をポンポンだしてくる友達のアシストによりボロどころではないものが出てきた。

「あ、もう20分だね。次のお客さんくるから出ていって」

まあ自分のインチキがバレるって思ったらこれ以上の雑談は危険と判断されたのか、雑談半ばで無理やりブースを追い出された。

結局5000円のうち実際に占いに使ったのは2000円分くらいで、残りはお布施みたいな結果となったが、代わりに得るものも大きかった。


「あの占い師、パチもんだから今後関わるのよしときな」

友達のブースに戻りながらそう告げると、友達も何か察したのか気まずそうに笑ってた。

私の無駄に消費された占い費はきっと、インチキ占い師から友達を引き離すためのお金だったんだろう。
そう思えばまあ納得も…できないし金返してほしいしいますぐお前の実家に行って娘が詐欺師まがいのことしてるって親にチクるぞコラって気持ちだけどまあいいや。



てことで、まとめ。

●龍のパワーを込めたブレスレット売る占い師には気をつけろ

●宗教に勧誘されたらスパモン教にファッション入信がおすすめ

●用もないの占いに行くと鑑定料が無駄になる

以上、印象に残った占い師改め子供の頃遊んでくれてたお姉さんの話でした。

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