【ポケモンSV】サケブシッポを厳選した話

※本記事の複製及び転載は、固く禁じます。

0.はじめに

エリアゼロ、第4観測ユニット。

ここは、サケブシッポを捕獲するにはうってつけの場所だ。こちらの攻撃では簡単に倒れない、程よい耐久を持つサケブシッポが、高い頻度で出現するからだ。

相手を眠らせ、捕獲しやすくする技「キノコのほうし」を覚えたキノガッサと共に現地へ向かう。

薄暗い洞窟内では、見た目がピンク色のサケブシッポは見つけやすい。捕獲の手順は以下の通り。

①キノガッサの「ずつき」でHPを大きく削る。
②「みねうち」でHPをギリギリまでさらに削る。
③「キノコのほうし」で眠らせる。
④ハイパーボールで捕獲する。

最短で4ターン掛かる計算になる。途中サケブシッポが攻撃や回復をしてくるため、捕獲作業は一筋縄ではいかないが、慣れればルーチンワークになるだろう。

サケブシッポがポケモンを保管するボックスに次から次へと送り込まれていく。

1つのボックスが満杯になるまで捕まえ続けた後、一匹ずつステータスを確認していく。ほとんど全てのサケブシッポが、ステータスの条件に見合わないという理由で放流の運命を辿った。

サケブシッポの捕獲作業は、1日当たり1時間を目安に続けられた。

一匹の捕獲に掛かる時間は平均して約70秒だった。最短だと約50秒で捕獲できるが、抵抗されるとそれだけ時間は延びた。

1日の捕獲高は1時間で50匹程度であった。これは当初の予想と比べて、割と妥当な数字だった。

お目当てのサケブシッポに遭遇する確率は2048分の1。このペースで続けていった場合、約40日掛かる計算になる。期待値である以上、もっと掛かる可能性もある。

「面倒な厳選に手を出してしまった。」

厳選経験の少なかった私はこの時、はじめてそう思った。


1.それは軽い気持ちから始まった

子供の頃、学校はポケモン一色に染まっていた。それが小学校卒業まで続いたのだから驚きだ。

中学に上がり、部活動や勉強が本格的に始まってからは、ゲーム自体する機会が減っていった。ゲームにハマる事はもうないだろうと思っていた。

あれから長い時を経て、ゲームという存在が忘れ去られていたある日のこと、たまたま眺めていたニュースの中に、ポケモンの話題があった。

それは、ポケモンの最新作が驚異的な売り上げを記録したという記事だった。

懐かしさが蘇る。

もし、そのニュースが目に留まっていなかったら、おそらくポケモンをやろうとはその後もずっと思わなかっただろう。

ちょうど時間もあったので、軽い気持ちでやってみることにした。2つあるバージョンのうちバイオレットに人気の軍配が挙がっていたようなので、あえて少数派のスカーレットを選んだ。

攻略サイトを読みながらさっさとクリアして、それで終わりにするつもりでいた。

2.この感動はもう味わえないだろう

前置きが長くなった。ポケモンSVのストーリーをクリアした感想を先に書いておこう。

ポケモンSVは、小学生の頃に味わった面白さをはるかに越えていた。ゲームでここまで感動したのは初めてだった。

「なんてすごいんだ!!!」

グラフィック、ストーリー、ポケモンをはじめ登場する多彩なキャラクター、世界観、他にもたくさんあった。

ポケモンが進化をするのは知っていたが、ゲーム自体も大きな進化を遂げていた。

同時にこんな風にも思った。

「この感動をもう一度味わうことは難しいだろうな。」

長らくゲームから離れていた分、今回受けた感動は大きすぎたようだ。

そう考えているうちに、この感動をもうしばらく味わっていたいなと思うようになった。ポケモン対戦に関心が向いたのは、自然の成り行きだったのかも知れない。

3.せっかくだから、対戦してみるか

昔、近所の友達と遊んだポケモン対戦は、今や世界中のプレイヤーとマッチングして戦うことが可能となっていた。

久しぶりの対戦は分からない事が多く右往左往したものの、戦略が多様なダブルバトルを中心に取り組むようになっていった。

ポケモンバトルを知らない人向けに簡単に説明すると、相手のポケモンを先に全て倒すという目的に向かって、事前に準備した戦略をどれだけ実行に移せるかを競うゲーム、といったところだろうか。相手も同じ事を考えて行動してくるため、当然邪魔だてされる。

そこにポケモン同士の相性や運の要素が絡んでくる。不確実性がバトルに少なくない影響をもたらし、試合の決着は最後までどうなるか分からない。実力があっても、勝ち続けることは意外に難しいのだ。

「うわー岩雪崩、外したー!」
「2連続でシビれを引いた!」
「急所もらっちゃったよ!」
「また地割れ当てた!!逆転だぁ!!」

こうした不確実な事象によって勝利した時の高揚感は、計り知れないものがある。運と実力の交差が射幸心を捉える。

しかし、対戦を重ねていく内に、明らかに「この人、上手だな」と思う人とマッチングすることも出てきた。プレイングの上手い人と対戦しているときは、こちらの考えている事が全て把握されているような気さえしてくるのだ。そこには、目には見えないが、明らかな実力の差があった。

4.対戦の上手い人にどう対抗するか

ポケモン対戦歴が浅いためか、上手い人に比べて対戦に関する知識量や経験値がどうやら不足しているようだった。上手くなる方法をYouTube等で調べてみた。なるほど、よく使用されるポケモンに対する理解と、対戦の習熟はやはり上達には欠かせないようだ。

各ポケモンのステータス、技の構成、どんな戦い方をしてくるのかといった、対戦で知っておくべき膨大な情報を覚える。さらに、この局面ではこうした行動を取るのが最善であるといった、実践でしか得られない経験を積み重ねていく。

これらを本格的に取り組むとなると結構大変そうだ。しかし、何か手を打たない限りいつまで経っても現状が変わらないのも確かだ。

何か良い方法はないかと模索していたある日、一つの妙案が浮かび上がってきた。

それは、対戦相手がこれまで経験したことのない戦略を使って意表を突く、つまり「奇襲を仕掛ける」というものだ。

どんな奇襲が有効だろうか。思案を巡らせる日々が続いた。

5.奇襲の適任者

「滅びの歌パーティ」という有名な、面白い戦い方がある。

攻撃をしない代わりに、特別な状況下へ相手のポケモンを追い込んでいき、倒していく。個性的な戦略は、裏をかくにはもってこいだ。

「滅びパ」のふりをして攻撃をしてこないように見せかけておきながら、反転攻勢に出て一気に畳み掛ける事ができれば、なかなか面白そうだ。

通称「滅びパ」の戦略に合うポケモンを中心に、あまり注目されていない、しかし活躍できる可能性を秘めたポケモンはいないか調べてみることにした。

「滅びの歌」という戦略の基盤となる技を覚えるポケモンから探していくと、これはと思うポケモンが一匹が見つかった。

サケブシッポ。

今作から登場した新ポケモンだ。さらにそのポケモンの対戦における評価を調べると、興味深い記述があった。

"味方をサポートする事に特化したポケモンのため、攻撃力は期待できない。"

"攻撃メインのアタッカー型として育成しようとすると、耐久と素早さのステータスをあえて下げる必要があるが、このポケモンは野生でしか捕まえることができないため、手に入れるのは非常に困難。"

どのくらい入手が難しいのだろうか。プレイヤーがみんな諦める位、大変なんだろうか。しかしサケブシッポといえば、サポート型というのが共通認識のようだ。もしそこで、アタッカー型で起用したとしたら、相手の意表をつくことは可能だろうか。

もし、サケブシッポを使って奇襲を仕掛けるとしたら、捕獲の困難なステータスとは一体、どういったものなのだろうか。

151匹から始まったポケモンは今や1000匹を超えるまでになった。そしてその一匹一匹にはステータスというものが存在する。いわゆる強さの指標である。

6.ステータス

ここでは、ポケモンのステータスについて概要を説明していこうと思う。

ポケモンのステータスに3値と呼ばれるものがあるが、これを知ったのは対戦のためのポケモンを育成するようになってからであった。ポケモンにはそれぞれに能力の違いがあり、それらは3つの要素に分類される。

①種族値
例えば、ピカチュウとリザードンでは強さが違う。ポケモンの種類が異なる場合、ステータスも異なる。これが種族値である。この種族値が高いポケモンは、対戦において基本的に有利である。

一方で、ポケモンには18種類のタイプがあり、中にはタイプが2つ組み合わさっているものもいる。タイプにより有利不利が生じるポケモン対戦においては、種族値がいくら高くてもタイプの相性が悪ければ不利になる場合も往々にしてある。

②個体値
では、同じピカチュウではどうなのかというと、ここにも違いがある。先に挙げたステータスには6種類の要素があるのだが、例えば、攻撃の高いピカチュウもいれば、素早さの高いピカチュウもいる。

こうしたステータスは、個体値と呼ばれる。当然、攻撃も素早さも両方高いピカチュウはその分ステータスとしては優秀だ。6種類の要素全てが最高水準の場合、そのポケモンのことを特に「6V」と呼ぶ。

このような、いわゆる「理想的な個体」は入手が簡単ではない。しかし、対戦においてはこの「理想個体」を準備する事が必要不可欠であり、この「理想個体」を入手するための一連の作業を「厳選」という。

場合によっては非常に入手が困難(確率からいって現実的ではない)なケースもある。これを実現しようとすると膨大な時間を費やすことになるのだ。ここにポケモン対戦の敷居の高さが垣間見えるのだが、今作からはそうした負担は、一部を除きほとんど無くなったともいわれている。

③努力値
では、理想個体が手に入ってそれで準備完了かというと、まだ終わらない。上限はあるものの、各要素に対してさらに加算することの出来るステータスがある。努力値といわれるものである。

先程のピカチュウの例でみると、同じ種族値、同じ個体値(つまり、全てのステータスが一緒)の相手と戦うことになったとき、素早さの要素に努力値を加算することで、相手より先に攻撃をすることが可能となり、それが戦略の幅を広げることに繋がる。

したがって、対戦におけるプレイヤーの個性が表れるのが、この努力値の配分にあるとも言える。ポケモン対戦に多様性をもたらしている要素の一つと言っても過言ではないだろう。

ここまで3値についてみてきたが、ポケモンの育成にあたっては、それ以外にも性格・特性・遺伝技・持ち物・テラスタルといった様々な要素が対戦における必須準備項目となっている。ポケモンバトルに至るまでの育成には、地道な作業が続くのだ。

7.厳選準備

厳選を始めるにあたって、狙うべき個体の条件を調べた。実現可能な範囲なら、サケブシッポを捕獲厳選してみようという訳だ。

まず、サケブシッポの種族値と個体値からみていこう。以下はLv.50時点での、個体値が全て最高の6Vだったときの種族値と個体値を合計したステータスである。

HP……190←※③
攻撃…… 85←ここを下げたい。※①
防御……119←※③
特攻…… 85←※③
特防……135←ここを下げたい。※②
素早……131←ここを下げたい。※②

※①……技の構成上、攻撃の能力値は使用しない為、あえて低い個体値にする必要がある。

※②……サケブシッポの場合「古代活性」といって、最終的なステータス(実数値)のうち、最も高い能力が、ある条件の下で強化されるという特性をもっている。同じ値がある場合はHPを除き、より上に位置する能力値が発動対象となる。この特性が、サケブシッポをアタッカーへと変貌させる鍵となる。

特防と素早さは、特攻と実数値が同じになるようにあえて低い個体値をとる必要がある。

※③努力値はHPと特攻に上限まで振る。僅かな残りは防御に振る。性格は特攻が若干上がるよう補正される「ひかえめ」にする。

以上を踏まえると、最終的なステータスは以下の様になる。これで古代活性は特攻に発動し、よりアタッカー性能が高まることになる。

HP……222
攻撃…… 63→この数値になる確率は1/8。
防御……120
特攻……128
特防……128→この数値になる確率は1/16。
素早……128→この数値になる確率は1/16。

そして問題になるのが、このステータスのサケブシッポに遭遇する確率である。それは2048分の1という、気の遠くなるような数字であった。

しかし、本格的な厳選の経験がなかったために、この遭遇確率がどの位困難なものであるのか、いまいちピンと来ていなかった。

それよりも、相手の意表を突いた戦い方が出来るかも知れないという期待感が先行し、あまり深く考えずに取り組むことを決意してしまった。

8.厳選開始

厳選開始時の様子は、0.プロローグで書いた通りである。

第4観測ユニット付近で捕まえたサケブシッポのレベルは57〜60と幅がある。そのため、ステータスの確認にも時間を要した。性格による補正が生じていることもあり、それを修正したり、レベルを上げて数値をずらさないと正しい数値かどうかの確認が取れないことも作業を手間取らせた。

特防と素早さは、性格の補正を受けずに以下の実数値をとれば、第一段階クリアとなる(256分の1)。

Lv.57で145
Lv.58で147〜148
Lv.59で150
Lv.60で152〜153
Lv.61で155

レベルが偶数の場合、該当する数値のサケブシッポが取れたら、レベルを奇数にしてから確認すると正確な数値を知ることができる。攻撃は、特防・素早さの条件を満たした上で、初めて確認するという手順をとった(さらに8分の1)。そうする事でステータスを確認する際の数字の見間違いを防ぐという狙いがあった。

入念な準備を行い、意気揚々として捕獲に臨んだ。しかし、捕獲のモチベーションはそう長くは続かなかった。

2週間ほど続けたある日、捕まる気配を全く見せない現状に対して、遂に嫌気が差してしまったのだ。

「自分は一体、何をやっているのだろうか……。」

この時点では、まだ700匹をようやく越えたに過ぎず、期待値の2048匹には遠く及ばなかった。

「とりあえずキリの良い2000匹までは頑張って、それでダメだったらサケブシッポの捕獲厳選は諦めよう。」

目標をひとまず2000匹捕まえる事に設定した。

しかし、今のまま単調な作業を続けるのは流石に飽きてしまう。もっと効率を上げる方法がないか試行錯誤する必要がある。

9.厳選の効率化

効率化に迫られた結果、捕獲作業は以下の手順に行き着いた。

①捕獲作業に入る前に、セーブ設定を自動から手動に切り替える。その直後に手動でセーブを行っておく。

②ピクニックを開いてサンドウィッチを作り、フェアリータイプの捕獲パワーをLv.3まで高める。レシピはオリジナルで、具材はトマトスライス・あまスパイス・すぱスパイスの3つを使用。

③あらかじめクイックボールとリピートボールを大量に購入しておく。捕獲にあたって攻撃は一切行わず、1ターン目からボールを投げる。一投目はクイックボール、二投目以降はリピートボールをサケブシッポが捕まるまで投げ続ける。

④サンドイッチの効果が切れたら、ステータスチェック。お目当てのサケブシッポが出なかったら、リセット。入手しにくいアイテムである秘伝スパイスを節約し、サケブシッポをボックスから逃がす時間も省略する。

これにより、作業効率は大幅に向上した。

1日1時間の厳選ペースは変わらなかったが、サンドイッチの効果が続く30分間で最大50匹捕まえられるようになった。1時間で100匹の計算だ。

一匹の捕獲に掛かる時間は平均で約40秒弱。最短で約30秒。捕獲ペースが目に見えて早くなった。

サンドイッチの具材は、トマトスライスに代えて、エスパータイプの捕獲パワーが上昇する玉ねぎスライスでも良かったのだが、トマトスライスが一個100円なのに対して、玉ねぎスライスは一個130円だったため、今作の舞台であるパルデア地方の物価事情を考慮して、コストのより低いトマトスライスを使用することにした。

ボール消費比率は、クイックボールとリピートボールでほぼ一緒だった。今思えば、二投目以降も全てクイックボールにしておけば、ボール選択時にカーソルの移動をしなくて済むので、手間がさらに省けただろう。

秘伝スパイスは途中から節約する方向に切り替えた。レアアイテムは無駄に消費しない方が良い。その代わり捕獲の際、稀に入手できたブーストエナジーという持ち物アイテムは、40個目を境に以降増えることはなかった。

8月に入って捕獲ペースが軌道に乗り、惜しい個体は出始めるものの、なかなか狙った獲物に出会わない。

日本で初開催となるPWCSというポケモンの世界大会が、もうすぐ始まろうとしていた。

10.捕獲成功

その日は休日だったので、いつもより捕獲作業に多く時間を取ることにしていた。

YouTube上では、PWCSがライブ中継されていた。海外選手の構築は、普段対戦で見かけないポケモンが登場するので、見ていて楽しい。

だらだらと捕獲作業を続けていると、珍しく色違いのサケブシッポが出てきた。捕まえて色違い専用のボックスへ移動しようとした際に、理想の個体が見つからなかったときのために用意しておいた「惜しいステータスのサケブシッポ」ボックスが一杯になっていることに気が付いた。

もし2000匹捕まえた時点で理想個体を捕獲できていなかったら、この惜しいステータスリストにいるサケブシッポから選んで育成するつもりでいたのだ。

レベルを1つ上げるふしぎなアメと、性格を補正するまじめミントを使いながら、念のため個体値の確認をしていく。すると攻撃の実数値が高くてダメだと思っていた、とあるサケブシッポが意外にも悪くないステータスをしているではないか。

個体値をチェック出来るサイトで調べてみる……。

攻撃個体値:A2

いわゆるA0、つまり逆Vと呼ばれる最も低い個体値ではなかったが、実数値はというと、なんと63の数値を示していたのだ。これはA0と同じ実数値であり、狙っていた条件に合致する。

ついに手に入れた。それも理想のステータスで。

今振り返ると、捕獲作業があまりに単調すぎたために、求めていたサケブシッポを既に捕まえていたにも関わらず、うっかり見過ごしていたのだった。

こういうことがあるかも知れなかったので、見逃した時のために二重チェック体制を敷いておいたのは正解だった。

世界大会は、日本人勢の活躍のうちに幕を閉じた。

11.厳選の困難さと改造問題

苦労を重ねて、ようやく手に入れたサケブシッポは、育成後すぐに実戦投入された。

持ち物は、攻撃力を1.3倍にするアイテム「命の珠」、テラスタルは一致技補正が1.5→2倍になる「フェアリーテラス」、さらに晴れ天候下で発動する特性「古代活性」により特攻1.3倍が上乗せされる。

条件を重ねる必要はあるものの、意表を突く位の火力は何とか出せそうだ。

天候を晴れ状態にできる特性「ひでり」を持つコータスとコンビを組み、二匹のロマン砲で楽しくランクマッチを遊んでいた矢先、今回の大会で不正による失格を受けた海外の選手がいたことを知った。

いわゆる改造個体である。本来変えることが出来ないはずのステータスを意図的に操作したポケモンを公式大会で使用することは、当然禁止されている。罰則規定もあるようだが、実態は不透明な部分が多く、以前はこうした不正が蔓延し大きな問題に発展したこともあったようだ。

ポケモン界隈の不正問題がSNS上で連日取り上げられ始めた。そしてそれは、日に日に増えていった。

公正の側のやり場のない感情に同情していたものの、私自身は不正の影響を直接被った訳ではなかった。またポケモン歴について日は浅く、ランクマッチのレートは高い訳でもなく、むしろ低い。ポケモンに関するSNSも展開していない。

不正問題の行き着く先を、どう眺めていたら良いのか分からずにいた。

もやもやした感情を伴いながらも、ランクマッチでは、誰も持っていないであろうアタッカー型のサケブシッポで意表をついて遊んでいた。

12.誰もが不正を疑われる恐れがある

とある対戦で、コータスとサケブシッポが大活躍したことがあった。相手はサケブシッポにこれほどの攻撃力があるとは思っていなかったようだ。そう感じさせるプレイングぶりだった。

奇襲は大成功だった。この時の高揚感はこれまでのポケモン対戦の中でも、なかなか味わったことがなかった。

相手は今どんな気持ちなんだろうかと、したり顔をしながら考えていた。

その直後、突如として私は大変恐ろしい感情に襲われた。

「これってもしかして、相手側からしたら改造個体を使っていると思われてる?」

つい先程の対戦に勝利した喜びは、瞬く間に消え去った。後に残ったのは、背中を伝うゾクゾクとした冷たい恐怖だった。

相手からすると「特性により特攻が高まる」という、本来起こり得ないはずのことが対戦中に起きている。

この時の対戦相手が最初に思うことはおそらく「よくこんな仕様になる厳選をしたものだな」ではないはずだ。「これは改造個体を使っているに違いない」と考える方が自然である。

サケブシッポの捕獲作業を経験した以上、これがどれ位の「普通に考えて起こり得ない事」であるかを知っている。

これは、厳選の難しいポケモンを対戦で使えば使うほど、相手から改造個体であると見なされるリスクも増大することを意味する。

この疑惑の目は公正の立場にあるはずのプレイヤーに対しても、容赦なく向けられるものだ。

改造個体でない正しく育成されたポケモンで対戦していても、相手から「不正をしているな」と思われたら最後、疑惑を払拭するのは難しい。

13.不正のない環境づくり

それまでは、不正行為をどこか他人事のように思っていた。自分が公正なプレイヤーであればそれで良いという考えがどこかにあった。

しかし、公正の立場に身を置いているにも関わらず相手から不正の疑惑を向けられる可能性が出てくるのであれば、そうも言っていられなくなってくる。

ポケモン対戦の様子をSNS上の動画や画像で見かけることは今や珍しいことではない。それが場合によっては不正の疑惑と共に掲載されて、公正の側からの批判・制裁を一方的に受ける危険性を孕んでいる。

これは決して健全な環境とは言えないだろう。何らかの対応策が必要なのは言うまでもない。お互いに不正の疑惑を持たれることのない、安心して遊べる環境づくりが早急に望まれる。

14.さいごに

本記事を自身が不正行為を疑われた時のために準備した「保険としての記事」ではなく、1人のプレイヤーによる「サケブシッポ育成物語」としてお読みいただけましたら幸いです。

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