10月第4週の配信

・10月第4週の配信(10月24日)・

■HPVワクチン接種勧奨中止で、避けられたはずの死亡者が各学年で1,000人発生

 メディアで過熱気味に報道された「HPVワクチン接種後の体調不良」に関しては、ワクチン非接種者でも同様に体調不良が発生していること、ワクチン接種で増加しないことが既に多くの調査で報告されています(1-4)。・・・にもかかわらず、日本では安全性や有効性、WHOのステートメントはほとんど報道されず(5)、未だに接種率は1%未満の状態が続いています。
 こうした状況によって、2000~2003年生まれの女性では、本来は避けられたはずの子宮頸がんの患者が17,000人、死者が4,000人発生するという推計が出ています。

(参考)
https://this.kiji.is/691938494907008097

1) BMJ . 2020 Sep 2;370:m2930. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32878745/
2) Am J Epidemiol . 2020 Apr 2;189(4):277-285. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31899791
3) J Infect Chemother. 2019 Jul;25(7):520-525. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30879979
4) Papillomavirus Res. 2018 Jun;5:96-103. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29481964
5) BMC Public Health. 2019 Jun 17;19(1):770. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31208394
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新型コロナウイルス治療薬としての「レムデシビル」、評価が二分

「レムデシビルの効果に疑問」 WHOが改めて見解
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201024/k10012678651000.html

 抗ウイルス薬「レムデシビル」を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬としてアメリカ食品医薬品局(FDA)は承認しましたが、世界保健機関(WHO)はその効果を疑問視する見解を出しています。評価が二分するのは何故か、薬剤師として実際に「レムデシビル」の論文にも目を通してみて「自分なら使うか?」という視点から考えてみるのも面白いと思います。

・レムデシビルの臨床試験の例
◆Lancet . 2020 May 16;395(10236):1569-1578. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32423584/
→酸素飽和度94%以下で入院した237例に対する、レムデシビル vs プラセボの臨床試験。レムデシビル投与で臨床的な改善は示されなかったという結果。ただし、中国で新規感染者が激減した時期の研究で、n数が足りなかったことなどの限界点が言及されている。

◆JAMA. 2020 Sep 15;324(11):1048-1057. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32821939/
→米国・欧州の中等度のCOVID-19患者584例に対する、レムデシビル5日 vs レムデシビル10日 vs 標準的治療の臨床試験。5日間のレムデシビル投与群では標準的治療群に比べて臨床状態に統計学的な有意差は見られたものの、この差は臨床的に重要な最小差よりも小さかった、という結果。効果があるとも、効果がないとも言えない、微妙な結論。

◆N Engl J Med . 2020 Jun 11;382(24):2327-2336. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32275812/
→53例の重症COVID-19患者にレムデシビル投与を投与した結果、36例で臨床的改善が観察されたというコホート研究。ただしRCTではないため「レムデシビルを使わなくても改善した」可能性があり、この研究だけでレムデシビルに治療効果があるとは言えない。

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