最近の記事

もう一つの部屋

よくみる夢が、二つある。 一つは、ピアノ教室の夢だ。 私は4歳から18歳までの期間、週に一回、近所のピアノ教室に通っていた。そのときの記憶に関する夢だ。 私はふと気づく。「あれ、そういえば今日ピアノ教室の日だったかもしれない」 そして慌ててピアノ教室に行く。でも特に怒られることもなく、事なきを得る。そして思う、「というか最近行ってなかった気がする。もう大学生だからかな」と。 ただそういう夢だ。これは繰り返し、何度も見る夢だ。 私は4歳のときに、自分から母親にどうし

    • 三角のアレ

      幼い頃の私の将来の夢の変遷はだいぶ変わっている。以下の通りである。 お相撲さん(4-6歳) パン屋さん(6-7歳) 高校の先生(7-8歳) 物理学者(8-10歳) 考古学者(10-12歳) 人生最初の将来の夢は力士だった。 家族の誰にも相撲を見る人はいなかったのに、なぜか保育園の七夕行事で、短冊に「おすもうさんになる」と書いて(もらい)両親を驚かせた。前世は力士だったのかもしれない。 小学校に入学してからは、パン屋さんを将来の夢として文集などに記載するようにな

      • 冬の一日のあらまし

        少し前に親しくしていた人も、もう話さなくなれば名前も忘れてしまう。本当に思い出せない、なんと呼んでいたのか。でも君のことは忘れることができないよ、なんてね。 冬なのに陽炎が見える。もやもやとたちのぼる熱に全身を押さえつけられるようで苦しい。 先月末、インフルエンザになった。インフルエンザなんて、高校生よりあとになった記憶がなく、とても久しぶりだったと思う。 弱っているとき、そして臥しているときは、思考が負の方向にしか働かないので、何も考えず寝ていた方がいいのだけど、それ

        • 終わりの季節

          「今年の夏は花火を見なかったな」と私が言ったら、「今度、手持ち花火でもしようよ」と彼は言った。 だけどその後、それが実現することはなかった。 夏なんて、毎年必ずやってくる季節の一つでしかないというのに、夏の思い出というのは、湿度の高い記憶としていつまでも頭の中に存在し続け、それが何か特別な意味を持っていたかのような気にさせるものだ。 今年の夏は、別れという言葉を意識する夏だった。 身内が亡くなって初めての盆、3歳からの幼馴染を亡くして10年目の夏、そして自分にとって大

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