第8回夜の散歩報告書

明けの明星や
動き出す電車
香る排気ガス



これは僕の好きなバンドyonige『ここじゃない場所』という歌の一節。これサビなんですけど気怠い声質と歌い方でエレキギターのカッティングの合間に囁くように唄われるとぞくぞくする。





さあ、散歩です!

一番気持ちの良いシーズンを通り越してしまいましたが、後れ馳せながら散歩。
別に緊急事態宣言中だって散歩は禁止されていた訳ではないのですが自粛。というのも去る6月6日にやさしい雨単独ライブがあり、それが終わるまでは極力自宅にいようと相成りまして散歩は自粛しておりました。なぜならもし僕がコロナかかったら台無しですから、動いてくれているスタッフの方々の為にも僕が軽率な行動をとるのは違うと思っていたんですが、それも終了し、何か組織に所属しているわけでもなく、純然たる人間吉本純略して純純な訳で、純純は自分の理念に反しない限りこれからは犯罪以外は何をやってもいいし、犯罪以外はなるべくやっていきたいと思っている訳で、さらに晴れ。これはもう誰に阿る必要もなく早速、夜の散歩をしました。



少し話は横路にそれますが、6日、昼間に渋谷space EDGEにてネタを収録して事務所に戻り編集に立ち合おうと思ったら技術的なskillを全く持たない僕はやることがなく、手持ち無沙汰になり、グミなどをむさむさと食み豆乳でズビっと喉を潤し退散。
もう太田プロの事務所に来ることもないので、去る前に、先月逝去した会長に手を合わせて退所の挨拶をした。
ほんとうにいつも朗らかで、まだ社長時代にはギャラを手渡しでもらっていたので、あの笑顔と優しさに溢れる一言に何べん救われたか。隣にいる怖い副社長(会長の奥さん)とのコントラストがエグかった。噂で聞いただけなので真偽の程は定かではないけれど、会長は若かりし頃、伝説のヤンキーだったそうで、あの朗らかな感じは修羅の道を経てああなっていると思うと説得力が違う。
最後に挨拶出来て本当に良かった。



さ、そんで散歩。
如何せん久しぶりの散歩で、最後が最過酷回の第7回の3月20日だったので実に2ヶ月半ぶりである。さらに、ほぼ家から出てない生活というか、歩いてないので脚の具合が心配だった。

今回の目的地は、昼間に映画見てたら井の頭公園が出てきて、そういえば近いのに井の頭公園ってあんまり行ったことないなーとそこに決定。


夜、風呂に入りサッパリすると何だか眠くなってきた。
6月7日から僕はなんというか、一般人(低級)な訳で一緒に夜に朝まで散歩しようなんて酔狂な人はいないと思っていて、いつもなら赤ワイン一本持って街を徘徊するのだけれど、レモンサワーの缶一本持って歩きはじめた。

24時に高円寺駅集合と告知したので、東高円寺から歩いて向かう。1km程しかないのだけれど、歩いているとそれで充分というか歩きながらの飲酒も久々で、丁度気持ちよく眠かった。
実は不安な事がひとつあって、もしかしたら今日ddt(仮名。詳しくは第7回夜の散歩報告書参照※はてなブログ)が来るかもしれないと思った。彼女が来ると過酷な散歩になる為、歩くスピードも女軍曹かよ!と思わず突っ込む程で俺がついていくのがやっとなので今日のコンディションでは避けたかった。
まあ、でも今日は誰も来なそうだから、その辺プラーして帰ろう思って駅に着くと、見たことのある美女がふたり別々の方向からやってきて声をかけてきた。
いつものように何だ逆ナンか?と思ってたら参加者で、ひとりはホーリー(仮名。詳しくは第5回夜の散歩報告書参照※はてなブログ)と、もうひとりは清原さん(仮名。詳しくは第6回夜の散歩報告書参照※はてなブログ)で、おお!参加者が来た!!
まあ、一回散歩すれば友達みたいなものですから気安いもんです。

すると、軽井沢とかの避暑地に今から遊びに行きますウフフ。みたいな格好の美女が近づいてきて声をかけてきた。
なんだ女性がふたりもいるのに逆ナンか?と思っていると参加者で、何と過去最高人数の狂人達が集ったのだ!!

彼女は関西出身で今はアパレル関係の仕事をしている調布の方からやって来た人で、名をNANA(仮名)と名乗った。僕は初めてお見かけする人で話したこともない人だったけど、多分お笑いのライブとかで僕のことは知ってくれているような様子だった。明日は仕事が休みということで来たそうだ。ちなみにホーリーは明日も仕事と言ってて、前回も次の日仕事だったので豪の者である。

そういえばこの散歩アパレルの人多いなあ。NANAで3人めである。ということは、お洒落な人は散歩が好きという説が浮上。ということはつまり、逆もまたしかりで、散歩が好きな僕はお洒落な人間ということになる。気分がいい。

一応駅で15分まで待とうと思ったけど来る気配もないし、人数多いし12分くらいに出発。
高円寺から線路沿いを歩いていけば吉祥寺に着くはずで、高架下を歩いていく。


すると、酔っ払った者が街にはまあまあ溢れていて僕は、平和だなあと思った。人に気持ちの良い顔はされないかもしれないけれど、こういう風景が心を落ち着かせるのだな、人は自身がこういう風景になることで明日からも頑張れるのだなあ、と思った。




んな訳あるか。

密で嫌だなあと思った。家で飲め。ひとりで飲め馬鹿。外出歩いてんじゃないよ。リモートで飲め。何を無敵な感じ出してんだよ。羽目を外すな馬鹿。と思ったけど、夜に散歩するという非常に健全なイベントではあるものの、端から見たら僕らも一緒な訳で閉口。

もしかしたらさっき隣を通りすぎた、酔っぱらって肩を組みながらはしゃいでる人も、本当は何か免疫学の権威とかで今回のことで仲間を失い、泣きたいのをグッと堪えて笑いあい前を向いて頑張って行こう!と通夜でお酒を少しばかり飲んで酔っぱらってしまったのかもしれない。
またまた通りすぎたどうみても不倫カップルにしか見えない男女も、実は某国で開発されたワクチンを秘密裏に運ぶスパイだったりと大変な使命を帯びているのかもしれない。
マスクもつけないで大きな声で喋ったり笑ったりしているおっさんのサラリーマンも、令和の時代に路傍で靴磨きをして生計をたてているマスクも買えない貧乏な少年に、自分のマスクを譲ったのかもしれない。
ひとりひとり、ただ羽目を外して馬鹿みたいに密になってるけど、その裏には真面目で健全な理由があるのかもしれない。思慮が浅くてごめん。馬鹿馬鹿俺の馬鹿。


とか思っていると電話がなり、クレオパトラの長谷川さんで「駅にいないんだけど」と半泣きになっている。しまった。15分まで待つと言っていたのに少し早く出発してしまったから、まだ参加者がいたのに、置いてけぼりにしてしまった!と反省して時計を見たら17分で、過ぎてるんかい!と思った。

真っ直ぐ進むので「旧CHARA DE前で待ってます」とLINEをすると「了解」と返ってきた。どういうことかというと、知らない人の為に説明すると長谷川さんはCHARA DEというお笑いイベント主催団体もやっていて、昔、高円寺と阿佐ヶ谷の間の高架下にアニメストリートという小路があり、その一角でライブハウスを運営していた。なので先行する僕らがそこの前で待ってるよ、という事だ。


アニメストリートに着くと、僕の記憶と一変していた。以前は、夜は裸電球がポツポツと道を照すコンクリート剥き出しの壁面。どここらかぴちょんぴちょんと水のしたたる音に地面は鳥のふんだらけ。みたいな、やさぐれたトヨエツが咥え煙草で歩いているのが似合うようなシミったれのうらぶれた小路だった。

しかし。そこはもうそんな名前の小路ではなく、綺麗な木目調の壁面に居並ぶ店々もどこか洒脱で、深夜なのに煌々と光が降り注ぐ犯罪の匂いのカケラもないような小綺麗なストリートに変貌していた。旧CHARA DEの場所もどこかわからないくらい小綺麗になっていて、ようやく発見してそこで長谷川さんを待つ。


いつも、夜の散歩の時にはトイレに行きたくなったらコンビエンスなストアーで借りていたのだけれど、きっとこの時局でどこも貸していないのでみなさんトイレ事情はお気をつけ。と出発前に話していた。なのでトイレ行きたくなったら公園とかでしましょう。それかオムツを買うか。

そしたら、長谷川さんを待ってる時、アニメストリートのトイレ行こうかと思ったけどそこは22時には閉まってしまう。しかし、ストリートの先っぽにスタッフonlyのトイレがあって、あ、でも鍵ないや、みたいな事を俺が言ってたら、NANAが「あー、トイレあそこにありますよねー」とか言い出した。
そこで、僕はなんか頭の中のピースがパタパタとはまっていき、つうか別にピースなんていくつもないけれど、なんかパッと閃いて、もしかしてNANAってリーダーの女なんじゃないの!?と思った。

知らない方の為に一応説明すると、ニュークレープというお笑いトリオにリーダーという男がいて、僕は彼の事が大好きだから変な意味で言ってるんじゃなくて、彼の素晴らしい素養のひとつだと思ってるから褒め言葉で言うんだけど、リーダーは女を泣かすのが得意で、なんなら趣味か?はたまた何かの復讐か?と思えるくらい思わせ振りな男で、人との距離感がバグっていて人懐っこいので勘違いしてしまう女性が多出。そのせいで泣いてしまう女性がいるんだけど、もしかしてNANAもそんなひとりか!?と、僕は思った。


なぜなら、旧CHARA DEがあった旧アニメストリートのスタッフonlyのトイレの場所なんて芸人かスタッフしか知らない訳で、リーダーもCHARA DEの人間な訳で、NANAにこっそり使わせてたんじゃないか!?と思ったのである。
僕がそう高らかに宣言するとNANAが「最悪です」とキッパリと否定するも、関西出身でいつ東京に出て来たのか聞いたら結構浅くて向こうにいるときからニュークレープ(関西の時はポラロイドマガジンという名前)まで知ってて「やっぱリーダーの女だろ!」「ちげーよ!」という最悪の下りが出来た。この下りはそれ以降ちょいちょいやってて俺はゲラゲラ笑っていたけど、最悪の弄りである。もうNANAは散歩に来ないかもしれない。俺が女で「お前リーダーの女だろ!」と弄られたら目眩がして立ってられない。


さ、そんなこんなで長谷川さんが合流して本格的に吉祥寺へ向けて出発。

線路沿いに歩いているんだけど、ずっと線路沿いに歩ける訳じゃなくて途中住宅街で迷子とかになりかけるも、ホーリーとNANAが抜群の方向感覚で道を修正。僕と長谷川さんと清原さんは馬鹿みたいな顔でふたりの後をついていく。その抜群の方向感覚に「鳩ばりの帰巣本能だね」と誉めると鹿十された。


最近、僕はアニメの「キングダム」ばかり見てたんだけど、昔の中国で戦争するとき兵士の最小単位が5人組で、わ、今日の散歩5人いるから、戦争に参加出来るじゃん!と思った。
その最小単位を『伍』と呼び、それをまとめる人を伍長という。この5人だと多分、伍長はホーリーで隊の細かい指示がうまそう。二番目に偉い感じの人はNANAでバランスをとってくれそう。なんか長谷川さんは戦場でもへらへらしてていつの間にか殺されていそうだ。俺はビビって何も出来ず逃げ足だけは早いんだい!とどこか誇らしげに遁走。清原さんは何か、あり得ないんだけどーとか言いながらキレて相手の兵士をたくさん殺しそう。筋が良さそうな感じ。



そんなことを思いながら住宅街を歩いていると、あまりにも住宅ばかりで、住宅の話題になった。一軒家派かマンション派かとか、いつか住みたい理想の街とか。僕は、結局人はどんな人だって大なり小なりなるべくならお洒落な生活をしたいと望んでいると思ってるんだけど、そんなことないよ、と何となく否定された。否定された瞬間、通りに家具屋さんがあって、みんなウィンドウに張り付き、中にいい感じで設置されたいい感じの家具達に目をキラキラさせていい感じに購買意欲を刺激されていた。
ホラ見たことか!と僕が、なるべくならお洒落な生活したい心の証左やんけオラ!とか騒いでいると猿を見るような目で見られた。
この辺りから段々と会話の既読スルーが目に見えて増えてきた。たまに未読スルーの時もある。

散歩をしているといつもそうなんだけど、散歩が進むにつれて、参加者の僕に対する扱いがぞんざいになっていくのだ。嫌だ!構ってもっと構って!と駄々を捏ねても益々既読スルーが進むだけなので、グッと堪えて悪態をつくのみ。



さ、さ、そんなこんなで吉祥寺が近くなってきて、つうか吉祥寺自体も僕はあまり来たことがなくて、新鮮だった。
ホーリーと清原さんは生粋の東京っ子で、長谷川さんは静岡だしNANAは関西人、僕は川崎なので何となく23区言えるかどうかみたいなゲームをやってると駅を通りすぎ、井の頭公園に着いていた。僕はお花見のシーズンに一度来たくらいで、何が何やらよくわからない。

僕の中で、やっぱり吉祥寺といえば『ろくでなしBLUES』で、井の頭公園といえば池袋の葛西達が乗り込んできた時の決戦の場である。
伍の中にろくブルをちゃんとわかる人がいなくてション。長谷川さんは分かるだろ!と思ったらもうちゃんと覚えてないとのこと。ちなみに清原さんはまだ二十歳で、他の皆はそんなに年齢も変わらないので、ひとりだけ若くて所々話題についていけないだろうと思われた。しかし、そこはJKの時からやさしい雨を応援してくれる程の変わり者なので問題なさそうだった。やさしい雨なんて俺らが若い時から歳上の人にしかウケないコンビだったのに、それが熟成してるわけだから若い人にウケる訳ないのに、それをJKの時に見て笑ってるくらいだから相当ヒネている。


公園の中をプラー歩いていると、橋があり、それを渡ったくらいで道が凄いわかれててどの道を行こうか迷った。
なので、下を向いて10回ぐるぐる回って指さした方向の多数決をやろうとなり、僕は全力で10回まわった。

10回終わる頃、僕はもうフラフラで、地面に倒れこんでしまった。顔をあげると皆平気な顔してしっかりそれぞれの方向を指さしていたので、10回回ってなかった!!ズルい!!

俺は目が回りすぎて倒れるくらい回ってるのに、なんなら気持ち悪くて吐きそうになった。それくらいの回転スピードだった。つうかそれ以降何かずっと気持ち悪くて、ここからぐっと口数が減る。大して飲んでないのに吐きそうだった。自分で言い出したことなのに下向いて10回まわらなきゃ良かった。何でみんな止めてくれなかったのか。キモチ悪くなって帰りたくなってきた。


その後、プラー歩いくんだけど、やたらと人が多くて驚いた。4時とかだぞ。外国人も多くて、公園を出るくらいの時にイニエスタみたいなブラジル人にホーリーがナンパされた。
イニエスタはマスクもつけずに、べろべろに酔っぱらっていて、俺はあの酔いは軽く演技入ってるなと思ったけど「ウチすぐそこよー」みたいな事言ってた。
ゴッドフレンド?ゴッドフレンド?と聞いてきて、よくわからないから「ウィーアーウォーキングクラブ」と言うと、フグみたいな顔になった。
なんかちょっとでもいいから女性に触りたいのか、清原さんに触ろうとしたのを長谷川さんがグッと肩を入れて守ると、フグみたいな顔をして去って行ったという。

そのあと、まだ始発には早いので、関西人で吉祥寺に住んでる訳でもないのに何故か吉祥寺を庭扱いしているNANAに吉祥寺を案内してもらう。飲み屋というか、そういう横丁的な場所は全てシャッターが閉まっていた。まあ時間もあれだから仕方ないけど、時局的にもそうなんだろう。楽しそうな小路が沢山連なっていて、普通になったら飲みに行きたいなと思った。


そんな感じでfinish。
電車乗って帰る。高円寺につき、また1km歩いて東高円寺に。
高円寺から吉祥寺は6kmちょいなので、今日は全然歩いてないんだけど、家に着くと滅茶苦茶疲れていた。

風呂につかりながら、嗚呼そうそうこの感じこの感じ!と思った。散歩のあとの湯船最高ッッ。


わたしはもう一度ここへ戻ってこれる
いやでも覚えてる、におい、温度、空気

と、かけていたCDからyonigeの『ここじゃない場所』が流れてくる。
僕はねえ、友達が少ないんですよ。お笑いやめたら疎遠になる人もいるだろうけど、これからも変わらず遊んでねと思う。
しかも単なる一般人(低級)なんで、友達になってくれるかわからないけど、これからは散歩参加してくれる人とは文字通り友達になっていきたいですね。



スゲー疲れたけど、やっぱり散歩楽しいなあ。またやろうと思った。しかも頻発。
最終的には50人くらいの規模になって、みんなで一合目から富士山登りたいとか思ってるんでドシドシ参加してねッッ






よろしければ支援していただけると、なんと僕が人間らしい生活をおくることが出来ます!にんげんになりたい!