第15回夜の散歩報告書



心に 心に 傷みがあるの
遠くで蜃気楼 揺れて

あなたは雲の影に
明日の夢を追いかけてた
私はうわの空で別れを想った





これは僕の大好きな映画『スワロウテイル』の主題歌で、劇中で出てくるバンド、YEN TOWN BANDのあいのうたの歌詞である。
僕は「世界観とはこういうことを言うのだッ」というような、世界観の作り方の教科書のようなこの映画がすんごい好きです。すっごい好きです。この歌も当然世界観を造るひとつの要素だ。






さ、夜の散歩2021開幕です。冬は寒すぎてシーズンオフなので3月からぼちぼちやっていこうかなと思い、稼働してなかったLINEの夜の散歩オープンチャットで久々に発言しようとしたら主催者である僕が入れなかった。謎。こんなに哀しいことはない。
主催の権限を何も設定していなかったからなのか、多分誰かのイタズラで追放されたと思われる。追放というか通報?とにかく、そんな感じのことになってしまったので新しくLINEのオープンチャット『YJ夜の散歩2021』を立ち上げる。従来の夜の散歩er達が移ってくれてきたもののメンバーはこれまでの半分になった。最終的にロシアの辺境に土地を買って日本語の国をもうひとつ創る事を目的としてるからみんな気軽にドシドシ参加してね。『YJ夜の散歩2021』で検索したら出てくるよ。『YJ夜の散歩』で検索しちゃうと俺が追放された方のオープンチャットが出てくるよ。



温かい日が続き、桜の開花宣言もされたので15日に夜桜散歩を開催。去年と全く同じコースを歩くことにした。

当日Twitterとオープンチャットで告知。あまりの反応の無さにビビるも、2名の散歩erが参加するとの事で開催。



24時ころ大崎駅に集合なのだけど、向かう電車、このご時世で終電近くの電車なのに人は疎らだった。
目の前に座ったうら若き瞳の綺麗な女性が、チラチラと僕の方を見てきて、目が合うと逸らす。おんやあ、なんだあ?と思ってそわそわしちゃうくらいの美貌だった。芸能人くらい顔が小さかった。美貌といっても、マスクしてるから美しいかどうかも分からない。顔面の全貌は明らかになってはいないけど、髪型とか服装とか体型とかそういった全体的なイキフンで美人そう、という感じ。
これからはマスクの時代なのだ。コロナに因って一目惚れという概念が消えていくのかもしれない。

こんなことを言うと必ず、や、マスク外した瞬間に一目惚れするチャンスあるやろ!馬鹿ちゃう?何を賢ぶって偉そうな発言してんねん早よ去ね!とか口汚い関西弁で罵ってくる輩がわらわらと出てくるけれど、お前が早よ去ね。

マスクを外した瞬間に、あらKawaii!!と思うのは、確かに顔面の可愛さによる部分もあるかもしれないけれど、それは隠されていたものが露わになるといった【マスクを外す】という行為そのものにも価値が生まれていて、従来の様に純粋に顔面の美しさに一目惚れしたのとはどこか違った感覚になってしまうのだ。
これからは【マスクを外すタイミング】すら、相手に惚れさす技術となっていくのかも知れない。胸の大きな女性や下はノースリーブの女性がカーディガンを一枚脱ぐとドキドキィとしてしまうように、男性を惚れさすマスクを外すタイミング特集とかいった巫山戯た特集をananなどでやる時代がくるかもしれない。


そんなことを思っていると、女性は普通にどっか行ってしまった。あまりにもチラチラ僕を見てくるので、てっきり夜の散歩参加者かと思ったら違った。何だったんだろう。もしかしたら僕が手ぶらなのにコートのポッケからワインが飛び出てたから見てたのかもしれない。


去年同様、ゴーストタウンと化した24時の大崎駅に到着してワインをあおっていると、夜の散歩常連の清母さん(仮名)と豊子(仮名)がやってきた。
この面子は、スカイツリーから葛西臨海公園まで歩いた時の面子だ。

やってくるなり、清母さんは「最近落ち込むことがあって、早く散歩やらねえかなと思ってました」とのこと。すると豊子もヘビメタバンドのライブに来てヘドバンしてるのかと思うくらい首を縦に振る。どうやらふたりとも落ち込んで気が塞ぎがちになっているらしい。
ここ最近の僕は幸せな気分しかないので、落ち込むことなんかこの世にあるかなあ?といった感じ。まあ歩きながらじっくり話を聞いていこう。



大崎駅から目黒川まで移動して、ここからひたすら川沿いに中目黒まで歩くのみである。開始直後、大崎駅の目黒川沿いの桜達がそこそこ咲いてたので幸先が良い。これで桜が密集している中目黒まで行ったら大層綺麗なのではと期待が膨らむ。昨年は時期が早すぎたのか全然桜が咲いていなかった。


僕がワインを飲んでいるからなのか、清母さんも豊子もワインだった。3人ともワインを瓶であおりながら歩く。


もう知った仲なので、自己紹介を省略。ふたりのことを知りたい人は過去の夜の散歩報告書を読んでくれろ。去年のこの夜桜散歩の記事はnoteじゃなく、はてなブログの方かも。



どうしたの?何があったの?何をそんなに悩んでるの?と懐かしのモンゴル800の歌のように聞くと、ポツポツと話はじめた。

まず豊子は、昨年の夏頃に仕事というか手伝っていた団体からの扱いが酷くて、段々と精神的に参ってしまい、今までは落ち込むことがあるとたくさん食べてしまい太ってしまう感じだったのに今回は食欲がなく無気力になりどんどん痩せていってしまったそうだ。これは深刻だと悟った聡い豊子は、実家である北海道に帰ってゆっくり養生したらしい。2ヶ月。そして回復してきた昨今、新しい就職先も決めて来週から働き出すという。

落ち込んでいて、そこから自力で立ち上がり、また前に進もうとしている。その一段落で今回散歩にやってきた。素晴らしいね。頑張ったね。辛かったね。と労う清母さんと俺。
仕事が決まって働きはじめるまでが凄く早かったという。
物事において、タイミングが良いのと展開が速いのは上手くいってる証拠か騙されているかのどっちかだ。聡い豊子のこと、前者に違いなかろう。佳きかな、ですよ。



そして、次は清母さんの落ち込みエピソードを聞いていこう。
すると、何だか恥ずかしいとか言い出して、豊子の話を聞いた後じゃ大したことない話だから話せないというのだ。何を今更。この夜の散歩という会は人間性をむき出しにして恥とかそういう概念のない【歩く】ということと真摯に向き合い、物理的にも精神的にも哲学する会ではなかったのか?魂のstageの上昇を望みカルマを消化し、ワダツミ様の加護のもと、世の中の悪事を正す為に過激な手段に手を出すのも厭わない社会派の新興カルト集団ではなかったのか?と説得すると、ポツポツと語りだした。


すると「13歳も下の男の子に弄ばれた」と言い出して、あ、これは思ってたより恥ずかしいゾ何を言いだしたんだコイツは!とコチラが赤面してしまった。


話を聞いていくと、13歳も年下の妻帯者しかも最近子供が生まれた男の子に思わせぶりな態度をとられてうっかり好きになってしまってしまいメンヘラ化。
嫌われたくないから最近はLINEするのを頑張って控えているという。3日も我慢しているそうだ。辛かったねえ、頑張ったねえと誂う豊子と俺。

驚くべきはまだ身体の関係はないそうなのだ。しかし、そういった恋愛的なイベントが久々過ぎて、好きになってしまいメンヘラ化。情事チャンスはあったけれど、手を出さなかった事を後悔していた。

果たして、それは本当に男が思わせぶりな態度、相手を好きにさせる堕天使テクニック(小悪魔テクニックの逆。男が使うテクニックの呼称)を使っていたのか?と疑問になり聞いてみると、確かに使っていたものの、それはかなり初級で、到底その歳の妻帯者が使うテクニックではなく、清母さんがチョロい事が露呈。

とにかく、次に情事チャンスが訪れたら抱く。そして抱いたあかつきにはオープンチャットで報告するということが決定した。キーワードは「マッハふみふみ」だ。くにお君で出てきた技ですね。とにかく抱いたらオープンチャットで「マッハふみふみ」と呟くので、その日を待つばかりである。



僕が最近恋愛について思ってる事があって、よく恋愛についての哀しい曲や切ない曲に共感してエモいだとか刺さるだとか言って共感してる人いるけど、大した恋愛してないなと思う。
や、俺だってそういう歌好きだけど、本当の相手に出逢っちゃったら、そんなの嘘というか一分も思う隙がないんだなと感じている。本当西野カナのラブラブな時の歌というか、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいその恋愛観で大丈夫?と心配になるくらい甘々なのである。
だから切ないラブソングに共感するって言ってる奴は大した恋愛してないなと思っちゃう。過去、共感してた自分は大した恋愛してなかったなとも思う。



そんなことを思いながら途中、川沿いのトンネルにご機嫌な落書きがあったのでパシャリ。


さらに、店先に河豚が沢山泳いでる店があり、近寄ると近寄って来て可愛かったのでパシャリ。



そんなこんなしてると、いつの間にか中目黒。期待していた桜がはまだまだ全く咲いていなくてション。去年よりもツボミってて、夜桜散歩とは?という感じ。しかもまだ時刻は2時くらいだった。
なんだか嫌ンなっちゃったなと、行先を変更。そここら代々木公園に向かう。代官山を通り神泉の方から向かう。結果渋谷も通ったけれど、やはりルート検索で頼りになる豊子。助かります。


代々木公園に向かう途中ゲームをした。
これは僕の尊敬する先輩のひとりブラックパイナーSOSの山野さんがむかし考えた『1秒ゲーム』というもので、何か長い単語を素早く言うので、聞いてる人はそれを何と言っているのか当てるゲームだ。シンプルだけどかなり奥の深いゲームである。

例えば「リアス式海岸」と言う単語、息を整え素早く言っていると何と言っているか全く分からない。けれど、正解を聞いたあとでもう一度きいてみると確かに「リアス式海岸」と聞き取れて、わ!言ってる!と驚ける。外しても当てても楽しいゲームである。

豊子がいい問題を連発して、大盛りあがり。このころになるとワイン一本開けて緑茶割りになってたので結構酔ってて、どんな出題か忘れてしまった。悔しい。

当たり前のように代々木公園にも桜が咲いていなかった。
今回の夜桜散歩は失敗である。しかしふたりとも晴れ晴れとした表情で帰って行った。散歩はやはり良い。
何か良いのか?と考えてみる。
進んでいるからか?と思う。歩くと進む。目的はなくとも進むのである。それは物理的に進んでいるのだけれど、沢山あるくと、精神的にも前に進んだと錯覚出来るからではないだろうか?と愚考する。
精神的にはこの錯覚が大事だと僕は考える。自分で自分を錯覚させるのは生きてく上で大切な技術だと思う。その一端に散歩というのがあるのだと思う。


そこで冒頭の歌詞が思い浮かぶ。この歌は恋愛の歌のように感じるけれど、あなたと私は同一人物なのではないだろうか?と思うのだ。私が俯瞰で見た過去の自分『あなた』に別れを告げる、前向きな歌なのではないかと。




最近スワロウテイルを見直してやっぱり最高で、そんな話をしてたら新宿駅。そして解散。
時刻は4時30分くらいで丸ノ内線はまだ動いてなくて、僕は新宿からも歩いて帰る事にしてfinish。
ザッと計算してみると何と13kmくらい歩いてて、わ、今回割と歩いたな!と驚いた。久々の散歩なのに脚が痛くならなかった。自転車で鍛えている証拠だろうか嬉し。



兎にも角にもYJ夜の散歩2021開幕です。
これから月に一回はやっていこうと思うので、気軽に参加してね。ご新規さん大歓迎。2021は友達連れての参加も解禁よ。とりあえずオープンチャットに参加してみるのも佳き。

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