可愛いひと2

なんというか馬鹿みたいな事を言うけど、こんな駄文を読んでくれている数少ない人には僕の事を軽蔑したり侮ったりしないで欲しいんだけど、夜寝る前とか朝に目が覚めた時に目の前の何もない空間に意中の人を思い浮かべ、ほっぺをむにむにしたい、鼻をつんつんしたい、などと思って過ごしている。

会いたい人に会えるというスケジュールがあるのはとても素敵な事ですね。
でもそれが少し先だから、いやいやその前に会いたいよねコッチはーと思うし、だから電話するんだけど、少し低い鼻にかかった声を一時間くらい聞いていると少しでいいから会いたいなあとか思ったりして、電話を切って、何もない空間に意中の人を思い浮かべ、ほっぺをむにむにしたい、鼻をつんつんしたい等と思う。

これはヤバいですねハッキリ言って。キモいです。今にとんでもない失敗をしでかしそうです。まだ一回しか遊んでないのにそんな事を思っているということは自分の中で勝手に盛り上がっていて、この気持ちを吐き出さないとキモキモおじさんになってしまう。軽蔑しないで欲しい。尊敬出来る箇所を各自どうにか発見してもらい尊敬して欲しい。とにかく吐き出さないと。そんな時の為の雑記帳である。
この間の土曜日に意中の人と遊んできた。



ランチでもしませんか?と誘い、いいですねーとなって、お互いカレーが好きなので行ってみたいカレー屋さんとかありますう?と。
意中の人はカレー屋さんが沢山載ってる本とか持ってるくらいカレーが好きで、僕もカレーの本持ってるので互いに行ってみたいお店を探したりするのも楽しいなあとか思ってたんだけど、ま、下北沢ならカレー屋さん沢山あるしランチ終わったあとでも、意中の人お洒落なんで、古着屋とか一緒にまわったりとかも楽しそうだナーなんて思ってたら、あ、招き猫ずっと買いに行こうと思ってたんだと思い出した。

どういう事かというと、昔、僕の好きな小説家のひとりである京極夏彦の京極堂シリーズの番外編みたいので、招き猫の回があり、招き猫の発祥の地がふたつあって浅草の方と、下北沢からふたつくらい先の豪徳寺であると言うので、ひとりで豪徳寺に行ったことがあった。
そこで色んなサイズの招き猫があり一番小さいやつと二番めに小さいやつを購入した。家においといて、福が招かれたなあと思ったらまた豪徳寺に持っていって奉納というか、納めるらしい。沢山の招き猫がズラリと並んだ写真をテレビやSNSで見たことある方もいらっしゃるのではないでしょうか?あそこです。

で、僕買ってきた招き猫玄関に設置していたんですがふたつとも落として結構早々に割ってしまい、招き猫が割れるって何か不吉じゃないですか。だからまた買いに行かなきゃなあーとずっと思っていてそのまま行ってなかった。
あと、豪徳寺という街は良い意味で何かダサくて歩いていて気持ちがいいし、洒落たカフェーがあったりして、ひとりだと洒落た空気にビビって入れなかった。

なので招き猫買いに行くデートどうだろうと思って、そのあと下北でカレー食うのどうすか?と提案すると、いいですねーとなり、そういう算段だったんだけど、前日、天気予報を見ると雨の確率が夥しく変更せざるを得ない感じに。雨の中沢山歩くの嫌だし申し訳ない。ムシムシするだろうし。

なので、普通に夕飯にカレー食べましょうとなり、どこか行きたいカレー屋さんありますか?と聞くと、高円寺にありますというので18時集合に。


という会話を電話で金曜日して、僕は阿佐ヶ谷に向かい宿酔いする程朝まで飲んでしまったのである。
昼起きて外を見ると、すんごい晴れで腹が立つ。従来のデート出来たびゃんと思うも、頭がガンガンしてるので夕方からで助かった。



夕方、家を出る直前凄い雨が降ってきて傘をさし歩いて高円寺に向かってると直ぐに止んだ。
改札前で待ってると、もう着いてるというLINEに少し遅れて気づきキョロキョロしてると、後ろから声をかけられて合流。
あの、アレ、いいですよね。待ち合わせで後ろから声かけられるの。僕後ろから声かけられるの好きなんですよ。これ僕に限った話じゃなくて男の人結構好きなんじゃないですかね?振り返って意中の人がいるとドキッとしちゃうんですよね。うっわ、可愛いと思っちゃう。すぐ使えるテクニックですね、どうぞ明日から使ってください。

俺はうっわ可愛いと思って、すぐ「可愛いですね」と反射神経で言ってしまい後悔。女の子ならまだしもちゃんとした女性に可愛いと言うのは果たして褒め言葉なのだろうか。逆に失礼なんじゃないだろうか。と思うんだけど、思ったことすぐ口に出ちゃう性格が災いして「可愛いですねえ」が止まらない。止めてくれ。商店街を進んだ先にカレー屋さんがあるので、慌てて街の変な箇所をイジッたりボケたりツッコんだりして、可愛いと思う気持ちを宥める。


カレー屋さんについて食す。めちゃくちゃ美味しかった。うっわ、美味し!と思って今度は「美味しい」を連発。ヤバい俺さっきから馬鹿みたいだ。馬鹿みたいな感想しか言ってない。もっと何て言うんですか、ソムリエみたいな迂遠ゆえに壮大かつ浪漫溢れるポエミーな表現をして大人の感じを出したいのに。
なのに美味しいものって早く体内に吸収したいじゃないですか。もとから食べるの早いんですが、美味しいからぱくぱくいっちゃって、まだ意中の人は半分くらいしか食べてないのに完食。これは恥ずがじいでず。食べるスピードが同じくらいの人がタイプだったらどうしよう、と焦る。
焦るから、向こうは食べてるのにひとりでぺらぺらと喋ってしまう。うへー。またよく笑ってくれる人だからコッチも調子のっちゃうので、食事中に落ち着きがない奴と処断され斬首されたらどうしようとか思いつつもお喋りが止められない。


で、そこはほんとカレー屋さんというか長居する感じではないお店なんで食事が終わったら出る。
一杯か二杯少しお酒飲みましょうよ、と居酒屋さんに入る。座った席がカウンターで助かった。向かい合ったら可愛くて直視出来ず挙動不審になるところだった。
普段あまりお酒を飲まない方らしく飲むとすぐに顔が赤くなるので恥ずかしいと言っていたけど、俺もすぐに顔が赤くなるし、なんなら既に照れに照れているので俺は赤かったと思う。お酒で赤くなるの恥ずかしいので、そこはラッキーだった。とか本末転倒な事を思うくらいには浮かれていた。
相手の事を知りたいから色々と質問をするんだけど、それだと質問攻めになってしまうし厚かましくもコチラの事も知ってもらいたいので、ゲーム風にして交互に質問をし合う。ただし同じ質問は無し。これはそこから色々と会話が飛ぶし、会話が途切れたら質問をすればいいだけなので延々と会話が出来るシステムだ。もし、会話下手でせっかく意中の人と楽しく遊んでるのに何だか会話が続かないなあと思う人は早速明日から使ってください。有用な会話法だと思います。


で、解答が少しだけいちいち変で、変わった人だなあと思いながら楽しくお喋りしていて1、2杯お酒を飲んだ頃少し頬が紅くなってきた意中の人はやはり可愛かった。またぞろ「可愛い」を連発しそうになったので会計してお店を出ることに。

大江戸線沿いに住んでるということで、散歩がてら中野坂上まで歩きましょうよー!とコンビニで冷たい珈琲を買って散歩。しかし大雨が降ってきて、意中の人はするすると鞄から折り畳み傘を出した。俺は家を出る時にビニール傘をさしてきたからアレなんだけど、なんだかビニール傘が恥ずかしかった。
少し話はそれるけど、折り畳み傘を持ってる人って大人だなあと思いますよね。社会人だったら普通の嗜みなのかもしれないけれど、僕は人生で折り畳み傘を所持したことが一度もない。

高円寺から中野坂上まで歩くということは、途中に東高円寺を通るということで、東高円寺を通るということはハイ、僕の家があります。罠にハメたようで後ろめたいですが、しれっと自分の家の前を通り、通り雨なんでとっくに雨は上がってるのに、少し雨宿りしていきますか?と誘う。や、変な意味じゃなくてさ、シンプルにもう少し一緒にいたいというか。22時くらいだったと思う。



そんで、うっわうわ、意中の人が部屋にいるよと高校生みたいな胸中。
ひとりでよくカラオケいってストレス解消しているというので、一曲めいつも何歌うとか決まってるんですか?と聞くとスピッツのスカーレットが多いと言う。女性歌手じゃないんだ!と思いつつ、あれどんな歌だっけなーとわからず、弾くんで歌ってもらっていいですかとギターを弾く。
絶対に嫌だ!と照れてる姿が可愛くて、この茶番を永遠にやってたかったですね。とはいえずっとギターを弾いてると徐々に歌いはじめてくれて、上手だった。椎名林檎も歌ったりするというんで、それも歌ってもらった。上手だった。ずっと可愛かった。ほっぺた紅くなってた。


もうね、僕は抱き締めたかったですよ。正直に言うとね、はい、正直に言いますよ、はい、助平な事をしたかった。
家に泊まっていって欲しいし、明日の朝すこし遅く起きて、近所のパン屋さんでパンを買ったりして珈琲とか牛乳を一緒に飲みたかった。昼飯でも朝飯でもないパンをくすくす笑いながら食べたかった。


でも何だか少し緊張してる空気を感じて、水もやたら飲むし、わ、緊張させてしまっているなあと申し訳ない気持ちになる。今日はじめて遊んだんだから、別に焦るこたぁないじゃないの!と思う。


しかし、馬鹿!なんで助平な事しないの!と仰られる方がおられると思う。
確かに、ここで普通に助平な事をしといた方がいいという意見はわかる。というか普通はそうだし、何を言ってんだお前は、女性だって助平なことしたいんだぞ?と仰られる方もおるだろう。そんなことは百も承知。百も承知なんだけど、俺はもっと仲良しになってからそういうことをしたかった。仲良しになりたいのだ。助平な事をしたくてこの人を遊びに誘ったんじゃなくて仲良しになりたくて遊んでるんだ!!……とか生温いこと言ってるけど、全然助平な事はしたかった。マジでしたかった。
ふたつの相反する気持ちがぐんぐんにぶつかって、とりあえずギターを置いて水を一杯飲んだ。






手を繋いで中野坂上まで歩く。今日は普通に帰りましょう。手繋ぎたいんですけど、と言ったら手繋いでくれました。僕の手って醜くて町のパン屋さんにあるクリームパンみたいにむちむちしてるんですけど、意中の人は細くスラッとしていて洒落た細い指輪が人差し指にはまっていた。
次に遊ぶ予定もちゃんと決まった。来週は仕事が忙しめになるということで、ちょっぴり遠め。じゃあ会える日まで毎晩のように電話かけていいですかーとか、平日だって仕事終わりでご飯とかもいけますよねー!とか、ちょびっとでもいいから会いたいなあーとか言ってたら、いいですねーと言ってくれて、わわ!ちょっと!ええ!?今ふと足元見えたけど、地面から浮いてたよ!浮足立つとはこの事だね。ふわふわしてんよ!





で、今日も気づいたら1時間半くらい電話してて、何の話してたのか全然覚えてないけど楽しくて、まだ一回しか遊んでないのにほっぺをむにむにしたい、鼻をつんつんしたい、と言いそうになって、というかハハハ。言ってしまって、ヤバい嫌われる。
これは感情を少しセーブしないとダメだな。キモキモおじさんじゃ駄目なんだよ。クールにミステリアスに。そうこれこれ。次こそはクールにミステリアスをビシッと決めてやんよ。全身黒い服きてサングラスかけてたりしてね、葉巻とか咥えてたりして。名前とか数字だったりしてね。クールにビシッとミステリアス。これに尽きるね!




無理そうだなあ。

毎回、初恋だからな恋愛は。全然上手くならないよ。



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