『第17回夜の散歩報告書』

おかえり、ずっと待っていたよ
もう大丈夫だから
おやすみ、君の明日はどうしたってやってくる

行け、行け
その明日がきみを苦しめようと
行け、行け
痛み知る優しい人でありなさい





これは僕の好きなバンド、羊文学の『マヨイガ』という歌の冒頭2節の歌詞です。
羊文学はずっと自分達のカラーを保ちつつ成長を続ける信頼のおけるバンドですよねえ。ずっといい。
「君の明日はどうしたってやってくる」って、綺麗事だけじゃない厳しさのある優しさに溢れた素敵な言い回しだなあと思います。こういった細やかなニュアンスと、ともすれば説教臭い言い回しが、あの声とメロディとBGMが包み込んでとても円やかで口当たりが良いというか、耳が心地良いMUSICですよね。







さ、夜の散歩です。
2年くらいやってきたんですけど個人的な事情から、今後の開催の目処が不透明になった為、緊急の事態が宣言された下では控えていたのですが9月中に開催。
まあ、そもそも『散歩』は禁止されていないのですが何となく控えていた。というか控える必要もないのかも。なぜなら前回の第16回は誰もッ来ないッという二度目のッピンッ散歩ッだった訳だしガビーン。


LINEのオープンチャット『YJ夜の散歩2021』の方で一週間ほど前に告知。そうすると相変わらず容赦のない既読スルーの嵐で心地良いのですが、常連のプロシュートさん(仮名)が参加するとのこと。ひとり確保し22日。昼と夕にtwitterにて告知も相変わらず反応は皆無。
実は前日の21日に僕は、中野区はなかなか予約がとれずやっとこさ一回目のワクチン摂取だった。副反応としては、中高一本拳で肩パンされたような痛み。それとギックリ腰やったことある人特有の、あ、これ気をつけなきゃ腰やるかもな…という前兆を感じさせる程度の腰痛の2つだった。
熱やダルさはないけれど翌日の散歩はちょっと不安。しかし寝て起きればほぼ回復しており安堵。
当日、家を出る前、湯船につかりリラックスしているとオープンチャットの方で「雨降ってんですけど大丈夫すか」みたいな会話があり天気予報を確認すると深夜に雨の報せ。夕方確認した時には晴れマークが確りついていたのに。女心と秋の空ということでしょうか。
オープンチャットでは常連の清母さん(仮名)が「楽しみにしてたけどマッチングアプリで急にデート決まって行けねぇんすわ。というかマッチングアプリにハマりまくって抜けられねぇんすわ」と爽やかな報告。相変わらず盛っていて頼もしい方ですね。



電車で渋谷駅へ。途中コンビニで葡萄の汁で作った飲料を買おうかと思ったけれど、一日経たとはいえ一応ファイザーマンになったばかりなので緑茶のような飲料にしておいた。


渋谷のハチ公口の交番前で緑茶のような飲料を飲んでいると、社会派の小説を書きそうな風貌の豊子(仮名)がやって来た。すっかり常連だ。プロシュートさんが来るのは確定してるので待っていると12時近くなってもやって来なくてどうしたんだろう。交番の横に白い服を着た人がコチラをチラチラ見ている気がしてプロシュートさんかと思ったけどプロシュートさんはあんなに巨人ではないと思い直すと全然違う方向から12時少し過ぎにやって来た。一応他の参加者がいるかもしれず10分まで待つけど誰も来ず出発。雨の心配をしていた散歩erがやってくるのかと思ったけれど普通に来なかった。



今回、中秋の名月の翌日ということで空の開けたところで月を見たいなと思い、何となく渋谷から駒沢公園を目指すルート。調べてみると距離が6kmくらいしかないので、余裕で着いたら砧公園まで行ってみようかと思っていた。
順路は過去最高に調べてなかったけれど、しっかり者の豊子が来たので安心した。


何となく俺の勘がこっちだと言っている!と歩きはじめる。渋谷の少し落ち着いた方、伝承ホールの方を真っ直ぐ行けば着くんじゃないかと思い歩きはじめる。
いつもは自己紹介からはじめるけれど、知った仲なので省略。最近のニュースとして僕は訪草した事や彼女にプロポーズしたこと、新しく働くことになる場所の話など。
豊子はジャニヲタだったらしく最近コンサートに行ったら最前列のチケットで大層興奮したこと等を話した。
そして今回の散歩のメインとなってしまったプロシュートさんの話。

プロシュートさんは48歳なんだけど何と彼女が出来たというのだッ。しかも彼女は自身の半分くらいの年齢。
それだけだと目出度い話なのだけど、何だか話の歯切れが異常に悪くモジモジしているので、何を隠しているんだッ!と社会派の豊子と共に責立てるとポツポツと話はじめた。
まぁ、ちょっと詳しい話はプライバシーの問題があるので省略するけど、要は交際相手から多額の金銭を貸して欲しいとの申し出がありコレを受諾。それがつい先日起こった事だと言う。

ハッキリ言って俺と豊子は思った。あ、このおじさん騙されてありんす…ッと。警察24時とかでこういう詐欺にあってるおじさんいっぱい見てきたでありんす…ッと。

その額というのが、別に人生が終わってしまうような額ではないけれど決して少額ではなく、給料3ヶ月分と言いますか、そういった額でこれは一大事であります。



そんな話を閑静な住宅街、高級そうな住宅が建ち並ぶ通りを歩きながらしてきたものですから、狭い通りを3人で占拠していたのか後ろからくる歩行者の方に気が回らず、僕らのことを邪魔そうにしていた。
「ああ、すいません、お先にどうぞ」と道を譲ってもその人は立ち止まり中々前に行こうとせず不審。少し雨がパラついていたのでその不審者はタオルを頭から被り顔はマスクで覆われていて、背も高く、それでいて何も言葉を発せずにジッとしているので少し怖いというか、何度が促すとしぶしぶ僕らを抜き去って前を歩いていった。怖かった。
これまで結構な数、夜の散歩をしてきたけれどあんなに不審な人物にここまで接近されたのははじめての事だった。怖かった。


そこいらで雨脚が強くなってきてしまい、適当な建物の下で雨宿り。スマホをふと見やると、ブラックパイナーSOSの山野さんからLINEがあり動画が3つ貼り付けてあった。いずれも本日の僕、豊子、プロシュートさんの歩く後ろ姿だった。


うわッッ!!


またやってるよこの人ッ!!気持ち悪ィ!
なんと以前にも夜の散歩に前触れなく参加してすぐに合流せず後ろ姿を盗撮。それを僕に送りつけてきて、ようやく気づくというか、そこからようやく参加するというような趣味の悪い遊びを仕掛けてきた。今回もそうだ。

その動画を見ると、どうやら渋谷を出発したてくらいの時のもので、そこから一時間近く経っており、は?意味がわからない。もしかして途中で巻いてしまったのか!?と不安になり電話をかけるも出ない。


あれ、まずったなあと頭をポリポリしていると前方から巨人がズンズン近寄ってきて、果たしてそれが山野さんだった。
実は先程、僕らの後ろにクンクンに接近していた不審者は山野さんだった。良かった。俺、不審者に刺されて死ぬのかと思ったよ。と安心しかけたけれど、黙々と一時間近く一言も発せず後ろをつけて来る先輩はそれはそれで不審で、やはり戦慄。
なんと渋谷駅で交番の横に立ちコチラをチラチラ見てきたのも山野さんだった。全然俺が気付かないから泣きそうになったという。僕の鳥目&視力の低下に拍車がかかっているようだ。


そんなこんなで山野さんと合流し4人で歩きはじめる。
山野さんが「駒沢公園だったら渋谷から246を真っ直ぐなのに何で訳のわからないところ歩いてんの?」とのこと。一応言っておくと246とは国道246号線のことだ。
何となくの勘で歩いていたものだから、僕らは遠回りをしながら恵比寿に到着していた。そこから目黒。流石に調べるかと豊子がルートを調べ軌道修正。
246を真っ直ぐ行けば一時間ちょっとで着くルートを、僕らは2時間くらい歩いてまだまだ目的地は先のようだった。
豊子に今どこ歩いてるの?と尋ねると「312ですね」と解答があり、数字で言われてもよくわからねぇよとナンダカ愉快な気持ちになった。



さ、話はプロシュートさんに戻るのだけど、実は山野さんは弁護士の試験を受ける為に法律の勉強をかなり一生懸命していて法律について一般人よりかなり詳しい。
そこで、今回のプロシュートさんの件を相談すると、まあバッサリと全額取り戻すのは難しいでしょうね、と。とりあえず現段階で出来る現実的な策を提案。流石と思っていると、プロシュートさんは「そうですよねえ」とどこか他人事のようにヘラヘラしていて、山野さんが「ヘラヘラしてんじゃねえよ」と鋭いツッコミ。
騙されてるとわかっていながらも「まあ、可愛いんですよねえ」と照れながら言うプロシュートさんは、それはそれは人間臭くて、なんてkawaii人なんだッッ!!と僕は嘆息しきりだった。

ッント、どうしようもない人でありんすね。と思わずコチラも廓言葉になってしまうような職業を相手の女性はしていたんだけど、それを何だか恥ずかしがって最初は隠していたところもプロシュートさんは人間臭くて良かった。


プロシュートさんのプロシュートって何の事かと言うと、よく知らない人は生ハムの事かな?と思うと推察されるんだけど、なんのコッチャなく、ジョジョの奇妙な冒険第5部に出てくるキャラクターの名前だ。
プロシュートの兄貴と言えば泣く子も黙る一流のギャングで、主人公一行をあと一歩のところまで追い詰めた実力者であり、そのハードボイルドな生き様に男なら誰しもが憧れる素敵なキャラクターなのだ。
そのプロシュートの兄貴に金魚の糞のようについてまわるペッシという三下がいるのだけれど、ペッシはマンモーニ(赤ん坊)のペッシと呼ばれていて、大層頼りない奴なのである。
ハッキリ言ってプロシュートさんはマンモーニもマンモーニで、ペッシの中のペッシと呼んでも差し支えないくらいにペッシなんだけど、作中でペッシはやがて一瞬だけどプロシュートの兄貴を凌駕する度量の片鱗を見せる。
今回の事で痛みを知り優しい人になって欲しいものです。
誰もが憧れるプロシュートの兄貴となって欲しいものです。



そんなこんな話しながら312を歩いていると、途中スケベな金持ちが最上階に住んでそうなビルや、唐突にお洒落なカフェや雑貨屋が並ぶ通り、公園で飯休憩を挟みつつ遠回りも遠回り、なんと朝方の4時頃に駒沢公園に到着。
その頃には降ったり止んだりの雨脚が強くなりはじめて、駒沢公園の駒沢公園たる広場(巨大なモニュメントがあるところ)の隅っこで屋根のあるところで雨宿り。


その頃になるとペッシはすっかり眠くなってしまい口数が激減。山野さんと僕と豊子で雨宿りしながらお喋りしてた。

僕も割と緑茶のようなものをガブ飲みしてしまい眠く、何の話をしたか正直あまり覚えてないんだけど「最近ムカついたこと」が主なテーマだった気がする。


もう前後の流れとか覚えてないんだけど「どうせ俺らは馬鹿なんだから頭のいい人達が考えた事に乗っとけ」という話に凄い共感した気がする。
あと、僕が普段から思っていることなんだけど「ルールって大体のものがそうした方がいいから、そうした方良かった歴史があるからある訳で、手前勝手な狭くて浅い了見で一つの例外を持って変えようとするな」っていうことを言った気がする。しきたりはまた違うんだけど。

まあ、この話は散歩と関係ないから止す。

5時までダベって帰るべさ、と歩きはじめる。
何だか10代の少年のような夜の過ごし方だなと少しく愉快に。


帰り、まあまあ大きな通りを歩いていたので「これが246か」と呟くと、山野さんが「246はこんなちっぽけな通りじゃないから。見れば分かるから246」と言い、豊子にちなみにこの通りは何なのかと尋ねると「426ですね」と言ったので、似たような数字ばかりでややこしくて笑った。

246に出るとそこは圧倒的に246で、そこを渋谷から歩けば一時間もかからなかった。毎度のことながら遠回りして無為に時間を過ごし脚に疲労を貯めた。


心地良かった。


僕の明日はどうしたってやってくるんだから、意味のないことを楽しめた今日はそれはそれは素晴らしい一日だったのだ。





関係ないけれど、珍しく今日オープンチャットが少し賑やかだった。

ひとりの散歩erが発言し少し場が賑やかに。散歩er同士が仲良くなってくれたら夜の散歩やってるモンとしてはこれ以上に嬉しい事はないですね。
勝手に散歩企画して勝手にやって欲しいですね。
その内、散歩erが企画した散歩に僕が参加したいです。なにしろこの先軽々に企画出来なさそうなので。もしかしたら10月に一回くらいは出来るかも。


LINEのオープンチャット『YJ夜の散歩2021』誰でも気軽に入れるし気軽に脱退も出来るのでぜしぜし。ではまたアデューアデュー


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