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特に根拠のない『太鼓の達人』世界の歴史妄想

 国民的音楽ゲーム『太鼓の達人』の世界では、太鼓の力が大きなエネルギー源となりうることが示されている。
 よって、我々の世界とは違う歴史の進み方をするだろうと考えられるわけだ。

 この記事では、そんな太鼓の達人の世界の歴史について、妄想を書き連ねる。
 なお、確たる根拠があるわけでもないので、あくまでも暇つぶしとして読んでいただきたい。

0.ドン魂の発見

 太鼓の達人の世界では、音楽の力・「ドンだー」の素質をもつ人物が和太鼓を叩くと、魂を引き寄せることができるとされている。

 ここでは、この魂をエネルギー体であると仮定し、「ドン魂」と呼ぶこととする。
 なお、公式の情報では、ドンだーは和太鼓奏者に限らないようである。が、ややこしいので、今回は和太鼓に限定する。

 いつ、人々にドン魂の概念が生まれたかは不明である。
 原初のものとしては、ゲン担ぎのようなものだったのではないかと推測している。

 かつては、狩りの時や、仲間に情報を伝える時に、打楽器を打ち鳴らしていたといわれている。
 コミュニティ内にドンだーがいれば「コイツが音を鳴らすと不思議と身体がよく動く」的な話が上がってもおかしくはないだろう。
 そこからゲン担ぎがはじまり、やがて儀式や儀礼に進化していった、というような考えである。

1.縄文時代(紀元前2000年ごろ)

 当初はただのゲン担ぎだった太鼓の演奏も、あることをきっかけに、ドン魂の発生という効果が知られるようになってゆく。
 そのあることとは、戦争である。

 戦争は好ましくないことだが、科学を大きく発展させるという側面ももつ。
 大規模な戦乱があれば、誰かが「太鼓を叩くと出てくるエネルギー」の存在に気づき、研究したとしてもおかしくはないだろう。

 そうして太鼓の力は、多くの者に誉を与え、それより多くの者を葬り去ったのである。

2.平安時代

 縄文時代の戦乱以降、ドン魂に関する研究が進み、大規模な情報伝達の手段が確立された。
 要するに、ラジオである。

 この時代には、平等院鳳凰堂や鳥獣戯画を模したからくりを、ドン魂で動かして競い合うなどの娯楽があったと思われる。

 ラジオでは、こういった催しを大衆に向けて放送し、広告をつけて金銭を得ていたのではないだろうか。
 つまり、現代と変わらないしくみである。

 太鼓の音とドン魂に満ちあふれた文化は、江戸時代まで隆盛をつづける。

3.明治時代以降

 しかし、明治時代にもなると、そんなドン魂のかがやきにも翳りが見えはじめる。
 そう。文明開化により、西洋化の波が押し寄せてきたのである。

 人々は新鮮な西洋の文化に夢中でとびつき、和太鼓は古臭いものとして忌避しはじめた。

 また、もし太鼓世界にも二つの世界大戦があったのなら、それも和太鼓とドンだーに対して致命的なダメージだっただろう。

 やがて、日本は祭り囃子も聞こえないような世の中になっていく。こうして、和太鼓とドン魂は徐々に衰退していったのである。

4.1960年代以降

 一時は没落したドン魂の光が、ふたたび芽をふきはじめるのは1960年代のこととなる。

 この時期には組太鼓(複数の種類の和太鼓を使ってチームで演奏すること)の演奏形態が確立された。それにより、ふたたび太鼓が注目されはじめたのである。

 ここでまた息をふきかえした太鼓は、ほかの文化や音楽にも影響をあたえることとなる。
 1960年代には、太鼓をテーマにしたアニメ『大冒険タツドン』がブームを巻き起こした。
 その後も、太鼓を意識した歌詞のアイドルソングやシティポップが登場した。

 こうして、世界はドン魂の種火をふくらませながら「あの日」を待つこととなる。

5.2000年以降

 2000年3月3日。北陸の高名な太鼓職人が丹精を込めて作った二つの和太鼓に、双子の「和太鼓たましい」が宿った。
 みなさんご存知、どんちゃんとかっちゃんの誕生である。

 彼らは太鼓の魅力を広めたいと考えるようになり、翌年、東京にて『太鼓の達人』というゲームをつくりだした。
 これにより、多くの人々がドンだーの素質を開花させ、ドン魂のかがやきが復活したのである。

 どんかつと『太鼓の達人』は日本に太鼓フィーバーを巻き起こし、毎日がお祭り騒ぎ状態となった。 
 そんなこんなで、愉快な仲間たちもいっぱい増えて、どんかつは、春夏秋冬ますますがんばり中。

 お祭り騒ぎは続くよ、どこまでも!

6.宇宙進出

 とまあ、ここまでが、みなさんのよく知る太鼓の達人である。ここまでっていうかさっきの項目だけでは

 さて、毎日お祭り騒ぎな太鼓世界には、莫大なドン魂が燃え盛っている。
 そのエネルギーによって、人類が科学技術を飛躍的に発展させていくであろうことは、想像にかたくない。

 太鼓世界の地球人類は想像を絶するスピードで宇宙へ進出し、宇宙国家・銀河連邦を立ち上げた。
 こうして、宇宙の果てまで太鼓を叩きにいくという夢が叶ったのである。

 しかし、これには影もあった。
 ドン魂をエネルギー源にするということは、すなわち、エネルギーを得るために太鼓を叩く人々が出てくるというわけである。

 想像していただきたい。もし楽しく太鼓の達人をやっているあなたの隣で、変な横文字をペラペラと話しながら太鼓を叩いている、意識高そうな人がいたら。

これはこれでおもしろい

 エネルギーをとりだすための太鼓の演奏など、太鼓の“消費”にほかならない。
 好きで太鼓を叩いている人たちからすれば、「なんだかなー」という気分になってもおかしくはないだろう。

 で、ドン魂に火をつけるためには、ただ演奏すればいいのではなく、太鼓への愛も必要なはずである(願望)。
 太鼓の過剰な資源化は、太鼓を愛する人々の敬遠をまねいた。よって、ドン魂を引き出せるドンだーはしだいに減り、太鼓はまたしても衰退の道を歩みはじめたのである。

7.2400年代以降

 このころ、銀河連邦は敵性機械生命体・UIMSウイムズによって、母星である地球を失ってしまった。

 このUIMSは、ほかの生命体の文化を模倣することがあるのだという。地球を占領したUIMSも、人間の真似事をして、武装を身につけずに生活し、街や学校を築いていた。

 そして、どんかつは、どういうわけかUIMS占領下の地球でのうのうと暮らしていた。
 逃げ遅れたのか、むしろ彼らが人類を見捨てたのか、 はたまた銀河連邦からスパイの仕事を頼まれたのか。
 ともかく、彼らは、少なくとも表向きはUIMSと争うことはなかったようである。

 で、この時代、どんかつのたましいはすっかりスレていた。
 太鼓の魅力を広めようとしたら、エネルギーとしての有用性が広まり、あれよあれよと“消費”されて失墜したのである。無理もないだろう。

 しかし、そんな彼らを(たまたま)元気づけた者がいた。それは、ほかならぬUIMSであった。
 とあるUIMSが、気まぐれに太鼓の真似事をはじめたのだろう。どんかつの目の前で、リズムに合わせて遊びはじめたのである。

 楽しく遊んで大満足のUIMSを前に、どんかつのドン魂は火をあげた!
 彼らは、かつてみんなに広めたかった太鼓の魅力を思い出し、自信をとりもどす。そして、ドン魂に満ちあふれた宇宙をめざすため、100代目まで未来永劫がんばろうと決心したのであった。

 一方そのころ。銀河連邦では、太鼓の再興が急務となっていた。

 ドンだーのみんなは、太鼓の“消費”に愛想をつかしていなくなった。
 そうでなくても、母星をとられるような大規模な宇宙戦争が続く日々に、のんきにお祭り騒ぎができる者はそうそういない。
 もしいるとすればどんかつくらいのものだろうが、そのどんかつは敵陣に堕ちた地球に残っている。

 そのため、太鼓は衰退をつづけ、もはやドン魂を引き出すことができなくなっていたのである。
 このままでは、用済みとなった太鼓は、太陽系の古臭い文化として失伝してしまうかもしれない。

 しかし、科学の発展に寄与した、太鼓が生み出す莫大なエネルギーを使えなくなるのは、銀河連邦としてはもちろん痛い。
 よって、連邦は、なんとか太鼓を復活させる方法を考えていた。

 ドン魂を再興させるには、まず和太鼓奏者であるドンだーを復活させる必要がある。
 ドンだーの資質についての情報や、エネルギーを生み出す条件についても調べなければならない。そのために、ドンだー研究者という枠組みも必要となるだろう。
 また、ドンだーを増やすには、そもそも太鼓の数も増やさなければならない。太鼓職人への厚遇も重要だ。

 これらすべての支援を包括する組織として、銀河連邦は未来太鼓局を設立したのである。

8.2765年

 科学の発展が進み、タイムトラベルが広く普及した2765年。

 この時代には、我々がよく知る太鼓はすでに失伝していた。
 ドンだーはおらず、「タイコ」と呼ばれるそれは、アサッテの方向に進化していた。
 しかし、ミライタイコ局としては、それでもまったく問題はなかったのである。

 よく考えていただきたい。銀河連邦が欲しているのは、太鼓そのものではなく、ドン魂のエネルギーである。
 つまり、自前でドン魂が生み出せなくても、ほかの地域や時代からもってこられるのなら、なんら問題はないのだ。

 ミライタイコ局は、タイムトラベルの技術を大きく発展させる方向に舵を切った。これにより、まだ楽しくお祭り騒ぎをしていた時代から、ドン魂を強奪することが可能になった。
 こうして、2765年の世界には、ドン魂が満ちあふれることとなったのである。

 話は変わる。この時代は、大きな敵襲や戦争のない、束の間の平和を謳歌していたころであった。
 だが、もちろん、のうのうと日々を過ごすわけにはいかない。いつ、未知の外敵が宇宙の秩序を乱さないとも限らないのだ。
 既存の兵力では対応できない外敵の存在も考え、いまのうちに軍事力を強化しておく必要がある。

 ドンだー研究者の女子高生・まきなも、この問題に興味をいだいていた。
 彼女は、各兵器・機体の動力源として、ドン魂を利用することを考えていた。
 とはいっても、ほかの時代から引っ張ってくるのではない。なんと、AIにドンだーの素質をもたせ、太鼓を自動演奏させるというアイデアだったのである。

 文面だけ見ればトンチキそのものであるが、実はこの方法には利点も多かった。

 まず、過去からエネルギーをタイムトラベルさせる機構は、起動時に大量のエネルギーを要すると思われる。これを各兵器に搭載するとなると、一度に多くのものは動かせないだろう。

 また、そういった機構は、過去へつながる孔を維持する必要があると考えられる。せっかくもってきたエネルギーも、大半が孔の維持にもっていかれる可能性もあるだろう。
 なんらかの原因で孔が崩壊した際、周囲を巻き込んで暴走事故を引き起こす危険性もあるかもしれない。

 その点、まきなの案は優れていた。
 必要なエネルギーは、AIと太鼓を叩く機構を動かせるぶんだけあればよい。なにかあっても、大規模な事故を引き起こす可能性など皆無に等しい。おまけに、所要スペースも太鼓の大きさ+α程度あればよいのだ。
 これが実現できれば、相当優秀な動力源となるだろう。

 さて、まきなは、AIを作るのには自信があった。しかし、肝心のハードのほうは、制作経験がなかったのである。

 ここで彼女は、あるものに目をつけた。先ほど触れたUIMSである。

 銀河連邦は、これまでにおびただしい数のUIMSを撃墜してきたわけだが、中には、研究用に捕獲されているものもあった。

 UIMSは、別名・ライブウェポン(生きた兵器)とも呼ばれる。まさしく、砲台や戦闘機などの兵器がそのまま意思をもっているような生命体なのである。

 つまり、うまくコントロールする術さえあれば、UIMSは少し改造するだけで、自前の兵器として転用できると考えられる。

 もうひとつ重要な点がある。
 前述のとおり、UIMSはほかの生命体の文化を模倣する生態がある。となれば、地球で一緒に暮らしていた太鼓兄弟を真似た個体がいる可能性は、じゅうぶんにあるだろう。

 で、そいつがいたと仮定しよう。
 形状は太鼓なので、そのまま太鼓のかわりになる。生命体なので、太鼓を好きにさえなってくれれば、ドンだーのかわりにもなる。さらにこいつ自身が兵器なので、そのまま戦える。
 まきなの案を実現するにあたって、これ以上ない好条件だ。

 まきなは、そのUIMSをコントロールできるようなAIを作り、導入した。
 元のUIMSの性質ゆえか、なんか目つきは悪いし、発言は攻撃的だが、おおむね理想どおり。
 AIどんの完成である。

 が、まだ問題があった。
 AIどんには、巧拙はどうでもいいので、魂のこもった演奏を学習してもらう必要がある。しかし、その学習元となるドンだーがいないのである。

 手っ取り早く、どんちゃんとかっちゃんに協力を仰ぐことも考えた。
 だが、彼らはミライタイコ局によって“保護”されており、まきなは接触できなかった。

 こうなれば、やることはただひとつ。過去のどんかつに会いに行けばいいだけだ。
 さらにいえば、学習元のドンだーを増やすため、まだドン魂が満ちあふれていた時代に跳ぶのがいいだろう。

 といった感じで決心したのか、はたまたなにかの事故だったのかは不明だが、ともかくまきなは2020年代にタイムトラベルした。
 そして彼女はどんちゃんに接触し、AIどんに魂のこもった演奏を学習させはじめたのである。

 これは、いずれ来たる宇宙大戦の絶望的な戦況を覆す特殊作戦「オペレーション・ドンダフルウォー」の萌芽となるのであった。……かどうかは、定かではない。

まとめ?

 訳知り顔で好き勝手に妄想を書き散らかすのは、やっぱり楽しいですね。
 太鼓の達人も、公式で世界観の年表とか出ないかなあ。

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