What are "climbing shoes" ? vol,2

今回は、クライミングシューズのサイジング/フィッティングについて、僕なりの考えを簡単にまとめてみようと思います。

ある程度、専門用語も出ますので、事前にこちらをご一読頂けると、すんなりと読みやすいかもしれません。

サイジング/フィッティングについて

僕がクライミングを始めた当時、「クライミングシューズはできるだけ小さいサイズを履け」という言葉や、「できるだけ小さいサイズを痛みに負けず履いている方が偉い」といった風潮がありました。まだ今も変わらずにそういった主義の方もいるかもしれません。

なぜ小さなシューズを履いた方が良いのでしょうか?その当時のクライミングシューズはややフィット感に欠けるモノもあり、小さく履かないととにかくマイクロフットホールドに立てない、という事だったのかもしれません。

しかし昔と比べ、各社ともにクライミングシューズの性能・品質はとても良くなりました。結論から言うと、足長に対して無理に小さなサイズを履く必要はないと僕は考えます。もちろん、クライミングシューズはある程度小さく履くものですが、無理をして小さいサイズを履くことで発生するデメリットがあります。また、足型の違いから、サイズ感覚の個人差は必ずあります。

足長に対して無理に小さいサイズを選ぶ必要はない、と書きましたが、足幅等に対しては無駄な隙間が出ないように、適度なフィット感が得られる足型のシューズを選ぶ必要があります(細すぎるシューズを選ぶという意味ではありません)。

足型が適合したシューズを、最適なサイズで履いた場合、シューズと足が一体となるような高いフィット感が得られます。

適切なサイズの目安

・新品時から楽に15分程度は履ける
・足裏を全て地面につけた状態でランドラバーがアウトソールより前に出ていない
痛くない

足長に対して小さすぎるサイズのデメリット

・ヒールカップの収まりが悪くなる、奥まで踵が入らない(特にダウントウシューズで顕著)
・つま先部分のランドラバーがアウトソールより前に出てしまい、エッジングが外れやすくなる
・シューズの型崩れ、破損が発生しやすい
・つま先の自由度を失い、足指でつかむようなフットワークができなくなる(エッジング以外が不自由になる)
とても痛い

足型が合っているシューズの目安

・適切なサイズを履いても痛みがない
・アッパーに顕著な皴などの隙間がない
・つま先や踵はもちろん、土踏まずなども含め、シューズと足がぴったりとフィットしている
とりあえず痛くない

足型が合っていないシューズのデメリット

・シューズ内に生じた隙間(アッパーなどに皺としてあらわれる)は、フットホールドへの入力を分散させてしまい、コントロール精度が低下する
・シューズと足型が合っていない場合、アタリが生じ痛みの原因になりやすい(タコなどの原因にもなる)
とても痛い

トウボックスのフィッティング

UNPARALLELシューズの場合、ヨーロッパメーカーと異なり、トウボックスが薄目のラスト(木型/足型)となっています。このため、ジャストフィットでシューズを履いた際に足指の曲がり具合、握りこみ具合が、ヨーロッパブランドより浅めになっています。ちなみに薄いトウボックスの利点は以下が挙げられます

・フットワークで足指を使用しやすい(足指でホールドを掴みやすい)
・足長が伸びることにより、わずかだがリーチが伸びる
・ 幅の狭いクラックやスリット、ポケット等の形状に、つま先を入れやすい

また、トウボックスに収まる足指の長短も、サイズ感に影響します。極端に足指が長い/短い方は、他の人シューズのサイズ感とは大きく異なる場合があります。

ヒールカップのフィッティング

踵が小さ目の方にとって、深く大きいヒールカップは悩みの一つ。以下の手順でフィッティングが改善できる場合があります。

通常通りシューズを履く。まだクロージャーシステムは使わない。

足首を曲げ、踵を張り出すようにし、足と反対側の手で踵の頂点を押さえる

反対の手でシューズのプルタブに指を通す

ヒールカップの頂点に向かって踵を押し入れる(プルタブを引っ張り過ぎず、踵を押さえた手を主に使う)

トウボックス内の足指の位置を微調整し、クロージャーシステムを使って、アッパーをフィットさせる。

シューズフィッティングの現場で、しっかりヒールカップの奥に踵を押し入れるようにお伝えすると、意外としっくり収まるケースが多かったです。

サイジング/フィッティングの重要性

万人に合うシューズというものは存在しません。ただし、個々人の足型と足長に可能な限り適合したシューズを選ぶことで、クライマーの意図した入力に対して、精度の高い結果が得られるようになります。

これに関しては過去にシューズデモの際に実験しました。本人が適正サイズとして選んだシューズで、フットホールドに立てないことが原因で登れない課題を、僕が適正サイズとして選んだ同モデルのシューズ(彼が選んだサイズのUS1.0サイズアップ)で試してもらったところ、何の問題もなくフットホールドに立ててしまった、といったケースが何度もありました。

これらの経験から、クライミングシューズのサイジング/フィッティングはクライミングパフォーマンスに直結する、と言ってよいと考えています。

ということで、クライミングシューズは、そもそもとしてそのシューズに求める機能が適合しているのか?という点と合わせて、適切なサイズ、足型とのフィット感を大切に選ぶと良いかと思います。

※上記フィッティングに関してはある程度クライミングシューズを履くことに慣れている方を前提にしています。

※足型には個人差があり、市場に流通しているシューズでドンピシャの物が見つからず苦労している方もいます。いつか完全オーダーメイドのクライミングシューズなどを取り扱うブランドなども出てくるかもしれませんね。

そんな感じで、サイジング/フィッティングの大切さを僕なりにまとめてみました。シンデレラシューズ、という言葉があるように、自分にピッタリのものを見つけるのは意外と難しく、悩んでいる方を多く見かけます。このテキストでそんな方がシンデレラシューズを見つけられるようになったらうれしいですね。

それでは楽しいクライミング・ライフを!
friction be with you.



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?