法鏡

今回は三枚の鏡の最後、「法鏡」について書きたいと思います。

法鏡は仏教の事です。

お釈迦様は死の間際に1人の弟子に「仏教とは一言で言うとなんですか?」と質問されました。その質問に対してお釈迦様は「汝らに法鏡を授けた」と答えました。仏教のことを「法鏡」と言われたのです。

この法鏡とは、「法」は真実の事ですから、「真実の鏡」と言う意味で、「真実の自己を映す鏡」という事です。

ですから、仏教の教えを「ちゃんと」聞く事は、本当の自分を知ることになるのです。

他人鏡も自分鏡も本当の自分は映さず、仏教だけが、本当の自己を映すといえば独善的とも思えますが、ちゃんと理由があります。

・実践によって知らされる
仏教によって本当の自己が知らされるとは、何も夢の中に仏様が出てきて告げられるとか、長い修行によるトランス状態が云々とか、そんなものではありません。「実践」によって知らされるのです。

先程書いた「仏教をちゃんと聞く」とは、仏教の教えを自分の解釈とかではなく、素直にしっかりと聞いて理解して、それを実践する事です。

「仏教聞いている」と言っても、居眠り半分では聞いているうちに入りません。また、単語だけ拾って自分の都合で解釈しているのではこれも聞いているといえません。聞いて理解していても、それを実践していないのでは、これも聞いていないのです。

自分の解釈ではなく、正しい理解が前提です。その上で、そこで聞いて理解したことを実践する。ここまでやって初めて「ちゃんと聞いた」事になるのです。

そして、実践する上で大切なのは「実践する自分の心を見つめる」事です。後の記事でも詳しく書いていきますが、仏教では心を重んじます。形だけ善をしていても、心で悪い事を思うならそれは悪だとみなす厳しい教えが仏教です。

正しく理解して、実践し、その心を見つめると、自分の姿が見えてきます。「良いことをしているつもりが、実は見返りばかり求めていた」「ちゃんとできているつもりだったが、こんなに怠けていた」と、自分に出来ていることと出来ていないことの分別が付いてくるのです。

「何が出来て何が出来ていないか?」これを知らずに正しい自己を理解しているなんていえません。

自分なりに解釈して、それでわかった気になっているのとでは次元が違います。正しい理解と誠実な実践が伴うからこそ、本当の自己が知らされるのです。

・三世十方貫く指針
次の理由は、指針となるものが根本的に違うからです。「聞いて、実践して、わかる」というだけなら自己啓発セミナーでも同じところはあります。この手のセミナーで「ポジティブな心を持って、家族友人を大切にして、嫌な事は忘れる」という内容をよく耳にします。これを実践して悪い事にはならないでしょう。

ただ、実践する上では「指針」となるものが必要です。「物差し」とか「判定基準」などの言い方もできます。これらがないと、聞いた事を誤解したり、実践内容を間違ったりと弊害が多くあります。この事は仏教でも自己啓発でも同じです。

ただ、この「指針」は仏教と自己啓発では根本的に違います。

自己啓発などでは、その啓発内容を発信した人が指針となるでしょう。その人の言動や考え、理念などを指針として啓発内容を実践する。しかし、人の言動や考え、理念などはいくらでも変わり得ます。

憲法だって、戦前と戦後ではまるで違います。ましてや自己啓発などは、2019年にオススメされていた本が、2020年のオススメにすでになかったりします。そして、多く出される自己啓発本の全てが同じ理念や行動、考えのもとに書かれているわけではありません。

つまり、「指針」がいく通りもあり、しかも変わり通しなのです。そんな指針に照らし合わせて見える自己が本当の自分なわけはありません。

では、仏教ではどうでしょうか?仏教の指針はお釈迦様の教えです。仏教学者が、自身の考えが正しいか否かを判断するときは「お釈迦様の教えに沿っているか」が基準となります。

このお釈迦様の教えは2600年前に説かれました。そこから全く教えの内容は変わってないのです。もちろん間違って広めてしまう人はいます。ですが、間違って広めたものはいつか無くなり、正しいものは現在にも残っています。

先回書いた六度万行も、2600年前に説かれたものですが、現在でも実践すべき内容であることは明確です。また、日本でもアメリカでもどこでも実践すべき内容です。数千年経っても変わらない、国を跨いでも変わらない、そんな普遍的な指針を持って実践するのが仏教です。

だから「真実の自己を映す鏡」と言われるのです。

本当の自己を知ることは先回から書いているようにとても大切なことです。それを肝に銘じて、仏教の教えに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

私も、仏教の教えに興味を持ってもらえたらと、このnoteで微力を尽くしている次第です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?