膀胱顛末記~第三話。尿道に カメラを入れる アポを取る

の続きです。

血尿の原因=出血箇所が膀胱憩室の中であることを特定でき。
しかし膀胱炎か膀胱がんかは特定できず。

わたくしは先生のご指示により、14日間の投薬によって様子見をすることとなりました。

抗生剤+尿の出を良くするお薬の効果は素晴らしく。

わたくしの血尿の色は、尿をするその度ごとに――

30年寝かせた赤ワインの色

通常の赤ワインの色

煮出しすぎた麦茶の色

麦茶の色


紅茶の色


はちみつの色

――と、変遷を重ね。

14日め。

再通院のその日には、概ね正常な尿の色――
薄いレモン汁のような色にまで良化を遂げておりました。

診察室に入りまして、早速いただいた前回の腫瘍マーカー検査の結果は「陰性」。

膀胱がんの疑いが極めて薄くなりました。

加え、エコー検査でも、前回のエコーでは確認できていた膀胱憩室内のモヤ(=出血)が見えなくなっておりましたため、

「膀胱炎だったが、快癒した」

という可能性が高くなってまいりました。

ので、先生は
「尿の出を良くするお薬60日分の処方箋を出しますので、お薬が切れたら。あるいは再出血などあったら、またご来院ください」
とのご指示をくださり。

わたくしは病院のとなりの薬局でお薬をいただきまして、安堵しながら帰途についたのでした。

――が。

安堵の先に待っていたのは暗転でした。

迎えた翌朝。
尿が、また赤ワインの色に戻ってしまっておりましたのです。

あわてふためきまた病院にお伺いして、再びエコーで診ていただきますと――
出血のモヤがはっきりと出てしまっております。

先生のお見立てでは

「膀胱炎が治り切っていなかった。抗生剤が切れたので悪化してしまった」

or

「やっぱり膀胱がんだった」

の2つの可能性が、どちらも捨てきれないとのことでした。

しばしの沈黙の後、先生が口を開かれます。

「膀胱内視鏡検査をさせてください」

膀胱内視鏡検査――

それはすなわち、尿道口からカメラを差し込み。
カメラは尿道を遡っていって――やがて膀胱へと至る。

そのような検査であるとのことでした。

尿道に。
カメラが。
入ってくる。

これはレアな体験です。

シナリオライターとしての引き出しに、経験したことのないものを突っ込む、またとないチャンスであるといえます。

ので、わたくしはお返事します。

「なるはやで検査を受けたいのですが」

――そうして受診の翌々週の木曜日に。

わたくしは。
わたくしの尿道口にカメラを入れる――
そのアポイントを取り付けましたのです。

;つづきます

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