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Black Lives Matter:前編(2020年6月11日)

米国ミネソタ州で黒人男性が警官から暴行を受けて死亡した事件。抗議活動は今も世界各地で行われています。デモ隊に加わっているのは、あらゆる肌の色を持つ人々。今回の世界的な抗議活動の高まりは、人々が自発的に人種差別にはっきりとNOを突き付け、多様性を尊重する社会への第一歩となるのでしょうか。

英語原文は、以下からどうぞ:

抗議の力とジョージ・フロイドさんが遺したもの(前編)
2020年6月11日

ジョージ・フロイドさんは著名人ではなかった。彼が暴行を受けて死亡したのは米国の首都ではなく、46番目の都市の街角だった。しかし、その死によって突然に、彼は米国全土を席巻する運動の象徴となった。さらに驚くべきことに、彼の死に対する抗議活動は、ブラジルからインドネシア、フランスからオーストラリアに至るまで海外にも次々と広がっている。フロイドさんが遺したのは、決して無駄にできない、社会改革の大きなきっかけである。

無論、事態の中心は米国である。米国での抗議行動は大都市のみならず海岸から遠く離れた小さな町でも発生し、この国の長い抗議活動の歴史の中で最も広範囲に及んでいるとみられる。フロイドさんの死の直後、人々の怒りは爆発した。しかしその後のデモ活動は、先週本誌が望んだように、打って変わって平和的になっている。デモに参加しているのは、あらゆる人種の普通の米国人たちだ。トランプ大統領のように、無政府状態の脅威を選挙戦略に利用しようと企んでいた人々の当ては外れた。アフリカ系米国人に対する警察の暴力への抗議として始まった動きは、今、あらゆる形態の人種差別を検証する流れになりつつある。

米国以外での抗議活動の定義はより難しい。メキシコと南アフリカでは、ターゲットは主に警察の暴力である。ブラジルでは、2018年に警察により殺された6,220人のうち4分の3が黒人であり、人種問題も包含している。オーストラリアではアボリジニの扱いが問題になっている。人種をめぐって米国を非難してきたヨーロッパの国々の中には、実は身近なところで問題があることに気づき始めたところもある。ドイツのメルケル首相は自国民に対し、今回の事件を「自分たちの玄関先を掃除する」きっかけにするよう求めた。またいくつかの国では、公共の場にある記念物をめぐって騒動が起こっている。

なぜ今回、過去になく抗議活動に火が付いたのかはわからない。2014年にエリック・ガーナーさんがニューヨーク市のスタテン島で警官により窒息死させられた映像が出回ったとき、パリではもちろん、ニューヨークですらほとんど抗議活動は起こらなかった。おそらく、ソーシャルメディアの普及により、今回はより多くの人々が自分の目で事件を見たということがあるだろう。もちろん新型コロナウイルスのパンデミックも、人種的マイノリティの人々が特に大きな影響を受けたいう点で間違いなく火付け役の一端を担ったと思われる。

抗議の規模がこれほどに拡大しているのは、トランプ大統領とも関係がある。ガーナーさん死亡事件の際、米国には、人種間の緊張の高まりにおいて国をまとめることができる大統領がおり、反抗的な警察署を戒めることのできる司法省があった。今、米国を治めているのは、分裂の種をまこうとしている人物である。

しかし、今回の大規模な抗議活動の最大の理由は、喜ばしいことに、人種差別そのものを拒絶する意識の高まりである。自国の人種差別を大きな問題であると考える米国人の割合は、2015年1月の51%から現在は76%に上昇している。英国のインターネットを通じた調査会社であるYouGovが先週実施した世論調査では、英国人の52%が英国社会はかなりまたは非常に人種差別的だと考えており、過去の同様の世論調査の時点から大きく上昇している。2018年には、フランス人の77%がフランスは人種差別と戦う必要があると考えており、2002年の59%から上昇している。米国のシンクタンクであるPew Researchの昨年の調査によると、ほとんどの国で大多数の人々が、人種の多様性は良いことだと回答している。(後編に続く)

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それではまた!

#BlackLivesMatter


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