安倍政権をそろそろ採点してみる【2020】

稀に見る長期政権の安倍首相ではあるのだが、ほんのわずかかもしれないものの、やや、陰りが見え始めている。政権は一度沈み始めれば速く、人々は泥船から飛び降りることになる。果たして安倍政権は今、政権末期なのだろうか?また、世の中や社会のために終わるべき政権なのだろうか、続くべきだろうかというような感じのことを考えてみたいと思う。キーワードは経済、新型肺炎、憲法改正あたりだろうか。

まずは経済だが、これはもはや三角というかバツに近い。アベノミクスで日本には確かに復活の兆しが見えるかのように思えた。野田政権の時代に7000円くらいだった株価が24000円くらいまで回復したのだから、これは正しく評価されなければならない。しかし、アベノミクスによって成し遂げられたのは、多分、これだけだ。「積極的な財政出動」はどういうわけか躊躇しつつの財政出動に変わっており、財政均衡主義に縛られている。アベノミクスの3本の矢の一つである、財政出動は打ち上げ花火で終わってしまった。もう一本の産業育成はどうだろうか。何か新しい産業は育成されたのだろうか?アメリカのGAFAみたいな企業は別に登場していない。ソフトバンクは今自社株買いオペレーションで株価を持ち直しているが、全体として大変なことになっている。自社株買いオペで株価維持というのは、なかなか厳しい状態にあることを逆に示しているとすら言える。農業がその目玉というが、農業で世界競争に勝てる分野はそこでがんばって研究し、働いてきた農家の方々がえらいのであって、この分野は安倍政権が始まる前から強いし、政権に旗振りをしてもらう必要はない。旗を振るだけで何もしないのであれば、そんな政治は不要である。大胆な金融政策も申し訳ないが、あれ、そういえばそんなこと言ってましたよね。な感じである。3本の矢は、有機的なつながりを保ちながら他の政策とも融和しつつ成果を期待するものなので、それぞれが独立して行われるべきものではない。だが、長い安倍時代、3本の矢はそれぞれ気まぐれに放たれ、あんまり遠くまで飛ばず、最近は矢玉も尽きた感が強い。消費増税を2回もやっていて、3本の矢は増税の結果、その効果は吹っ飛んでしまったと言ってもいいだろう。国民生活は更に水準が下がった。このような政権が本当に必要なのか、私には疑問である。

私は安倍政権を頭からディスるつもりはないので、経済に関してはバツではあるものの、新型肺炎については△くらいにしておきたい。新型肺炎の水際せき止め作戦は失敗したが、だからと言って、それを安倍首相の責任に帰するのは、ややかわいそうではないかと思える。新型肺炎なのだ。飛沫感染する死ぬかも知れない伝染病なんて、一体、前回流行したのはいつなんだ?と思うくらい、記憶にない。それこそ1000年ぐらい前の京都みたいな話になるのではないだろうか。森鴎外はドイツでコッホという医者に学び、伝染病の権威になって帰ってきたが、はっきり言って大事なところで能力を発揮したとは言い難い。日清戦争とそれに続く台湾鎮定戦では兵隊たちが栄養失調でばたばた死んでいったが、森鴎外は伝染病だと言って譲らず、要するに誤診して兵隊の犠牲を増やした。飛沫感染で大事になることなんて、近代日本では滅多になかったのだ。731部隊はそういったことを研究していたらしいが、なにかを完成させる前に日本は戦争に敗けたような印象だ。それ以後の伝染病となると、もはやhivくらいしか思いつかず、hivの感染経路は飛沫ではないので、新型肺炎の上陸と広がりは近代日本の初めての経験なのだ。どうすればよかったという正解はなく、確かに初動で鈍かったようには思うが、それだけでバツ印を与えるのは気の毒だ。とはいえ、新型肺炎予防のために不要不急の外出を控え、マスクも買えないという不便もあるので、困っていることは確かではあるのだが。

さて、安倍首相は充分に首相生活を満喫したはずだし、政治家としてこれで満足じゃないのですかとも思えるのだが、それでも彼はオリンピックと憲法改正をなんとか実現したいらしい。オリンピックも新型肺炎で危ぶむ声が上がっており、ロンドンからは東京でできないのならロンドンで、という動きもあるようだ。オリンピックが中止になる予言はいろいろ出回っていたが、まさかここまでリアリティのある話になるとは考えもしていなかった。だが、安倍首相がやりたいのはオリンピックだけではない。憲法改正については今もかなり本気であり、可能性を追求する動きに変化はなさそうだ。安倍氏は実務は菅氏に支えられていて、内閣を麻生氏に支えられていて、党内のことは二階氏に支えられている。この3人の担ぐ神輿が安倍政権であるともいえるのだが、一蓮托生を自他ともに任じる菅氏はともかく、麻生氏と二階氏が安倍氏を支え続けるのかどうかは注目点の一つだったと言える。で、最近は二階氏が安倍氏四選を容認するっぽい発言をしていて、麻生氏も安倍氏が憲法改正したければ、四選めざさねばならないとする発言をして、要するに四選に発破をかけている。二階・麻生が四選支持ということになれば、安倍氏四選はそれなりにリアリティを持っていると言うことだ。自民党の規約を変えなければいけないはずだが、もう、どうにかしてやるつもりなのだろう。中曽根だって選挙で勝って任期を延長を勝ち取ったのだし、シャア少佐だって戦場で手柄を立てて出世したのだ。次の選挙で自民圧勝すれば、安倍四選がないわけではない。安倍氏が四選すれば、憲法改正に取り掛かるのかも知れないが、景気をなんとかしろよと私は思う。私は憲法9条を死守せよとか別に思わないが、絶対に変えなければならないとも思わない。日本人は憲法解釈と運用によって事実上改憲をしている。それは賢者の知恵みたいなものだから、それでいいじゃない、と思うのだ。それに憲法改正をしている場合ではない。経済だ。経済。

次の衆議院選挙で自民圧勝は多分ない。経済は消費増税により崩壊過程に入っているようにすら思える昨今であり、新型肺炎も収束の兆しは見えない。オリンピックももしかたらやれないということになれば、自民圧勝なんてあるわけないじゃん。としか言えないだろう。経済を良くする首相は果たしてどこにいるのか…。

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