TEAM SHACHI「OVER THE HORIZON ~はちゃめちゃ!パシフィコ!~」@パシフィコ横浜 国立大ホール
ブラス民(ブラス隊)、バンド民(特別編成のバンド)を背後に背負った完全体のTEAMSHACHIのライブを生で見るのは初めてとなったが、「再び武道館へ」の思いを爆発させた圧巻のライブだった。
TEAM SHACHIはチームしゃちほこ時代には黄色担当の伊藤千由李が推しであったこともあり、ももクロの次に(あるいはももクロのチケット倍率が高くはずれ続けていた時にはももクロ以上に)現場にライブ参戦していたグループだった。2013年の大阪遠征からはじまり、幕張メッセ、2度の日本武道館、目標としていた名古屋・日本ガイシホール(キャパ1万人)公演「TEAM SYACHIHOKO THE LIVE ROAD to 笠寺 おわりとはじまり at 日本ガイシホール」(2017年)には現地参加もしていたが、翌18年に伊藤千由李が卒業を発表したことなどをきっかけに特にTEAM SHACHIに体制変更して以降は距離を置くようになってしまっていた。
現場復帰のきっかけとなったのはTEAM SHACHI「SHACHI Navigates Spotlight」二部@東京・豊洲PIT のライブでメンバーの口から直接、「私たちはもう一度日本武道館を目指す」の声を聴いたことだった。
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そして、そこへの第一歩として最初に越えなければならないと彼女らが設定したのが今回のパシフィコ横浜大ホール(キャパ5000人)でのライブだった。
そういう事情もあり、最後のメンバー挨拶になるまで直接「ブドウカン」という言葉が明示されることはなかったが、この日のセットリストの裏テーマとしては確実にそれが基調低音としてあったはずだ。そして、もうひとつは「チームしゃちほこからTEAMSHACHIへ」というメッセージだろう。
チームしゃちほこを支えた浅野尚志の新曲である「番狂わせてGODDESS」を名刺代わりの1曲として冒頭に持ってきた。そして、これまではシャチのアンセム的楽曲として切り札的な役割を果たしていた浅野曲「抱きしめてアンセム」を早くも3曲目に投入、これには「ここでもう行くのか」と驚かされたが、最後まで通してみると惜しげもなく切り札を使っていった自信を感じることになった。
とはいえ、このライブの真骨頂は後半部にあった。ももクロもそうだが、こういうのはグループとファンがともに背負ってきた記憶のようなものが共有されて初めて生まれるものだろう。
最初の山は「colors」*1から秋本帆華自らが作詩したソロ曲「まってるね」。チームしゃちほこ時代から彼女たちを応援してきたファンなら武道館で思い出すのはこの歌だろう。「colors」が最初に歌われたのがいつかははっきり分からないが最初の記憶は6人で夢を実現した最初の武道館の歓喜とともにある。そしてそれはそのままMVとなり、モノカラーの画面が鮮やかな6色の色に彩られていく印象的な場面は神話となった。
しかし、この歌が本当にファンにとって大切な曲となったのは2回目の武道館での悔しさとともにあるからだ。復帰に向けて準備を進めていた安藤ゆずは脳震盪状態になりうるような激しい動きのダンスをともなうチームしゃちほこへの復帰は難しいという判断がなされた。さらに当時のチームしゃちほこは安藤ゆずの離脱とともに一時の勢いを失い客席の配置を工夫してなんとか実現にこぎつけたが、武道館を満員の観客で埋めることができなかった。
そうした色んな出来事が重なり、ゆずぽんの記憶を色濃く残しセットリストに当然入っていると思っていた「colors」が入っていないと知ると武道館ライブの最後の曲として、メンバーとそれに協力した少数のスタッフだけで密かに準備、運営も知らない騒然とした中で歌い出したのが、この歌だった。
その次の「まってるね」は秋本作詞のソロ新曲で参加したマラソンのゴールに向けてメンバーにかけられた言葉から書かれた曲らしいのだが、ここで帆華の口から出るとファンに向けての「(武道館で)まってるね」との言葉に聴こえてくるのだ。そして、さらに5人で迎えた二度目の武道館で披露された「パレードは夜空を翔ける」*2で涙腺は完全に崩壊。当時の記憶がフラッシュのように鮮やかに蘇ったからだ。思い出せば6人で最初に武道館に登場した時のチームしゃちほこの勢いは無人の野を行くような無敵感があった。実際に安藤ゆずの病欠のもとでもその勢いは衰えず対戦型ライブイベント「タイナマイト」では唯一ももクロに土をつけた。おそらく、ももクロの後輩グループが初めてももクロに肉薄して尻尾をつかんだと思った瞬間だったかもしれない。路上デビューから約2年4カ月で日本武道館での単独公演を開催。スタダ界隈ではももクロという怪物がいたから目立たなかったけれど正真正銘のスーパーなグループだった。横浜アリーナの少し前の対バンイベントではファンの勢いでこちらも当時赤丸上昇中だったでんぱ組inc.を圧倒していた記憶がある。知らないだけでスタプラの後輩グループのファンはTEAM SHACHIのことを甘く見過ぎと思う。今回はバンド民、ブラス民を背負ってその本来の実力を見せつけたのではないか。
エモーショナルなブロックの後は「ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」「AWAKE」と再び音圧最大級の新旧盛り上がり曲に戻った。実は私はこの日3階最後列の1つ前という超天空席だったのだが、ライブの一体感はそこまでを包み込み、そこでも十分に満足度の高いライブを演出していた。
「START」はチームしゃちほこ時代の楽曲ではあるが、今や「再び武道館へ」と走り出したTEAMSHACHIにとっての新たなアンセム的な意味合いが出てきている。
この歌は明らかにチームしゃちほこ(TEAMSHACHI)のことを歌っている歌であるし、だからこそ
と歌い継がれた時、私の脳裏には武道館であったいろんな出来事がフラッシュバックして再び涙腺が崩壊したのだ。スタプラでもいろんな後輩グループが武道館に立つ夢を語り、佐々木彩夏プロデュースによるAYAKARNIVALも今年は武道館で開催されるが、TEAMSHACHIが武道館に立つこと自体は射程圏内に入ってきた。
だから、ライブの最後で武道館ライブの告知があるかなと思ったのだが、メンバーが挨拶でその名前を口にしてもスケジュールが発表されることはなかった。
肩透かしにあったような思いもあったが、考えてみればそれは当然なのであった。現在はいろんなグループが武道館ライブを行ってはいるが、それはコロナ禍における制限もあり、すべて観客人数制限付きのものである。
ところがTEAMSHACHIの悔しい思いは武道館に立てなかったことではなく「武道館を満員にできなかったこと」なのだ。そうだとすればフルキャパでの公演が実現しておらず、それがいつ可能になるのかが不確定な現時点ではフルキャパでない武道館に立つのはあまり意味がない。
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