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【連載第4回】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにばってん少女隊『九祭』について聴く(4)

ばってん少女隊はダンスミュージックでありながら和のテイストも感じさせるような所属するスターダストプラネットのグループの中でもこれまでにないユニークかつ魅力的な楽曲がそろっており、個人的にも注目してきました。今回そうした楽曲を収録した新アルバム「九祭」が発売になった機会をとらえアイドル楽曲に造詣の深い「『ももクロを聴け!』*1の著者、堀埜浩二さんに話を聞いてみることにしました。
(ZOOMインタビュー発売以前の17日夜に収録。聞き手は中西理)

「YOIMIYA」とケンモチヒデフミ

中西「OiSa」「わた恋」と渡邊忍さんの2曲が続いた後、その次が「YOIMIYA」で発表の時点では和もの三部作と言われたりしていたわけですが、渡邊さんでずっと攻めるのかと思っていたら、ケンモチヒデフミさんを持ってきましたね。大きな流れとしては同じようなゾーンに入る曲でもあると思うのですが。

堀埜  一般的な知名度で言うとケンモチヒデフミさんの方が圧倒的に上。やっぱり、水曜日のカンパネラ*2の主宰者として多くの曲を出してきたし、ボーカルをチェンジしたけれど相変わらず人気はありますから。「YOIMIYA」は「OiSa」を意識しながらどのように自分のテイストを出していくかということで作っているんだなというのがよく分かります。この人は研究家でもあって熱心にそのあたりのところを考えて、依頼されたらそれがどんなアーティストであるかを丁寧に調べ上げてそのなかで自分が期待されていることを考えた曲作りができる人です。『ももクロを聴け!』*3にも書きましたが、とにかく「声ネタ」に関してのこだわりがものすごく強い人なので、何をどうあてるのかに関して非常に学究肌の人です。

中西 「声ネタ」というのがキーワードとして登場しましたが、「OiSa」と「YOIMIYA」の共通点は分かるのですが、一番大きな違いはどこなんでしょうか。

堀埜 もともとの出自の違いが大きい。渡邊忍さんは先ほども話したようにギターを弾いている人、そして歌を歌っている人ということでソングライターでありながら、自分も表現者としてずっと出てきた。それに対してケンモチさんは完全に裏方の人。誰が歌うかとかそういうのがないとあまりトラックを作れない人じゃないかと思う。タイプとしては中田ヤスタカにも割と近いタイプだと思います。だからアーティストとしての立ち位置ももともと違うところにいた人たちでこの違いというのが大きいと思います。

中西 今回5曲目の「さがしもの」。これもケンモチヒデフミさんの提供曲でライブとかではもう何度も演奏されています。

堀埜 この曲が面白いのは一回「YOIMIYA」をやって、単体で「YOIMIYA」を聴くともの凄く典型的なお祭り、しかもどこの祭りとかいうことではなくて歌詞の内容とかもどこのどのお祭りにでも通用するようなわくわく感とか切なさとかがある曲として書いた。それに対して「さがしもの」はどう考えても佐賀の曲という扱いになっている。1曲が「OiSa」との距離を意識して書いていたのに対して、こちらの方がむしろ分かりやすい「OiSa」的なパンチラインとかをしっかりと入れてきているなあと思います。サビのリピートのところとかすごく耳に残りやすい作り方ですよね。

中西 前奏というか、音楽的にはちょっとあれはなんなんですかね。ヨーロッパのどこかの民謡っぽくもあるし、バイオリンの演奏とかはカントリーっぽくも聴こえる。

堀埜 この曲だけではなく、確かに民謡っぽさはあります。ただ、ざっくり全体の内容はアイドル楽曲でありながらテクノ、ディスコっていうところでほぼほぼ言い切れるような音楽の幅にまとめています。

中西 あれはカントリーではなく、アイルランド民謡なのかなあ。

堀埜 印象としてそれはケンモチさんらしい「音ネタ」の使い方なんですが、いわゆるアイリッシュフィドルですね。間奏のバイオリンの感じとかは。これは伝統的なアイルランドのバイオリンの使い方とかをサンプリングして使って、曲にちょっと別のスパイスを加えたりしています。

中西 そうかそれでですか。ダンス中のステップにもちょっとアイルランド舞踊っぽい足さばきを入れてきていますね。バルーンフェスタとのつながりで歌詞に入っているカッパドキアはトルコなんですけどね(笑い)。

堀埜 現時点(発売前に収録)では全曲を通しては聴けていないんですが、テイストとしては単純にならないように一流の作家というのはそうなんだけれどすごく丁寧に工夫していると思います。

堀埜 最初の曲から「さがしもの」あたりまで聴いていった時に実はこういう感じで最後まで行くのかなと若干不安になったんです。その次の長崎の曲(「和・華・蘭」作詞:Daoko 作曲:GuruConnect , Daoko)がここからまたちょっと違うところに踏み込んでいっている。

 和とお祭りの流れを提示しておきながらこの曲ぐらいからジャンル的な幅の広げ方というのが作っている人間の意識としてあるんじゃないか。Daokoさんはもう今ではまあまあベテランじゃないかと思うんですが、ちゃんと80年代のディスコとかファンクとかをしっかりリスペクトするのとこれはどこまでボーカルディレクションにかかわっているのかというのは分からないけれど「和・華・蘭」は明らかにDaokoの歌い方に寄せている。いわゆるウィスパーボイスの歌い方などで完全には確証はないけれどひょっとしたらボーカルディレクションのところまでやっているのか、あるいはそれに近い注文を録音をする時にプロデュース側がDaoko的に歌わせているような感じがあるので、この曲だけばっしょーちゃんがこれまで歌ってきたやり方とはちょっと違う。全員が割とウィスパーぽく歌っている。これはいままでのばってん少女隊にはなかった表現がしっかりできているという意味で面白いなと思っています。

中西 初期の曲とかは別にしてばってん少女隊はボーカルのスタイルがほかのスタプラのグループと少し違う印象を受けるのですが。Perfumeみたいにと感じるのは単にエフェクトのことではなくて、一番典型的なのは私立恵比寿中学なんですけれど、歌い上げるような歌唱が目立つ気がします。そして、それは全部がそうだということではないけれどスタプラの代表的なスタイルになっているように思うんですが。この間いぎなり東北産との対バンライブの映像を見たんですが、東北産のボーカルスタイルが完全に歌姫的な人が歌い上げているのに対して、エビ中の延長線上にあると思ったんですけど。

堀埜 歌い上げるということについてはエビ中も東北産も個人的に歌い上げ系の人はいるんです。でもグループ全体として別にそこに足並みがそろっているわけでは決してない。コーラスやってもユニゾンであってもすごく複雑な音の混ざり方をするというのが一番魅力的なことなのだと思います。

九祭

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ALBUM | 4th ALBUM
九祭
2022.10.19 Release
■収録曲
01:OiSa (2021 ver.)(作詞作曲:渡邊 忍(ASPARAGUS))
02:わたし、恋始めたってよ!(作詞作曲:渡邊 忍)
03:YOIMIYA(作詞作曲:ケンモチヒデフミ水曜日のカンパネラ))
04:御祭sawagi(作詞:ASOBOiSM 作曲:PARKGOLF , ASOBOiSM)
05:さがしもの(作詞作曲:ケンモチヒデフミ
06:和・華・蘭(作詞:Daoko 作曲:GuruConnect , Daoko)
07:沸く星(作詞:没 a.k.a NGS(Dos Monos), uami 作曲:没 a.k.a NGS , uami)
08:Bright & Breezy(作詞:YonYon 作曲:YonYon , DÉ DÉ MOUSE)
09:南風音頭(作詞:村里 杏 , サトウ ショウゴ 作曲:サトウ ショウゴ)
10:禊 the MUSIC(作詞作曲:渡邊 忍)
11:虹ノ湊(作詞:Rin音 作曲:Rin音 , Taro Ishida)
12:OiSa PARKGOLF REMIX

*1:https://simokitazawa.hatenablog.com/entry/2022/06/15/121812

*2:https://www.youtube.com/watch?v=dbGCrX_zPfs

*3:作曲というクレジットではないが「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス」の挿入歌「天国のでたらめ」に編曲として参加、事実上トラックのすべてを制作している。作曲はドレスコーズの志磨遼平。


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