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ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」@都立芝公園 集会広場(23号地)

ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」を都立芝公園 集会広場(23号地)で観劇。野外に設営された舞台の背後には公園の灌木越しにライトアップされた東京タワーが聳え立ち、借景となっていたのが面白かった。2018年にほぼ同じ表題の作品「SUPER HUMAN」*1を上演しており、その時に出演していた4人のうちAokid、原田つむぎ、深澤しほの3人が今回も出演しており、その続編的な性格の作品と言っていいのかもしれない。その時の感想で「規模感はまったく違うが、戯曲に指定された音楽的な構造が舞台全体の構造やテキストを構築しているという成り立ちが維新派のことを思い起こさせた」と書いていたことに公演後に過去のブログを確認してみて初めて気が付いたが、そういう意味では今回の「SUPERHUMAN 2022」が野外劇として、東京タワーを借景にしてランドスケープアート的な文脈の中で上演されたことは非常にスリリングなことだと思った。
 維新派が巨大なランドスケープアート(風景芸術)に準えられるとすると遠景の東京タワーやビル群と対比されるように京都の石庭を模した舞台美術が配置された。その対比は非常に箱庭的であり、対極的なものを感じさせる。対極にあるその両者をつなぐ存在として、Aokidの発する言葉と身体が置かれたのが興味深い。Aokidの存在は巨大な東京タワーと比べるとあまりにもちっぽけではあるが、彼の発する額田大志が紡いだ言葉はここから地球を半周してオーストラリアに行ったり、宇宙にとんだりするのだ。そして、東京タワーとビルの狭間にあるこの小さな公園ははるか昔には大きな野原で戦場でもあったという過去にも額田大志は思いを馳せさせる。コロナもあり、野外での公演はやりにくくなっていたが、ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」は野外劇というものの可能性を新たに開いた企画だったのではないだろうか。

ただ、少し気になったのはAokidは見ていて確かに面白かったのだが、その面白さというのはその軽妙なキャラクターであったり、アクロバティックな動きもこなせるダンサーとしての卓越した能力などパフォーマーのAokid個人としての面白さであり、この作品はそうした出演者個人の面白さに寄りかかっている部分が大きいのではないかと感じたことだ。程度の差こそあれ同じようなことは原田つむぎ、深澤しほらほかの出演者にも言えることだ。額田大志の作品はもう少し作品の構造自体の面白さとか緻密に構成されたテクストの面白さからなることが多いが、その部分ではこの「SUPERHUMAN 2022」は少し物足りなさを感じるところもあった。

2022年10月21日(金)~23日(日)
東京都 都立芝公園 集会広場(23号地)

構成・演出・音楽:額田大志
出演:Aokid、東郷清丸 / 長沼航、原田つむぎ、深澤しほ、額田大志

*1:simokitazawa.hatenablog.com

音楽 演劇 野外 パフォーマンス

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