AMEFURASSHI (アメフラっシ) 2nd Tour〈Drop Tour 2022〉@KANDA SQUARE HALL
AMEFURASSHIとたこ虹
AMEFURASSHI(アメフラっシ)のアルバムツアー〈Drop Tour 2022〉のファイナルに参戦。まだ会場は小さいけれど新曲もそろって、ここからどのような展開を見せてくれるかが本当に楽しみな公演だった。ももクロの次に応援していたたこやきレインボー(たこ虹)がコロナ禍による停滞などもあって、グループ解散に追い込まれた。
AMEFURASSHIはここからがスタートでまだまだこれから。今回のライブで歌やダンスでアイドル界トップクラスの実力があることを見せつけたが、たこ虹の例を見たらいくら歌やダンスの実力があっても、いろんな才能が個々にあってもそれだけではアイドルを続けていくことができないということを思い知った。AMEFURASSHIが更なる飛躍を見せられるかはここからのAMEFURASSHIチームの戦略にかかっていると思い、その試金石としての今回のツアーファイナルには注目していたのである。
ももクロの「5th DIMENSION」ツアーもそうであったし、現在行なっている「祝典」ツアーもそうだから、アルバムツアーではよくあることかもしれないのだが、1部はアルバムの曲順の通りのノンストップの進行。ステージの背景には4枚のLEDパネルが据え付けられており、それぞれの曲に合わせての映像、ビジュアルが展開されるなど作りこまれたライブを感じさせられた。
アイドル描いた「ARTIFICIAL GIRL(人工少女)」
スタートは新曲の中で1曲のみ客前で披露されていなかった「ARTIFICIAL GIRL(人工少女)」だ。人工的に創造された少女=アイドルという意味であり、アイドルをモチーフとした楽曲である。ディズニーのエレクトリカルパレードを思わせる前奏部分はかわいらしいが、曲後半になると英語歌詞を多くちりばめたファンキーなナンバーに変容し展開していく。今のAMEFURASSHIを象徴するような楽曲といえるかもしれない。
「DROP DROP」「BAD GIRL」「Lucky Number」とおなじみのナンバーが続いた後はすでにMVで披露された宇多田ヒカルの初期曲を連想させるようなR&Bナンバー「Blue」をパフォーマンス。続いてこれも新曲の「Drama」も披露されたが、これもコミカルなダンスが楽しく、終盤に入る小島はなの超ハイトーンボイスにも圧倒された。「DROP」に新たに収録された新曲は全部で5曲でこのほかにはバラード曲の「UNDER THE RAIN」とハイパーポップで明らかにtik tok向けを意識したと思われる「MOI」があるのだが、いずれも音楽としての方向性が全く違うため、単純な比較は難しい。だが、私個人としては楽曲の好みからいうと「Drama」「ARTIFICIAL GIRL」に惹かれた。
短いMCを挟んで後半に入ると一転して既存曲のパートになるのだが、ダンスも歌唱もよりタイトな仕上がりとなっていて、グループとしてはもちろん個々のメンバーのスキルが格段に向上しているのが十分にうかがえるライブとなった。
第二部もアルバム楽曲のパートは同じ曲順で進行。第二部では客席が中央やや左、女性エリアの後ろで映像とメンバーのパフォーマンスを同時に見ることが可能な席になったこともあり、映像も含めたアルバムの世界観の提示がより色濃く感じられるものとなった。「DROP」の楽曲を俯瞰的に聴くと歌詞の世界で「DROP」=雨粒の比喩として、ここまでのAMEFURASSHIが歩んできた苦難な道から、雨が上がって空に虹がでるというメタファーに代表されるような苦難が過ぎ去り、将来への希望のもとにここから突き進んでいくぞというような自分たちの現在の立ち位置を繰り返し表現していると思われてくる。
「UNDER THE RAIN」アンコールに
第二部も第一部と同じ曲順と思っていたのが裏切られたのは現在形の自分たちの自画像を力強く歌い上げる「UNDER THE RAIN」を歌わなかったこと。その時点では「あれどういうこと」と思う程度だったのだが、アルバムパートが終わってもMCには入らずノンストップで続けて「雑踏の中で」「Rain Makers!!」「ハイ・カラー・ラッシュ」「フロムレター」「Over the rainbow」と次々と歌い継がれていくことにより、今回のライブに込められた意味合いがだんだん明らかになってきた。「メタモルフォーズ(飛可)」「Staring at You」と全力のパフォーマンスで本編が終わった時点で、これは凄いことになりそうだという高揚感が充満してきた。この流れからすると過去のアメフラっシのことを歌い上げた「STATEMENT」と現在のAMEFURASSHIのことを歌い上げた「UNDER THE RAIN」の2曲をアンコールで歌うということが分かってきたからだ。実際現場で感じたこの2曲に込めた気迫には鬼気迫るものがあって、MCでは感極まった鈴木萌花が涙ぐんで声をつまらせ、それに釣られて愛来も涙を見せるなど「様々な苦難を超えて私たちはここにいる。そしてまだまだ上を目指すぞ」という思いを強く感じさせるものとなったからだ。こうしたことに私も大いに心を動かされたのだが、実は個人的にこの日のライブで表現された「雨」と「雨上がりの虹」「そして夜空の星」のイメージが繰り返された今回のライブは同じ思いを抱きながら思いを果たせなかったもうひとつのグループのことを強く想起させるものだったからだ。
引き継ぐたこ虹の果たせぬ思い
もうひとつのグループなどとぼかした表現をしたけれど、冒頭にもそのことを書いたようにもちろんそれはたこやきレインボー(たこ虹)である。レインボーというグループ名に触発されたようにたこ虹の楽曲にもこの日歌われた「雨」と「雨上がりの虹」「そして夜空の星」という同じモチーフを歌った楽曲があって、特にメンバーの彩木咲良が自ら作詞をした「SuperSpark」は夜空に輝く星をいつか自分たちもつかむぞという決意を歌い上げた楽曲だったが、グループの解散によりそれは果たせぬ夢に終わった。このツアーファイナルの主題は「アメフラっシからAMEFURASSHIへ」ということだったと思うし、勝手に別のグループを重ねることはよくないと思ってはいるが、たこ虹がつかめなかった星をいつかAMEFURASSHIにはつかんでほしいと思ったのである。
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すでに規制退場のアナウンスが場内に流れる中、鳴りやまない拍手に呼応するように登場したメンバーが披露した「DROP DROP」は予定調和のアンコールではなく胸を打つものがあった。ここでもたこ虹の日比谷野音でのやはり予定になかったダブルアンコールのことを思い出し涙したのだ。
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