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ガラスの破片

朝、出勤すると、ガラスの扉が粉々に割れていた。

幸い当店の入口ではなく、上の階の住人が使用している別の扉だ。もともと観音開きの扉の片方があった空間が、ぽっかり無になっており、床には青いガラスの破片が大量に飛び散っていた。車がつっこんだのだろうか? 酔っ払いが割ったのだろうか? 夜中にここで起きた事件を想像し、私たちはぞっとするばかりだった。

やがてビルを管理するおばさんがやってきて、粉々になったガラスをホウキで掃きだしたので、「ここで何が起こったんですか?」と恐る恐る聞いてみた。すると彼女は「明日、業者が来て直しますよ」と、予想の斜めを行く回答。いやいや、私は別に早く直せと急かしているわけではない。ただ事実を知りたいのだ。

もう少し詳細を聞いてみたところ、「朝来たらこうなってたんよ。誰が割ったんだろうねえ」と、天気の話でもするかのように平然と話すではないか。いやいや、これって警察を呼んで、犯人に弁償してもらう案件ではないの?

しばらく様子を見ていると、上の階の住人も、当店の利用客も、粉々になったガラスを踏んでも気にすることなく、自然に階段を行き来している。みんな平然としすぎである。

業者は結局、翌日には来ず、1週間ほど後に現れ新しい扉を設置して行ったのだが、扉の左右で手すりの位置が10センチほど合っておらず、心の弱い私はもやもやするばかりだった。

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ライター。著書に『韓国タワー探究生活』(韓国語、ユアマインド刊)、連載に日刊サイゾー『韓国珍スポ探訪記』、北陸中日新聞『雨乃日珈琲店だより』ほか。ソウルにて雨乃日珈琲店を運営。