自選30首「先生、しまださんが塩もみ野菜をばらまいてます!」

三匹のくまのスープが飲みたくてまだふらふらと旅をしている

ゼリーの中で桃がねむっているようで君がねむっているようで桃が

君にまた電話 カレーの皿にぼくはにんじんの避難所を作り続ける

手の中でロックアイスを割りながら冒険の果ても意外に明るい

蟹クリームコロッケフォークで割ってほらやさしいことはこんなにもろい

ていねいに肉を縛ってゆくゆびの悪びれもせず輝いてゆく

二つめのサンドイッチにはからしバター 固ゆで卵も涙ぐめばいい

教わった通りに曲がるスプーンにかすかにチキンカレーの匂い

まだ春というには寒く魚肉ソーセージで叩くテーブルの縁

大人なら慣れるでしょうね苦瓜のわたスプーンで掻きだしながら

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドねえどうしてもバナナを明るく描いてしまう

揚げ浸しに生姜をすって丁寧な夏の暮らしにかける片足

わたあめをかじってつくる水滴のあまいけれどもこれは傷口

へんぽんとにほんのこっきはんぺんがじわじわ鍋をあふれてくるよ

単純な人でいいねと笑われたいキャベツの中の迷路をひらく

占星術はじめましたの張り紙にほんのり透ける冷麺の文字

ピクルスと使い余した休日とパセリをきざむタルタルソース

わたくしが諦めたならこの缶のつぶつぶコーンはどうなるのだろう

ひとりでにひらく紙ふた三分のくらさにがまんできない海老だ

八宝菜のうずらの卵逃げやすく重たい話を待たせてしまう

暴力が足りない気がして熱すぎる缶コーヒーをぐっと握った

二歩下がる一日でした焼きそばの湯きりで夜空ぼこんと鳴らす

食卓に補助線を引くあきらかにあなたの方が醤油に近い

たまごかけごはんのために炊くごはんなんにしたって「せめて」は欲しい

時々はまじめになろうよオーロラのしたたる指と月見バーガー

その人の決してゆずらぬ正論のもめん豆腐の角の鋭さ

わたしたちは遥かな森を諦めてジンを一本まるまる空ける

たそがれを落下してゆく生卵(多分受け止めきれないだろう)

だいたい四年半ぐらいの、うたの日、結社誌、ツイッターで流したものの中から、特に飲食に関するものを選んでみました。

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