幻想句集・参『海霧』
ネットプリント幻想句集・参『海霧』から一人一句、好きな句をあつめました。
眼球Aになるまでの手記夜盗虫 縞田径「まなうら療法」(俳句)
水中花鏡の奥に消えし日よ しまりす「夏の精」(俳句)
一斉に線香花火斬首され 多舵洋「夏の贄」(川柳)
行旅死亡人公告へ夏の蝶 愁愁「水面から」(俳句)
貝殻が叫んでいるよスガシカオ 千春「貝の甘さ」(川柳)
マネキンの首をはずしてすげ替える 涼閑「篝火」(川柳)
行旅死亡人公告へ夏の蝶 愁愁「水面から」
「行旅死亡人」とはつまり身元不明の死者のこと。そして、それは官報に掲載されるらしいですね。なんらかの理由があって、主体はこの公告を閲覧しているんだと思います。紙媒体の官報と考えるのが自然なのかもですが、わたしはネットのデータベースを閲覧してる人を想像してしまいます。死者のリスト、それも行旅死亡人と呼ばれる死者たちのリストへひらひらと夏の蝶が影を落とす、非情の情みたいなものを感じる句でした。
マネキンの首をはずしてすげ替える 涼閑「篝火」
ぱっと見、マネキンの衣装を着替えさせるシーンをさらっと詠んだ句のようで、でも、下五の「すげ替える」で、えっちょっと待って……って気持ちにさせられました。すげ替えるんですよね。首を。えっ、待って、マネキンの頭部を別の頭部とすげ替えるの?それともマネキンの頭部を別のなにかにすげ替えるの?えっ、もしかしてその別のなにかって主体自身なの?って思ったとき、あまりにさらっと詠まれてるから余計に怖くなっちゃったんですけどーって思わずきょどってしまう一句でした。
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