自選30首「お釣りとっといてください えっ足りてない?嘘でしょこんなに星は綺麗よ」
じゃあ死にたてに触ったことはあるの と聞かれうんと答える
すべすべの薬は甘い 舌のうえにぽつりと重さが残されている
もうずっと夏だったような顔をして校庭に国旗掲揚台がある
ある日オウムがきみそっくりに「ねえ」と言う いつかビールをこぼした窓に
チラシと共に押し付けられた花種がかばんの中でひやりと触れる
シンデレラやシンデレラ ねえさんたちが眠るから夜中は鼻をかまずにお泣き
「しっぱい」と言われてふいに収縮するエクボがあればその下あたり
かなしさはどんなにやさしくちぎっても花だけ落ちるオオイヌノフグリ
昨日からの雨つよい雨よわい雨 ジミー・ウェールズそろそろ寄付は集まったかい
わたしたちは火に飢えていて紅葉の燃え立つような朱にも触れる
遊びの時間が終わったことも気づかずに一人で揺れているね、ブランコ
雨滴また雨滴 窓辺で春をまつ硝子の中のひやしんすたちへ
きみのスナフキンで涙を拭きました。すみません、鼻もかみました。
サウンド・オブ・ミュージックさあ、輪になってあたしの嫌いなところを挙げて
湖でしんと頭を静めたら、手紙、出さなくてよかった気がした
いぬの名をロ。リー。タ。みたいに口にして舌に転がる枯草のあじ
しゃけおにぎり割ればほろほろあふれだすしゃけ 夏の海をこんなに離れて
人造人間からほのかに香る ああこれはフエキどうぶつのりのにおいだ
ジェルソミーナ、ジェルソミーナ。浜に寄す波が犬ころ洗ってゆくよ
ふいに荒む空気を読んでいたように洗濯機が今脱水に移る
Hey Siri サバンナのきりんが膝をつきまた立ち上がるところを見せて
たぶんずっとひよこちゃんだしその辺のぺんぺん草に負けたりもする
あれ買ってきた?と聞かれて振ってみせるドン・キホーテの黄色いふくろ
さっちゃんはコアラみたいな顔だったねと言われて記憶が上書きされる
轍のまま凍ったみちをゆっくりとふたごのゾンビみたいに歩く
踏み切れないぼくらの名前はぐらとぐら「痛いんじゃない?」「怖いんじゃない?」
アンディは何度もウッディを手離しあなたは何度もそこで涙ぐむ
知っている急所すべてに触れてみるもう二度と夏が来ない気がして
ジョンソンエンドジョンソンベビーパウダーをはたいて蝶にうまれてきたの
ドラマチックが足りない気がしてもう一度ぬるいペーパーナイフを拾う
字余りをメインに、破調ぽいのをちょっと混ぜて選んでみました。
って言うか、わたしの短歌もしかしたら半分以上字余り構成かも知れないことに今回改めて気づかされて、これはあんまり良くない傾向かもと思ったりしています。
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