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素材本来の味
父の微熱が続き、蕁麻疹まで出てきた。蕁麻疹には大根おろしが効くらしいと、ふとネットの記事で読み、父に大根おろしを食べさせることにした。なんでもご飯の上に乗せてしまい、ロコモコ丼化させ食事する父の味覚を疑っていたので、試しに、大根おろしに何もかけず出してみたら、そのまま食べた。
素材そのままの味覚を父は楽しんだであろう。
弔いの言葉
ある日、父が母に向かって
「あなたの、ご両親は亡くなったのですか?」
と聞いた。母が亡くなっているよと言うと、
「それは弔わないと。南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経、アーメン」
母の両親は、父により混合宗教にて弔われた。
ヤモリの憧れの人
窓に毎日来るヤモリを、父は待ちわびて、何度も窓を見にくる。
「ヤモリさん、ヤモリさん、早く白いお腹を見せて下さい」
そんな日々が続いた日、突然、
「ヤモリさんは、奥方さまを尊敬し、奥方さまのようになりたいそうです」
と言った。
父は、認知症によって、ヤモリの気持ちがわかるようになったらしい。
父のワイルド
父の歯磨き中にゴキブリが出た。父の歯磨きを手伝っていた母がゴキブリを退治し、ゴキブリを捨てる為のティッシュを取りに行き、戻ってみると、ゴキブリの姿はなくなっており、母は父に、ゴキブリの所在を問うたところ、ゴミ箱を指さした。父は、素手でゴキブリを掴み、ゴミ箱に捨てたらしい。
逞しくなった父。
そうだ、京都にいこう
日が暮れてから、こちらが気づかないうちに、父が家を出てしまった。自転車で探しに行き、見つけたものの、帰ろうよ、と言うと「僕は家に帰るから」と家とは違う方向へ行く。仕方ないので、回り道をし、ばったり会った風を装い、
「やあ、お父さんやん、今うち仕事帰りやねん、ただいま。迎えに来てくれたん?ありがとう。一緒に行こう。今日仕事でななんたらかんたら」
と父をこちらのペースに入れ、帰宅したら、母が父を探しに