しまなかこう

ゆきおです。 認知症の父を在宅で看取るために、 実家に戻ってきました。 父と共に過ごす…

しまなかこう

ゆきおです。 認知症の父を在宅で看取るために、 実家に戻ってきました。 父と共に過ごす日々を綴ります。

記事一覧

何枕?

父の発熱や、往診依頼、ケアマネとのやり取りなどを考えながら眠った日、夢を見た。 父の葬儀だった。親族や来賓者に頭を下げ、会話をしたり、次の段取りを考えたりと忙し…

3

ツヤツヤ

1日の終わりに、父のお尻を洗ったあと、汚れはじきを兼ねて、馬油を塗っていた。カサカサだったお尻は、うるおいと輝きを放ちはじめ、 父のお尻は現在美尻である。

2

お湯加減

発熱が続いてデイサービスに行けない父を、熱が少し下がったタイミングでお風呂に入れた。シャワーだけでは寒かろうと、少しだけ湯舟につけることにし、40度のお湯につけて…

シーズン終了

寝てばかりの父がふと起きてきて、私に 「今夜は、7時から日本ハムの野球の中継があるから見ないといけないんです」 とワクワク顔で言った。私は野球に興味がないので、 「…

素材本来の味

父の微熱が続き、蕁麻疹まで出てきた。蕁麻疹には大根おろしが効くらしいと、ふとネットの記事で読み、父に大根おろしを食べさせることにした。なんでもご飯の上に乗せてし…

4

1チャンネル腰痛

デイサービスでコケた父。腰痛により動けず母に、 「1チャンネルをつけてください。1チャンネルをつけたら腰の痛みは取れるんです。奥方さまが1チャンネルをつけないとだめ…

3

弔いの言葉

ある日、父が母に向かって 「あなたの、ご両親は亡くなったのですか?」 と聞いた。母が亡くなっているよと言うと、 「それは弔わないと。南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経、ア…

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ヤモリの憧れの人

窓に毎日来るヤモリを、父は待ちわびて、何度も窓を見にくる。 「ヤモリさん、ヤモリさん、早く白いお腹を見せて下さい」 そんな日々が続いた日、突然、 「ヤモリさんは、…

4

父が働いた日

母の留守中、電話が鳴った。二階にいた私は、子機で取ろうとした瞬間、階下で父が取った。 電話なんて何年も取らなかった父、しかも難聴。様子を見ていると、 「はい、なん…

3

父のワイルド

父の歯磨き中にゴキブリが出た。父の歯磨きを手伝っていた母がゴキブリを退治し、ゴキブリを捨てる為のティッシュを取りに行き、戻ってみると、ゴキブリの姿はなくなってお…

4

時計読み

デイサービスから帰宅した父が、目覚まし時計を見つめては、 「京都の皆様、ただいま5時23分です。よろしくお願いします」 と言うようになった。1分おきに、進んだ時間を大…

3

絶賛 放送中

父が最近、本の朗読を始めた。本を読む前、玄関の小窓を開けて、 「ゆきおさーん、京都のみなさん、お待たせしました。○○の合戦 47ページ○○の回に入ります。○○の回…

1

そうだ、京都にいこう

日が暮れてから、こちらが気づかないうちに、父が家を出てしまった。自転車で探しに行き、見つけたものの、帰ろうよ、と言うと「僕は家に帰るから」と家とは違う方向へ行く…

2

花咲か爺さん

父が、 「もしもの時の為に駅の写真屋さんに写真を撮りにいく」 と言って、家を出たので、後を追った。父の行ったバス停は、目的の駅には行かないバス停だったのだけど、途…

1

父との約束

父は、デイサービスから帰ってくると、いつも、ポケットがデイサービスのティッシュでパンパンに膨らんでいる。 ズボンを脱ぐと、デイサービスの新聞を、靴下に挟んでいる…

2

難聴と笛の周波数

難聴の父との会話は連絡がうまくいかない。 耳さえ聞こえていれば、父との生活は、言葉でのコミュニケーションが取れるのに。私の趣味の篠笛は、父に聞こえるのだろうかと…

2

何枕?

父の発熱や、往診依頼、ケアマネとのやり取りなどを考えながら眠った日、夢を見た。
父の葬儀だった。親族や来賓者に頭を下げ、会話をしたり、次の段取りを考えたりと忙しかった葬儀の晩、少し眠ろうと、布団に入り、ふと目が覚めると、ふすまを開けて父が立っていた。
「ああ、これが世に言う夢枕に立つてやつか」 と、何を言うのか待っていてもいつまでたっても何も言わないので、
「夢枕じゃないのか?あ、父は無口だから何

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ツヤツヤ

1日の終わりに、父のお尻を洗ったあと、汚れはじきを兼ねて、馬油を塗っていた。カサカサだったお尻は、うるおいと輝きを放ちはじめ、
父のお尻は現在美尻である。

お湯加減

発熱が続いてデイサービスに行けない父を、熱が少し下がったタイミングでお風呂に入れた。シャワーだけでは寒かろうと、少しだけ湯舟につけることにし、40度のお湯につけてみた。
「お湯加減はどうですか?」
そう聞くと、
「いい湯加減でございますー」
と返ってきた。40度ではぬるいかなと思い、42度にして、また、
「お湯加減はどうですか」
と聞いてみた。すると、
「いい湯加減でございますー」
と返ってきた。

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シーズン終了

寝てばかりの父がふと起きてきて、私に
「今夜は、7時から日本ハムの野球の中継があるから見ないといけないんです」
とワクワク顔で言った。私は野球に興味がないので、
「へー、そうなんですか。楽しみですね」
そう返した。続いて台所に行き、父は晩ご飯の用意に忙しい母に
「今夜は、7時から日本ハムの野球の中継があるから見ないといけないんです」
とワクワク顔で言った。母は、振り返り、
「え?野球の中継?もうシ

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素材本来の味

父の微熱が続き、蕁麻疹まで出てきた。蕁麻疹には大根おろしが効くらしいと、ふとネットの記事で読み、父に大根おろしを食べさせることにした。なんでもご飯の上に乗せてしまい、ロコモコ丼化させ食事する父の味覚を疑っていたので、試しに、大根おろしに何もかけず出してみたら、そのまま食べた。
素材そのままの味覚を父は楽しんだであろう。

1チャンネル腰痛

デイサービスでコケた父。腰痛により動けず母に、
「1チャンネルをつけてください。1チャンネルをつけたら腰の痛みは取れるんです。奥方さまが1チャンネルをつけないとだめなんです」
と言う。母が不思議そうな顔をして、テレビの1チャンネルをつけると

このチャンネルは登録されていません

と出た。1チャンネルでは腰痛は治らないようだ。ちなみに2チャンネルはためしてガッテンだった。

弔いの言葉

ある日、父が母に向かって
「あなたの、ご両親は亡くなったのですか?」
と聞いた。母が亡くなっているよと言うと、
「それは弔わないと。南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経、アーメン」
母の両親は、父により混合宗教にて弔われた。

ヤモリの憧れの人

窓に毎日来るヤモリを、父は待ちわびて、何度も窓を見にくる。
「ヤモリさん、ヤモリさん、早く白いお腹を見せて下さい」
そんな日々が続いた日、突然、
「ヤモリさんは、奥方さまを尊敬し、奥方さまのようになりたいそうです」
と言った。
父は、認知症によって、ヤモリの気持ちがわかるようになったらしい。

父が働いた日

母の留守中、電話が鳴った。二階にいた私は、子機で取ろうとした瞬間、階下で父が取った。
電話なんて何年も取らなかった父、しかも難聴。様子を見ていると、
「はい、なんですか?なんですか?わかりません」
と言っていたので、私が代ろうとしたら、受話器を置いてしまった。父は、窓のそばにいき、外を見ながら、首を傾げていた。
私がまた二階に戻ると、宅配便のトラックが家の前に止まり、少しすると走りさっで行ったので

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父のワイルド

父の歯磨き中にゴキブリが出た。父の歯磨きを手伝っていた母がゴキブリを退治し、ゴキブリを捨てる為のティッシュを取りに行き、戻ってみると、ゴキブリの姿はなくなっており、母は父に、ゴキブリの所在を問うたところ、ゴミ箱を指さした。父は、素手でゴキブリを掴み、ゴミ箱に捨てたらしい。
逞しくなった父。

時計読み

デイサービスから帰宅した父が、目覚まし時計を見つめては、
「京都の皆様、ただいま5時23分です。よろしくお願いします」
と言うようになった。1分おきに、進んだ時間を大きな声で言い、まるでそれが自分の仕事のようだった。
母が、なぜそんなことを大声で言うのかを父にたずねたところ、
「大きな声で言わないと京都まで届かないから」
と答えたという。母が、
「京都の人も時計持ってるからいちいち言わなくていいよ

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絶賛 放送中

父が最近、本の朗読を始めた。本を読む前、玄関の小窓を開けて、
「ゆきおさーん、京都のみなさん、お待たせしました。○○の合戦 47ページ○○の回に入ります。○○の回に入ります」
などと呼びかけを行い、小窓を閉めて朗読を始める。章が終わると、また小窓を開け、次の題名と章とページを告げている。
章の途中でトイレに行きたくなると、また小窓を開け、
「トイレにいってきます。しばらくお待ち下さい」
トイレを出

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そうだ、京都にいこう

日が暮れてから、こちらが気づかないうちに、父が家を出てしまった。自転車で探しに行き、見つけたものの、帰ろうよ、と言うと「僕は家に帰るから」と家とは違う方向へ行く。仕方ないので、回り道をし、ばったり会った風を装い、
「やあ、お父さんやん、今うち仕事帰りやねん、ただいま。迎えに来てくれたん?ありがとう。一緒に行こう。今日仕事でななんたらかんたら」
と父をこちらのペースに入れ、帰宅したら、母が父を探しに

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花咲か爺さん

父が、
「もしもの時の為に駅の写真屋さんに写真を撮りにいく」
と言って、家を出たので、後を追った。父の行ったバス停は、目的の駅には行かないバス停だったのだけど、途中から写真を撮る目的を忘れ、バスに乗ることが目標になってしまったようで、バスが来たら乗るんだと言う。バスが来ると、私は運転手に向かって素通りしてくれとジェスチャーをし、運転手は怪訝な顔をしながらも状況を理解し、素通りしてくれていた。20分

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父との約束

父は、デイサービスから帰ってくると、いつも、ポケットがデイサービスのティッシュでパンパンに膨らんでいる。
ズボンを脱ぐと、デイサービスの新聞を、靴下に挟んでいる。
母は、デイサービスに行く前に父と約束をする。
「デイサービスに行って、たくさんティッシュを取らないこと。新聞を持って来ないこと。わかった?」
「わかりました」
と父は返事をする。
しかし帰ってくると、毎回ティッシュと新聞が
もれなくつい

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難聴と笛の周波数

難聴の父との会話は連絡がうまくいかない。

耳さえ聞こえていれば、父との生活は、言葉でのコミュニケーションが取れるのに。私の趣味の篠笛は、父に聞こえるのだろうかと試してみることにした。吹いてみると、父は聴いているようだ。 
吹き終わると、「上手に吹けたね、えらいえらい」と褒めてくれた。笛の音は、難聴の耳に届くらしい。笛で喋れたなら、父とお話しできるのに。
また吹いてみた。父は、「上手に吹けたね、え

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