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第3回 金利の世界(実質金利)

フィッシャー方程式と呼ばれる以下の等式をご存知でしょうか。

実質金利=名目金利ー(期待)インフレ率

講演の第一声でこんな導入をすると、学生時代から数学から逃げてきた人にはウケが悪そうである。
ネットで調べると、よく「名目金利と実質金利の関係を表す等式」などと書かれている、自分の理解では、この式によって実質金利という概念を定義したという方がいくらか正しいように思える。
そしてこれは、厳密には、以下のように表される。

1 + 名目金利 = (1 + 実質金利) × (1 + (期待)インフレ率)

多くの場合金利やインフレ率の絶対値は微小なので、二次の微小量を切り捨てて整理するとはじめの式が得られるというわけである。このように表示することでGDPデフレーターの定義式とも整合性が出てきてくれる。
インフレ率か期待インフレ率かは、過去と未来という違いに過ぎないため、気にする必要はない。

実質金利の直観的な説明

ある人が100円を持っていて、それを1年間銀行に預けることにしたとする。銀行はその100円に対して5%の利息をくれると言っている。これが名目金利である。これは当然1年後には105円になる。

しかし、同じ期間に物価が上昇していて、例えば物の価格が全体的に2%高くなっているとする。これが期待インフレ率である。今あるものが去年よりも2%高く売られているので、あなたのお金の買う力は下がっている。

この場合、実際に彼のお金がどれだけ価値を増したかを考えると、名目金利5%から物価上昇率2%を引いた3%が実質金利である。つまり、100円が105円になったけれど、物価が上がっているので、実際には103円分(厳密には105÷1.02≒102.9円)のものしか買えないことになる。この「3円分の価値が増えた」というのが実質金利で、お金の実際の価値がどれくらい増えたかを示している。
簡単に言うと、実質金利はお金が実際にどれだけ「強く」なったかを示す。

期待インフレ率とは?

国民の将来にわたってのインフレ率の推移予想で、英語では"expected inflation rate" という通り、予想インフレ率とも訳される。
実務上は期待インフレ率としてブレークイーブンインフレ率(Break Even Inflation rate、BEI)が用いられる。これは物価連動国債の利回りから逆算したもので、少し論理関係がややこしいが、日本では物価連動国債の利回り自体を実質金利といい、フィッシャー方程式に従って期待インフレ率が天下り的に求まるという認識で良い。

まとめ

今回は「実質金利」という、そこに物価と金利が存在する以上いわば自動的に定まる一概念について説明をした。それが定義であるというだけなので、物価と名目金利を独立変数と捉えても問題なかったわけだが、実際にはそれらは互いに影響し合う。
次回の第4回では逆に、物価と金利の相互作用が明らかになる。実体経済を議論するにあたっては、こちらを理解することの方が幾分重要と言えそうである。


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