異説・狐憑

それは起源よりも、はるかに昔のこと。
熱い熱い大陸の片隅にある集落で、若者シャクに憑き物が憑いた。
隣の部族との争いで弟を殺され、その躯が引き裂かれ獣の餌食となる様を見せつけられてからの、出来事であった。

集落の裏手の小高い丘から、気高い祖霊達から卑しい獲物であった獣達の霊まで、さまざまなものがシャクの肉体に取り憑いて荒らし。
時に暴れ、時に喚いて怒鳴り、時に全身を引きつらせ。
その目は血走り、爪は汚れてひん曲がり、口元は涎を垂らしっぱなし……という有様。

遂に、シャクは檻に入れられ、丘の一番上の平たく大きな赤い岩に乗せられてしまった。

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