定演を振り返る Ⅲ

いよいよシリーズ最終回。第3部、アンコール、そして終演後を振り返ります。

第3部 宇宙の音楽

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 ホルンソロ、完璧でしたね。広島から見に来ていた高校の同期も「プロですか?」って言ってました。彼の母国語は日本語と音楽です。それくらい音楽で表現ができる人。今回のあのソロで完璧にそれが証明されたんじゃないでしょうか。

THE BIG BANG


 1週間前の土曜日の鬼練で姿が見え始め、水曜日の合奏でついにその全貌を現した「ビッグバン」。なんとか本番に間に合いましたね。とにかくここは打楽器がよく頑張ってくれました。今回の演奏会、90人という人数で最初に音を出したのがこの楽章。観客にとってもインパクトの強い幕開けとなったことと思います。いやあ、楽しかったな。

THE LONLY PLANET


 「あそこよかったわ」と高校の同期が舌を巻いていた楽章です。ソプラノサックス、テナーサックス、コールアングレ、ファゴット、クラリネット、バスクラリネット、全員ブラボー。そしてなによりも、最後のオーボエソロ。そう、3人目の刺客です。本当に素晴らしい演奏でした。高校で吹奏楽がしたくてもできなかった彼女が、大学の吹奏楽であんなふうに躍動しているのを見ると、この吹奏楽部の存在意義を大いに感じます。これから先、怖い先輩が引退したらもっともっと躍動していくんでしょうね。これからが楽しみです。

ASTEROIDS & SHOOTING STARS


 吹奏楽版ではコスパが悪いことで有名な楽章。でも、結局ここもなんとかなりましたね。その裏には、きっと連符組の血のにじむような努力があったんでしょう…。知らんけど。この楽章を吹きながら、「ああ、宇宙の音楽もこれで終わりか…」とひしひしと感じていました。この楽章はきっと、最後の2つの楽章を引き立たせるためにあるんでしょうね。そうじゃないと説明がつかない。それくらいコスパが悪い楽章です。

MUSIC OF THE SPHERES


 タイトル回収楽章。特に書くことはありません。クライマックスに向けて気持ちと息を整えました。

HARMONIA


 90人で「宇宙の音楽」を演奏したら、きっと今までに見たことがない景色が見えるんだろうな、そんなことをこの曲が候補に上がったときに考えていました。今回、このハルモニアで本当に新たな景色が見えました。もはや上手い、下手だけでは測れない、崇高な音楽をつくりあげることができたと思います。あの瞬間、間違いなくリビエールホールは地球上のどこよりも"宇宙"でした。

 「宇宙の音楽」を候補に上げてくれてありがとう。メイン曲に決めてくれたありがとう。最後まで諦めず練習してくれてありがとう。部員全員に感謝の思いが溢れた「ハルモニア」でした。

THE UNKNOWN


 4ヶ月間、長い間練習してきたこの曲もいよいよ最後。アンコールのことなんて考えず、力の限り、そしていい音で演奏しました。ものすごいパワーが渦巻く舞台上、それはきっと客席にも伝わったと思います。

 個人的MVPはティンパニ。管楽器が全力で吹いている中、最後のソロを観客の耳に届けることができるのはおそらく彼女しかいませんでした。思い返せば、合奏中、何回も何回もわしが細かい注文を出して、それに毎回ちゃんと応えようとしてくれる姿が嬉しかった。だから、最後の最後、全てを突き破るティンパニの轟音が聞こえてきたとき、思わずニヤついてしまいました。"これが私たち大教吹奏楽部の「宇宙の音楽」だ"、そう彼女が音で主張しているようだったからです。いいぞ、もっとやれ。彼女の本気を感じられて、わしは幸せでした。

 トロンボーンのグリッサンドが鳴り響いて、4ヶ月続いた大教吹奏楽部の戦いが終わろうとするとき、自然と指揮者の顔が目に入りました。あんなに必死で、あんなに力のこもった表情は初めてでした。ああ、終わるんだな。終わってほしくないな。そして、最後のE♭の音を吹いて、大教吹奏楽部の戦いはついに終わりました。勝敗は、どうなんでしょうか。わしは勝ったと思います、結構な大差で。

部長挨拶


 アンコール前に息を整える時間…のはずが、なんかいろいろと楽しませてもらいました。

 まずは部長さん、本当にお疲れさまでした。中高大と3回目の部長だったそうですが、今までと違う大学生という難しい立場で本当に苦労したと思います。どんなにわしや指揮者が暴れても、最後に部員の心に寄り添ってくれる素敵なリーダーでした。その人柄が多くの人を救ったと思うし、多くの人に安心をもたらしたと思います。わしらの代にあなたがいてくれて良かった。心からそう思います。

 …にしても挨拶長いわ!!!!!!!!!!

 長すぎて途中で指揮者がアンコール曲始めちゃったでしょうが。感謝の気持ちを伝えてくれるのは嬉しかったけど、その詳細はミーティングでもよろしかったんじゃないでしょうか…? 高校の同期も「やってんなあ」と思ったそうです。まあ、そうよね。

 でもあの挨拶を聞いて、「ああ、わしとあの人は部に対する考えが合うことは一生ないんだな」と確信することができて、なぜかとても嬉しかったです。「大学の吹奏楽」を目指して、少し大人な雰囲気を演出するためにわしがコツコツ頑張ってきたものを、あの挨拶で一瞬で元の色に戻しちゃうんですから。でも、これでいいんです。これが大教吹奏楽部なんです。どこかにあの青春の甘酸っぱい感じを残してるからできることもある。それは、他の大学生にはできないことかもしれない。そう思うと、心の中のモヤモヤはスッキリと晴れました。異端だったのは間違いなくわしの方でした。最後の最後、あの挨拶でバランスを取ってくれて、わしは(良い意味で)完全に諦めがつきました。きっと、これでいいんだって。

 そして、挨拶の長さに耐えきれなくなった(?)指揮者の一振りによって、最後の曲が始まりました。

アンコール サンバ・デ・ラヴズ・ユー


 楽しい楽しいアンコール。もう泣いても笑っても最後です。
 まずは部長と金管セクリーによるソロ、完璧とは言えませんでしたが気持ちのこもった演奏だったと思います。金管8重奏でずっと一緒にやってきた2人が、最後にスポットライトを浴びて輝きました。

 そして、わしのソロ。吹奏楽人生で初めてのマイクソロでした。演奏会の最後の最後、Tubaソロで終わるのはなんかおかしい気もしましたが、まあここまで頑張ってきたんだからこれぐらいしても許されるでしょう。そんな気持ちで、本番タイムテーブルに「Tuba マイクソロ」の文字を自分で入力したことを覚えています。

 ソロフレーズの2コーラス目、指揮者と低音の皆さんの方を吹きながらチラッと見ました。みんな良い笑顔でした。あのとき、会場が一体となって音楽の楽しさを共有しているのを、舞台の一番前で感じることができて幸せでした。ソロが終わって礼をしたあと、バックから力強い演奏が聴こえてきて、思わず右手を上げました。あとは任せた、ということです。

 そして、サンバ・デ・ラヴズ・ユーも無事終了。これにて、「大阪教育大学吹奏楽部 第54回定期演奏会」は終了しました。サマーコンサートのときよりも遥かに多いお客さんを迎えての2時間半、本当にあっという間でした。

終演後


 終演後の片づけの早さ(速さ)に定評のあるss、あっという間に楽器を片づけて、打楽器運搬に向かいました。「誰よりも早く演奏会の余韻から抜け出す」、これは高校のときから決めていることです。そういう人が1人はいないと、終演後の片づけが上手く回らないからね。

 トラックに全部積み込んだあと、客席で始まった最後のミーティング。諸連絡終了後、三役が一人ずつお気持ち表明をする番に。ぶっちゃけみんなが何を喋っていたのか覚えていません。なんせ疲労のピークが来ていたもので…。ただ、部長がまた泣いていたのは覚えてます。水分枯渇するぞ。

 そして最後の最後、ミーティングを終わろうとしたとき…、今思い出しても面白いんですが、なんかわちゃわちゃしましたね。いや、クラリネット唯一の3回生、本当にありがとう。ただ、間が悪かった。ホールのスタッフの方への挨拶を済ませて、TAKE2。後輩が花束を渡してくれました。おそらくあのときTAKE1で上手くいってたら、わしは泣いていたと思います。惜しかったねえ。来年の回生代表さんは上手くいくように頑張ってみてください。

 ホールから出たあと、みんな全然帰らなかった。もうBloomで会う予定が決まっている同期のユーフォさんと「早く帰らないのかな〜」「お腹すいた〜」ってずっと言ってました。こういうドライなところが良いよね、お互い。

 というわけで、定期演奏会の日の長い1日が終わりました。

最後に


 演奏会をすることは、とてもエネルギーのいることです。実は、コンクールに出ることよりも大変なことがたくさんあります。それでも、お客さんの笑顔、拍手、ブラボーの声を聞くと、「やってよかった」って必ず思えます。そして、奏者の皆さんの笑顔を見ても「やってよかった」って思います。今回はこっちのほうが大きかったかもしれません。

 この数ヶ月、皆さんと一緒に演奏会をつくることができて、本当に楽しかったです。ありがとうございました。また来年、必ず奏者として定期演奏会に参加します。そのときまで、皆さんの活躍を祈っています。

 というわけで、以上、定期演奏会の振り返りでした。今日はここまで。お疲れさまでした。

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