《カイコとカイゴと私》はじめに おとう(父)、時々オカン(母) 登場!
30数年ぶりの実家暮らしのはじまり
「ただいまー」
私は玄関の戸をあけて、大きな声で言ってみた。
奥の居間のテレビの前には、おとうがいた。
「おう、おかえり!」
「おとう、私が分かる?」
「お前、いきなり、なんを言いよるそか?
お前は、久美子やろ? オレは娘の顔は忘れん」
とっさ、私はそこにいるオカンと顔を見合わせた。
さっき、オカンは、何年かぶりに会う私を軽トラで駅まで迎えに来てくれて、その時に言ったのだ。
「お父さんは家におるよ。
でも、認知症だから、アンタの顔を見