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ケリー基準と競馬

ケリー基準という、投資で用いることができるさまざまな公式があります。ケリー基準とは、ジョン・ケリーの論文をもとに作られた公式とイメージすればよいです。
パンクをある程度ケアしつつ資金を最大化するために、資金の何%を投資すればよいかの計算式です。

今回は、ケリー基準を競馬で活かせるかという話をします。
 


ケリー基準

ケリー基準にはいくつかの式があります。
まずは最初に作られた公式を、競馬用に少々カスタマイズして紹介します。それは、

掛け金(%)=(馬券的中率×オッズ-1)÷(オッズ-1)

という公式です。

例えば、勝率20%でオッズが6倍の馬がいたら、
(0.2×6-1)/(6-1)= 0.2/5 =0.04
より、資金の4%を賭けるのが最も望ましいということになります。
本当に望ましいのか疑わしい場合は、公式の成り立ちを調べればよいですが、理解するには高校程度の数学力は必要です。

ケリー基準のポピュラーなもの

ケリー基準の中で有名な公式は以下のものです。

掛け金(%)=期待値÷(期待できる最高配当-1)

こちらは、結果によって得られる利益が変動する場合に使う公式になります。競馬で言えば、複勝やワイドなど配当に幅がある馬券の1点買いや、多点買いの時に使うことになります。「期待できる最高配当」は、その名の通り、買い目の中で最もよい配当のことです。
ただし、期待値が1(100%)を超えない勝負では使えません。

 

だから、例えばワイドを3点買い、どの買い目も馬券的中率10%で、オッズがそれぞれ15倍、8倍、2倍だった場合を考えると、
期待値は(15×0.1 + 8×0.1 + 2×0.1 )÷3 = 0.833・・・
となるので、そもそもこの公式は使えません。

例えばワイドを3点買い、どの買い目も馬券的中率10%で、オッズがそれぞれ19倍、11倍、9倍だったとすると、期待値は
(19×0.1 + 11×0.1 + 9×0.1 )÷3= 1.3
となるので、この場合は公式が使えます。掛け金は
1.3÷(19-1)≒0.072
より、資金の7.2%を賭けるのが適切ということになります。
※最初に上げた記事はおもっくそ計算ミスしてました、すみません。

ケリー基準を競馬に応用できるか

それでは、このケリー基準は競馬に応用できるのでしょうか?
私は、「できるけどクソムズい」と思います。ムズい理由は、
・期待値100%を超える勝負でしか使えない
・正しい的中率が必要になる
という2点による問題点が生じるからです。

問題点1.期待値100%超えの場面

まず、この公式は
「期待値が100%を超える勝負を何度もする場合に、短時間(少ない試行)で最も利益を上げる資金配分」
を計算する式です。しかし競馬ではその「期待値が100%を超える場面」を認識するのが激ムズです。なので、この問題点1だけで90%の人間が使用を断念せざるをえません。

90%の根拠は、競馬で損をしていない人間が7%という数字です。プラスで「儲けていないけど能力はある」人間が5%と見積もり、それらの人間の一部と残り88%の凡夫には、高い期待値の場面を認識できないと踏みました。

ただ、パチンコやスロットで期待値100%を超える場面があるように、競馬でも高い期待値の場面自体は存在します。簡単に言えば、危ない人気馬が圧倒的人気になっているような場面です。
よって、競馬を見る目に自信がある人なら問題点1をクリアできます。自信のある人間のうち、過半数はただの錯覚だと思われますが。

問題点2.馬券的中率

「期待値100%を超える場面の認識」をクリアできる人間がいたとしても、馬券の的中率を正しく判断するのがまた激ムズです。

馬券を買う人間は、普段は意識していないかもしれませんが、
「この馬券は何%で当たりそう?」
と聞かれれば、答えることはできるでしょう。これを「主観的中率」と呼ぶことにします。

経験則を一般化して論じますが、大多数の人間はおそらく、実際の的中率よりも主観的中率の方が大きくなります。なぜなら、実際の的中率がわかったとして、その的中率をイメージしたら(あまりの確率の低さに)馬券を買うのを躊躇してしまうのが通常の感覚だからです。
 

例えば三連単。16頭立てでフォーメーションを84点買ったとします。この時、競馬が同様に確からしい事象だと(馬の強い弱いがないと)仮定すると、的中率は2.5%です。
競馬では馬の強さがあるため、実際の的中率は10%くらいには引き上げられると思われますが、20%に引き上げられるのはよほどの予想上手です。

それでは、84点買う人は、確からしい事象の場合の確率の2.5%、あるいは引き上げられた実際の的中率(今回は10%)に則して「40回に1回は来るだろう」「10回に1回は来るだろう」と考えているかというと、おそらく違うでしょう。もっと的中率を高く見積もっているのではないでしょうか?

少なくとも、私が三連単を84点買う場合は
「5回に1回くらいは当たるだろう」
と思って買います。つまり、主観的中率は20%です。私が予想上手で、実際の的中率が20%になっている可能性も0ではないですが、たぶんそれは自惚れすぎです。
 

つまり、主観的中率と実際の的中率を近づけられている人間は、ほとんどいないと思われます。よって、期待値100%の見極めができる上級者のうち、75%以上がここで脱落するでしょう。
 

激ムズだが、やる意味はある

ということで、「ケリー基準を競馬に応用することは、普通の人間には無理」という結論になりました。
しかし、無理だからチャレンジする意味がないわけではありません。

もし、ケリー基準を利用しようと頑張る人がいたとしたら、おそらくその人はCLUB JRA-PATなどで自分の馬券的中率を確認しながら、利用を試みることでしょう。そのチャレンジによって、自分の主観的中率と実際の的中率との乖離がなくなったりするメリットが得られる可能性は十分あります。

「遠回りこそが近道(イチロー)」
という金言を胸に、様々なチャレンジをした方が人生は豊かになります。

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