禍話リライト「誰が」
廃墟が好きな奴っているじゃないですか。
俺は大嫌いなんですけど。
廃墟って法律上問題あるし、前の人の生活痕が残りすぎているっていうか、これが病院とか公共の施設とかならいいんですけど、人の家の廃墟とか普通に嫌なんですよ。
これはできる限り場所は伏せますが、とある女性から聞いた話です。
この女性の前の前の彼氏っていうのがすごい馬鹿なやつで、自分ほど怖さに強い奴は居ないみたいな武勇伝を聞かせてくるやつで、夜車で走っているのに街灯のない場所ライトを消して辺りが真っ暗でやだー怖いってなるじゃないですか、一瞬ならいいんだけどそういう時間がながくて、うへへへっみたいな俺は全然怖くないぜみたいなね、鬱陶しい奴みたいで、この女性はこの人のこういうところ嫌だなって思っていたんですけどね。
夏に廃墟行こうぜって、かつて新興住宅だったような今ではすっかり廃れたところみたいな団地に連れて行かれたそうなんです。「ここすげぇんだぜ、かつて一家心中があったんだぜ」とか言って、二階建てのその家に上がっていくんですって。
それは犯罪じゃないですか。
ヤダなって思ってたんですって。
その時一緒に彼の後輩も来ていて、その後輩って廃墟マニアらしくて写真とか手慣れた感じでパシャパシャ撮ってるんですって。
その家っていうのがね、家具はそのままで玄関には絨毯とか敷いたまま、靴もあるんですって。
でも埃もかぶっているしボロボロなんですよ。
彼女はヤダな絶対にやな所じゃんって思ってるのに、その2人は土足のままずかずか上がり込んじゃう。
「すげーすげー」とか言いながら。
何がすげーなんだって思うんですけど、食器とかカレンダーとか見て何年のだろとか言ってる。
彼女はもう嫌なんで玄関で立って
「もう帰ろうよ〜」とか言ってたんだけど2人は全然帰るどころかどんどん奥に進んで、2階に上がって行ってしまった。
彼女のことは無視して2人で盛り上がってる。
「その時にね、私に何が聞こえたと思います❔信じてもらわなくで結構なんですけど、最大音量のテレビを想像してもらえればいい、もしくは古いテープを最大音量でもいいんですが、音が割れまくっている感じで中年女性と子供の金切声で、あ、彼の名前仮に佐藤としますけど、2人の声で同時に「誰の責任だと言われて佐藤くんはなんと答えるでしょう」と言ったんです。うわってなって、そんな大きな声なんで上の2人も聞いてるはずじゃないですか。でも、全然ふたりには聞こえてないみたいで…。えっ、えっ❔って思っていると、玄関入って右に回ると居間みたいなのがあってそこにあるテレビから聞こえた気がする。怖い…しかも言った言葉も怖い。責任って…これから何かありそうじゃないですか。なので悪いけどそのまま2人をそこに置いて私は家を出たんです。」
と、そこで話が終わってしまった。
俺はで、その続きはどうなったんですかって。
そうしたら彼女はすごい暗い顔で
「彼とは別れました。」
ああ、そりゃそうでしょうよ。そんなやつなら別れますよね。
って言ったんです。
そうしたら彼女は
「言った通りになりました。その声が言った通りに。」
と言ったんです。
そっからはちょっと怖すぎて何も聞けませんでした。多分後輩になにかあったんじゃないかと思うけど…。
じつはこの話、結婚式の二次会できいたんですよ。だからその先まで突っ込んで聞けなかったんです。二次会で怪談っていうのもどうかってはなしなんですけどね。
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