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七不思議の素(禍話リライト)

七不思議ってあるじゃないですか。
小学校とか中学校とかって。
でもさすがに大学になるとなかなかないじゃないですか。
ないのならば作ったらいいんじゃないかって話なんですけどね。

大学で人数の多い大きなサークルでの話なんですけど、どのぐらい大きなサークルかっていうと、サークルの飲み会なのにこいつ誰だっけと思うぐらいのを思い浮かべてくださいね。

で、そのサークルでの飲み会中。
怪談話で盛り上がっていたんですね。

皆で話をしているうちに、この大学には七不思議はないのかという話になったんですけど、この大学は新しいし学内で死んだ人もいない…私の出身大学とは違ってね、ま、まぁそれはいいんですけど。

七不思議はないということでね、じゃあ、作るかってことになり、作るにあたって縛りを作ろうということになった。

自分が体験したことってのにしよう。

例えば掲示板とかで見つけた話だったとしても、自分の体験した話っていうのをつければOKみたいな感じでってなったんですよ。
でも、なかなか出なくってその場がちょっと白けて変な空気になった。

そんな時頭の回る奴…まぁ仮にAくんとしておきますけど彼は困ったなぁと考えて、ないのならば作っちまうかということで

「あ、そうだ。俺1つ知ってますよ❕多分俺以外は知らないだろうけど」
先輩たちはその話に食いついてきました。

その大学には以前は使用していたが今は使用しない棟があって7か8棟目にもう使用されず物置になっていたんですって。
その棟のトイレは清掃もされず野晒しのような状態で、トイレ内には石鹸もなければ鏡すら撤去されてないんですって。それを利用してAくんは話を作りました。

「この棟のトイレって鏡ないでしょ。」
先輩たちは
「ああ、そうだな❕前はあったけど今はないよな。」
「鏡ないの変だよなー」
とか言ってる。
Aくんは続けて
「実は昔あのトイレって、夜中の12時過ぎてトイレを使用し手を洗っているときに鏡を見ると自分の後ろに誰かがいるのが映るって騒ぎになって鏡が撤去されたんですよ」

そうしたらその棟のトイレを使用した人が結構多く居て
「うわー怖い」
「そういえば鏡ない」
「鏡ないところヤバい」
なんかAくんを応援するかのように声があがり盛り上がったんですね。

Aくん、よかったよかったと思っていたら

先輩の1人が急に
「そこ行ってみたいな」
って言い出した。

その先輩っていうのは結構な武闘派で有名。もし行くことを誘われたら誰も断れない。

ここで嘘とは言えないし、皆怖いから行きたくないとかマジな感じでAくんは気まずくなってきたので
「先輩、もう行っても意味ないですよ、鏡は撤去されてそこにはないんですから」
と言うと、女子の1人が気を使ったのか
「わたし、手鏡もってるよ」
と言ったんですよ。そうしたら先輩は
「よし、これでいい」
時刻はちょうど夜中の12時。
「ちょっと俺行ってくるわ。誰か一緒にいくか❔」
って言うけれど誰も皆怖くて行きたくなくて誰も、10人ぐらいで飲んでいたのに返事をしない。
「しょーがない奴らだなぁ。じゃオレちょっと行ってくるからさ」
と出て行ってしまった。
皆A君の話を信じてるから怖い事ないといいねーとか話していて、A君はすごい気まずい。
作った話なんだから何も出るわけないし、気まずいなーでもまぁしょうがないしな、よし飲むかってお酒を飲んでたんですが…

先輩が帰ってこない。

5分経っても10分経っても帰ってこない。

大学の場所は往復しても5分ぐらいの近場なんですよ。
でも15分経っても帰ってこない。で、同期の先輩が
「あいつ酒も入ってたし、途中でぶっ倒れてるかもしれないから様子を見に行こうか」って言っていたら先輩の足音がして、なんだよおまえ遅かったななんて言いながら先輩の方を見たら、

先輩の顔面血だらけなんですよ。

ええって。

よく見たらガラスの破片なんかがいっぱい刺さってて、うわちょっと先輩大丈夫っすかって。まぁ顔って出血量が多い箇所なんですけどね。

「ごめんちょっと手鏡割れちゃった」
「いや、それよりも先輩顔が血だけっすよ」
「うん…」
先輩、めちゃくちゃへこんでるんですよ。
そのかおの破片とか抜いて部屋にあった消毒液で拭いて大丈夫ですかって言いながら、ひどい傷にはバンソーコーをはってどうしたんですかって聞いたら

「いや、行ってみたら明かりがつかなかったから携帯の明かりだけでやってみようって。手鏡を
ひらいてパッとみたら…おれの後ろに誰かが立っててうわっと思った瞬間にそいつがおれに向かっててを振り上げた。その瞬間に鏡がバーンと割れて血だらけになったんだよ。」

「ええっマジかー」
先輩がそんなね体まで張って冗談するわけないし。

先輩の怪我はそれほどでもなく、1時間ぐらいで血もとまったんだけどさっさと帰っていってしまった。
皆怖いねなんて言ってる。

A君だけ
一から十まで作った話なんですよ、いわれなんて一切無いトイレ。おかしいなーって思っていたんです。

それからあの顔面血だらけになった先輩はサークルに顔を全然出さなくなったんですよ。
卒業式になって渡すものがあるって言ったらそれを取りにはきたけれどぱっととって出て行ってしまった。
全然素っ気ないもんだねーって皆で話してて、顔面血だけになったからかなーなんて冗談ぽく言ったんですけど、A君としてはうわーって思っていたんです。

で、A君も大学を卒業しましてね、大学近くに就職したんですけどある日の社会人2年目ぐらいの時に商店街を歩いていたら例の血だらけ先輩とばったりあったんです。

「せんぱーい」

声をかけたんです。

先輩はA君の事をいまだに嫌な顔で見るんですって。

もう流石にいいじゃないかと

「先輩あんな怖いことになったらそんな顔をするのはわかりますけど、もう何年も経っているんだからいい加減いいじゃないですか」
って言ったら

先輩が凄い嫌そうな顔をしたまま

「まぁお前しかいないから言うけどあの時おれの後ろに立っていた奴って…お前そっくりの顔だった」
っていわれたんですよ。

そのまま先輩は無言で去ってしまってそれから連絡はとってないんですけどね。

皆さんもね勝手に七不思議なんて作らない方がいいですよ。

朗読致しました
禍話リライト/七不思議の素
https://youtu.be/wKAPpcY0f80

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