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2023年間ベストアルバム50選

2023年も争いは絶えず、生活はパッとせず、クソみたいな年だった。でも音楽は最高だった。そうだろう?というわけで、性懲りもなく今年もあちこちをディグした中で、自分が特に素晴らしいと感じたアルバム作品50枚を以下に選出し、あまつさえ順位をつけた。それぞれの視聴リンクも添えてある。この年末恒例の個人的なリストが皆さんの音楽ライフの手助けになれたなら幸い。また、それに準じたプレイリストも Spotify と Apple Music で作成してあるので、時間のある方はこちらもぜひチェックを。




50. a.s.o. "a.s.o."

Jun 2, 2023 / Low Lying

ドイツ・ベルリン出身のポップデュオ。ポップパンク、ハウス、ドラムンベース…2020年代に入ってからというもの、主に90年代に隆盛を迎えていたジャンルのリバイバルブームがあちこちで見受けられるが、それらの次に来るのはおそらく、トリップホップ。Massive Attack や Portishead 、あるいはその影響下にある "OK Computer" の改めての再評価が近いうちにきっと来る。その予兆に先鞭をつけているのがこのユニットのデビュー作。しかも彼女らは意識してかせずにか、端正なエレクトロニクスと透明感あるボーカルのポップさゆえに、ここ日本で実験的に試みられていたトリップホップの歌謡領域への導入、すなわち中谷美紀や坂本美雨など坂本龍一ワークスの歌モノ期とも共振しており、同時に攻殻、lain 、ブギーポップなどのシリアスな SF アニメの世界観にも相通じるものがある。特定の層にとっては劇物扱い。

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49. Nondi_ "Flood City Trax"

Apr 23, 2023 / Planet Mu

アメリカ・ペンシルベニア出身のプロデューサー。アルバム表題にある「洪水の街」とは彼女が生まれ育ったペンシルベニアの街、ジョンズタウンを指す。過去に2度大きな洪水の被害を受け、年々縮小化が進む貧困下の故郷を思いながら、クラブではなくネット上でフットワークという音楽ジャンルを知った彼女は、独自の感性を醸成して新たなスタイルのフットワークを作り上げた。目まぐるしく加速するビートはアドレナリンを放出させるのに十分な機能性だが、それ以上に奇妙な浮遊感と内にくぐもった音像の上モノシンセ類が存在感を放ち、ノスタルジックで柔らかな包容力、なおかつその裏側に畏怖の念を抱かせるようなダークさを孕んだ、異形のダンストラックがずらりと並ぶ。その感触はちょうど、時にはこの世の一切を受け入れる癒しとなり、時にはこの世の一切を洗い流す災厄と化す不定形物質、「水」のそれと綺麗に合致する。

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48. Ruth Garbus "Alive People"

Aug 25, 2023 / Orindal

アメリカ・バーモント出身のシンガーソングライター。100人の聴衆を前にしてライブレコーディングにより制作したという今作は、フロアの歓声はごくわずかしか残されていないため、爪弾くギターの細かなタッチひとつひとつに至るまでのステージ上の臨場感がくっきり真空パックされており、思わず背筋の伸びるような静けさが全体に通底している。曲展開は最小限に抑えられ、シンプルなフレーズが淡々と繰り返される中で、Ruth の歌声は聴き手にゆっくりと諭すように、そしてそこから大きく翼をはためかせるように、力の抜けた自由さでもってメロディラインを描いていく。ちょうど2曲目のタイトルでもある「もののあはれ」の理念に貫かれた、簡素ゆえの奥深さを秘めたフォークソング集。今作を聴いて Joni Mitchell を思い出す人はきっと多いのではないか。ちなみに Merrill Garbus (tUnE-yArDs) の妹でもある。

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47. Sanguisugabogg "Homicidal Ecstasy"

Feb 3, 2023 / Century Media

アメリカ・オハイオ出身のメタルバンド。今年のデスメタルの新譜を色々聴いた中でも、このバンドの出す音は瘴気・腐臭・悪意の点で他よりも頭ひとつふたつ抜けていた。ハイゲインの重低音、カンカンと抜けの良いスネアに細やかでキレのある金物類、それら全ての要素がスポーティな肉体性ではなく、鼓膜にネットリまとわりつく粘着質のおぞましさで迫り来る。ロウ/ミドルテンポのグルーヴで深くうねる場面のみならず、高速ブラストビートで爆走する場面においても、とにかく陰湿で悪辣な印象ばかりが残るのだ。そして歌詞はB級スプラッタホラーのど真ん中を突き抜けるバッドテイストで統一。それはもちろん残虐非道の内容ではあるが、とことんまでやり切ったが故のある種の清々しさ、ファニーさすらも内包している。デスメタル愛好家によるデスメタル愛好家のための、清く正しいデスメタル。

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46. African Head Charge "A Trip to Bolgatanga"

Jul 3, 2023 / On-U Sound

イギリス・ロンドン出身のパーカッション奏者 Bonjo Iyabinghi Noah を中心とするレゲエプロジェクト。初っ端のヤーマン!の雄叫び、そして「悪い態度はパンクしたタイヤだ、改めないとどこにも行けないぞ」と喝破する御大の熱いメッセージ。オリジナルフルレンスとしては実に12年ぶりとなる今作だが、この道40年の御大は今なお陽性のバイブスがビンビンである。アルバム表題のボルガタンガとは Bonjo の現在の生活拠点であるガーナ北部の都市名。ガーナ現地のミュージシャンと交流して種々のアフリカ音楽のビートを取り入れ、元来のレゲエ/ダブ要素をさらに発展。ズブズブのダブ音響からバウンシーな4分打ちダンストラックまでを包括し、エレクトロニックに洗練された感がありつつもエネルギッシュな野性味は決して損なわない、さながら人力/電力ダンスビート世界紀行の様相を呈した意欲作となった。もちろん On-U Sound 総裁 Adrian Sherwood 全面参加。爆音で聴こう。

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45. Fatboi Sharif "Decay"

Jul 21, 2023 / Backwoodz Studioz

アメリカ・ニュージャージー出身のラッパー。歌詞が公開されていないため詳細は掴めないが、冒頭 "Phantasm" の歌詞中に Screamin' Jay Hawkins の名前がドロップされているのは辛うじて聴き取れた。ブルース畑出身でありながら、シングル曲 "I Put a Spell on You" が最古のゴスソングとしてクラシック認定されている、あのカルト歌手の名前が。実際、この作品もそういう類のものだ。鉛を引きずっているかのように鈍重なビート、湿度の高い不穏な空気ばかりを醸し出すトラック、そこに乗る Fatboi Sharif のラップも鼓膜にねっとりまとわりつく独特のフロウで、総じて極めてフリーキーで実験的な代物。だがゴシックホラー感をいささか誇張しすぎなためか、どこか筆圧の高い劇画風の、突き抜けすぎたが故のコミカルさも感じられ、アングラな実験性が転じてエンターテインメント性へと昇華されている。きっとこの作品も Jay 同様、数十年後に掘り返されて再評価を受けることだろう。

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44. Lillies and Remains "SUPERIOR"

Jul 12, 2023 / Fifty One

京都出身のロックバンド。冒頭を飾るアルバム表題曲 "Superior" からして、前作からの長いインターバルを感じさせない、それどころか今までのキャリアの中で最もフレッシュな躍動に満ち満ちている。ヘヴィメタリックですらあるギターサウンドの鋭さと、ポストパンク/ニューウェーブ者ならではのしなやかで美しいポップメロディ。たくましく鍛え上がったアンサンブルはもはや小さなライブハウスには収まりきらない重厚なスケール感を備えている。近年は何故か日本よりも中国で人気が高まっている感のある彼らが、全くもって似つかわしくないと思われた野外フェスへの出演を経て、ついに大ブレイクへのきっかけを掴んだ…かどうかはまだ分からないが、少なくとも音楽面のみを考慮すれば、大舞台を引き受けられるだけの器が、今の彼らには十分にある。Brian Eno & John Cale のシブいカバーもあり。

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43. Mette Henriette "Drifting"

Jan 20, 2023 / ECM

ノルウェー出身のサックス奏者。この作品がリリースされた1月、キリッと冷えた冬の朝に郊外の何もない道を歩きながら今作を聴いていて、その時の鈍い日差しが照らし出す風景と相まってやけに体に染み入ったのをよく覚えている。ピアノ、チェロ、サックスのトリオ編成による室内楽アレンジで、奥行きの深い残響音やサックスに息を吹き込む際の微細な擦れ音までもを捉えた、現代音楽やアンビエントにも通じる音楽性。氷の表面を打つように慎重に音を響かせるアンサンブルの中、時にはメロディがドラマチックな感傷を押し広げるが、一方では明確なフレーズをすっかり排除したアブストラクトな音像となって、静寂の緊張感が聴き手の意識を強く引き付ける。極めて親密な、それでいて決して手の届かない神秘的な美しさを持ったエクスペリメンタルジャズ。この冬からもまた聴こう。

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42. Mong Tong "Tao Fire 道火"

Jun 30, 2023 / Guruguru Brain

台湾・台北出身のエレクトロユニット。本人たち自身は台湾の伝統音楽の要素はない、pseudo-Taiwanese music(ニセ台湾音楽)を作っているとインタビューで答えているが、この「ニセ」の感覚こそがキモなのだと思う。ファンク、アフロビートから祭囃子までを横断する土着的なビートを軸に、丸みを帯びた70~80年代風のシンセサウンドをあえて多用することでユーモラスな印象を強め、エキゾチックなアジアンテイストに満ちたメロディも盛り沢山。実験的なテクスチャーの重ね方でありながら人懐っこいポップ感も見せる今作のスタイルは、ちょうど日本で「東洋魔術」を標榜し、真っ赤な人民服風の衣装に身を包んでアジア文化に対する先入観を逆手に取り、ワールドワイドな成功を収めるに至った往年の某オーケストラとも相通じる。鋭く批判的な姿勢を取りつつ、グルーヴの熱に慎重に薪をくべるユニーク作。

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41. Genevieve Artadi "Forever Forever"

Mar 17, 2023 / Brainfeeder

アメリカ・ロサンゼルス出身のシンガーソングライター。今年のフジロックにてホワイトステージのトリを飾った Louis Cole 率いるビッグバンド、そのコーラス隊の一員としてステージに大きな華を添えていた彼女。今作においても Louis Cole が全面的にバックアップしているのだが、ここではどちらかと言うと派手なグルーヴよりもジャズやボサノバ由来の洒脱なメロディ、そこから醸し出される陶酔感や蠱惑的なムードの方に重きが置かれている。サイケデリックでいて官能的、愛らしくもどこか毒っぽさを孕んだ楽曲群は、異才だらけの現代ジャズの最前線においても決して代替の効かないユーモラスな個性を放っている。当然のことではあるが、辣腕プレイヤーを多数引き連れていても彼女自身のキャラクター、志向があくまでも最優先されているのだ。それこそが Louis Cole が大きな信頼を寄せている所以だろう。

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40. Blue Lake "Sun Arcs"

Jun 23, 2023 / Tonal Union

デンマーク・コペンハーゲン出身のマルチ奏者。ギター、チェロ、クラリネット、ドラムマシーン、さらには自作の48弦ツィターまでを駆使し、フォーク/カントリーの牧歌的で和やかな音色と、アンビエント/ドローンの幽玄たる浮遊感を掛け合わせた、今までありそうでなかった独特のアコースティック音響空間を展開している。Pat Metheny のメロウな感触や Steve Reich のミニマルの探求心にも通じる音像だが、特に48弦ツィターの雅やかな音色がアクセントで、その複雑かつ繊細な響きが聴き手の意識を自然と心地良い微睡みへ誘う。愛犬のみを引き連れ、人里離れた山小屋に隠遁してアルバム制作に没頭したというだけあって、静かで雄大な大自然の持つ包容力であったり、昼から夜に移り変わる際に情景が色彩を変えていく、その豊かさを見事に楽曲に映し切っている。全体に起承転結のある歌心を絶妙に感じさせるのもポイント。

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39. Kate NV "WOW"

Mar 3, 2023 / RVNG

ロシア・モスクワ出身のシンガーソングライター。バイオリンやクラリネット、フルートなどの多種多様な音色とシンセサウンドを組み合わせた我流のポップアート音楽は、プログレ派チップチューンの最新型か、ミニマルな反復を主とするフォークトロニカの突然変異種か、それとも Cornelius が "デザインあ" で提案した幼児向け知育音楽の発展系か。ともかく、何気ない日常とシュールな夢の世界が何かの拍子で直結してしまったかのような、この愛らしさ爆発のへんてこエレクトロワールドに身を寄せていると、自分が何の変哲もないと感じる風景でも子供の目から見れば刺激だらけの非日常であるように、捉え方ひとつで物事はいくらでも違って見えてくるという真理を思い出させてくれる、そんな気がする。実際、自分は息子とふれあう中で、自分にはない発想や視点に驚かされることが毎日ザラにある。そんな時は一緒に WOW と叫ぶのだ。

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38. Altın Gün "Aşk"

Mar 31, 2023 / Glitterbeat

オランダ・アムステルダム出身のロックバンド。このバンドを知るまで、自分はアナトリアンロックという音楽ジャンルがあることを知らなかった。要するにトルコ発の60年代風サイケデリックロックなのだが、中近東エキゾチシズムを香らせる牧歌的なメロディ、蕩けるような心地良さの中にどこか毒気を感じさせるバンドサウンドで、古き良き味わいと新鮮味が同時に迫り来る、非常に刺激的な音楽だと自分は感じた。このバンドはフロントを務めるボーカル2人がトルコ出身。2021年発表の "Yol" と "Âlem" はコロナ禍のため宅録によるシンセ主体の作品だったが、今作ではビンテージ機材を用いてバンド本来のライブ感が漲る肉体的な仕上がりになっており、快活な縦ノリからファンクやレゲエにも通じるグルーヴィな横ノリまで、良い意味でクセの強く即効性の高い楽曲がズラリ。ドライブ感満点のベースラインがキモか。

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37. Sunny War "Anarchist Gospel"

Feb 3, 2023 / New West

アメリカ・ナッシュビル出身のシンガーソングライター。ブルース歌うなら血ヘド吐いてなんぼ…などという価値観は歌い手に無責任に不幸や試練を強いているようで言いたくないが、この Sunny War は若くしてアルコール/ドラッグ禍に苛まれ、愛する人を次々に亡くし、退廃的な生活でリアルに血ヘドを吐き続けてきた。十代の頃からパンクロックに傾倒してきた彼女は自身の音楽をフォークパンクと定義する。実際にはパンク要素はなく、ブルースやフォーク、カントリー、ゴスペルといったアーシーで滋味深い音楽性を混淆した内容なのだが、その歌声に刻まれた憂いや苦悩、そしてどん底から希望に手を伸ばす際の切実さは、やはり彼女のこれまでの紆余曲折があってこそなのだろうと思わざるを得ない。ここにあるのは人生の苦難に対する抵抗の歌。彼女にとってのパンクとは音楽のフォーマットではなく、根底にあるレベルの姿勢こそを指すのだと思う。

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36. 陰陽座 "龍凰童子"

Jan 18, 2023 / King

大阪出身のメタルバンド。陰陽座ほど誠実なバンドを自分は他に知らない。ヘヴィメタルの可能性を信じ、自らが歩んできた道を信じ、突発性難聴を発症して療養していたボーカリスト黒猫を信じて待ち続け、その上で完成した今作はまさしく陰陽座という代替の効かない個性の結晶、結成から20年を越えた末に辿り着いた集大成とも言える。過去最高にモダンに引き締まったプロダクションで NWOBHM ~メロディックデスメタル~アニソンの狭間を優雅に行き来する、つまりは結成当初から全くブレることのない陰陽座流メタルの王道を行く楽曲群。ここに来て "茨木童子" や "両面宿儺" のような美しさと苛烈さが高次元で重なった楽曲、11分超の長尺でドラマチックな一大抒情世界を紡ぐ "白峯" といった楽曲が出てくることに嬉しくなり、聴いていて何度ガッツポーズしたか分からない。今までもこうしてきたから、これからもこうする。そんな風に筋を通しきった彼らに、自分はずっとついていく。

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35. Jeremiah Chiu "In Electric Time"

Sep 29, 2023 / International Anthem

アメリカ・ロサンゼルス出身のシンセサイザー奏者。それは6月のある日のこと。Jeremiah は LA にあるビンテージ・シンセサイザー・ミュージアムに赴き、音出しの際に創設者 Lance Hill の助力を受けながら、おびただしい数のシンセサイザー・コレクションと対峙し、完全ノープラン状態で即興演奏を開始。そうしてレコーディングに2日、編集に2日のトータルわずか4日で完成したのが今作だという。もちろん完全なる電子音楽ではあるのだが、水のようだったり飛礫のようだったりと様々な質感のシンセ音が折り重なり、メロディらしいメロディを結びそうな直前のところで霧消していく、その様子は幻想的でありながらやけに有機的というか、演奏者 Jeremiah の呼吸や脈動がダイレクトに反映されているような印象を受ける。脳細胞を優しく撫でながらチクチク刺激してくる、鳴らされている音の全てが快感なコズミック音響作。

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34. Model/Actriz "Dogsbody"

Feb 24, 2023 / True Panther

アメリカ・ニューヨーク出身のロックバンド。彼ら自身はこの作品を「生きることの爆発的な喜び、つまり太陽を見つめているときの圧倒的な明るさに対する、鋭く、突き刺すような、暴力的な頌歌」だとしている。しかし今作に喜びを発散するような場面は、少なくとも自分には見られない。あるのは人力インダストリアルビートが醸し出す圧迫感、飛び道具的なノイズをパーカッシブに打ち鳴らすことに徹したギターの殺気、常に何かに怯えているかのようなヒステリックなボーカル、そういったダークで殺伐とした音像ばかりだ。しかしそれらがスクエアなダンスグルーヴの錬成に向けて一丸となった時、全ての不安感、恐怖感、嫌悪感は熱を滾らせるガソリンとなる。閾値を超えたダークネスが理性を凌駕し、原始的な快楽を屹立させる。これはつまり、自分がポストパンクというジャンルに求める最たる魅力のひとつなのだった。

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33. Mckinley Dixon "Beloved! Paradise! Jazz!?"

June 2, 2023 / City Slang

アメリカ・バージニア出身のラッパー。2021年発表の前作 "For My Mama And Anyone Who Look Like Her" はアルバム全体で Mckinley 自身の過去~現在~未来を連結してストーリーを紡いだ重厚な印象の強い作品だったが、対する今作は10曲28分とえらく小ぶりで、各楽曲がそれぞれ独立した内容であり、全体を貫くコンセプトというのも設定してないのだという。だが楽曲の出来としては以前とまるで遜色なく、生演奏主体のジャズ/ソウルトラックに乗せて流暢なラップで切り込んでくる秀曲が揃っている。幼少期から現在に至るまでの境遇の変化を描いた "Run, Run, Run" や、今は亡き親友への思いを綴った "Tyler, Forever" など、彼のラップの端々にはいつも悲嘆や哀愁が滲み出ており、遠い目をしたノスタルジアが味わい深く、それでいて軽妙なフロウが今現在鳴らされている音楽の躍動を決して損なわない。やはり一級のストーリーテラーだと思う。

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32. Ana Frango Elétrico "Me Chama de Gato Que Eu Sou Sua"

Oct 20, 2023 / Risco, Mr Bongo, Think!

ブラジル・リオデジャネイロ出身のシンガーソングライター。ブラジル音楽の主流であるボサノバと、ロックやファンクといった他ジャンルとの融合、いわゆるムジカ・ポプラール・ブラジレイラの最新鋭とのことだが、聴いていてとても自由だなという印象を受ける。もちろんロック/ポップスのスタンダードなフォーマットに則した曲作りではあるのだが、多様なパーカッションによる軽快な躍動感、管弦楽器隊の華やかな装飾、そしてシルキーからハスキーまでを巧みに使い分ける Ana のボーカル、それらが織り成すポップソングは伝統的な側面を守りつつ、Stereolab のような無邪気な実験性も兼ね備え、パノラマ的な広がりがあり、インディロックのまとまった上品さも保ち…つまりはどこへでも飛び立てる風通しの良さでアルバム全編が貫かれているのだ。冒頭 "Electric Fish" の一際キャッチーなメロディでグイと手を引かれ、翻弄され魅了されているうちに瞬時に過ぎていく10曲32分。

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31. Marnie Stern "The Comeback Kid"

Nov 3, 2023 / Joyful Noise

アメリカ・ニューヨーク出身のシンガーソングライター。随所でタッピングを駆使する辣腕ギタープレイと、ドタバタせわしなく転げ回るドラム、そしてポップでキュートなボーカルの三位一体がやたらとアグレッシブな勢いで迫り来るインディ・マスロック・ポップ。前作から実に10年という長いインターバルが開いているわけだが、彼女の繰り出すマジカルなロックンロール世界には時間の流れなど意味を成さず、いつの時も等しく新鮮な刺激を持って響いてくる、ある種のエヴァーグリーン性が確実に宿されている。オープナー "Plain Speak" において彼女は性急に繰り返す。「後戻りし続けるなんてできやしない」と。Late Night with Seth Meyers へのレギュラー出演や2児の出産を経て、すっかり生活が安定したかのように見えた彼女は、それでもギタリスト/表現者としての野心を絶やすことはできなかったのだ。

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30. Laura Groves "Radio Red"

Aug 11, 2023 / Bella Union

イギリス・ウェストヨークシャー出身のシンガーソングライター。冒頭に据えられたリードトラック "Sky at Night" は今年最もリピートしたポップソングのひとつ。明瞭に抑揚のついたメロディの親しみやすさ、淡くぼやけたピアノ/シンセサウンドによって構成される未知のノスタルジア。自分はその美しさがあまねく全ての垣根を越えて波及し得る魅力だと確信する。もちろんその他も、アンビエント寄りの80年代風シンセとフォーキーな暖かみのあるメロディで彩られた上質な楽曲ばかり。彼女はスタジオの近くに立っている2つの電波塔を毎日眺めていて、夜になると赤い光を灯すそれらに見守られているような感覚になり、そこからインスピレーションを湧き上がらせて今作を完成させたとのこと。思いを届ける/受け取ることをテーマとした楽曲の数々には、深く埋もれてしまった大切な記憶のどこかを呼び覚ます作用がきっとある。

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29. Iceboy Violet "Not a Dream But a Controlled Explosion"

Aug 3, 2023 / Fixed Abode

イギリス・マンチェスター出身のラッパー。トラップやグライム、ダンスホールレゲエ風のリズム、あるいはリズムレスだったりとトラックのパターンは多岐に渡る。太さと鋭さを兼ね備えたビートの飛礫は的確に体を突き上げてくるが、その一方で体温をまるで感じさせないアンビエント由来の上モノと、常に得体の知れない怪物に追われているかのような悲痛さを帯びたラップが、全ての楽曲のカラーを厳格に統一し、聴き手を単純な高揚へ誘うことはない。"Refracted" でのうめき声にも似たボーカルはむしろ背筋に悪寒を走らせるし、"Pablo's Cathedral" における「私たちはもっと高くまでいけると誓う」「私は私自身の天国を作る」というラインにはポジティブさよりも切迫感の方を強く感じる。どうにか吐き出して形にする以外の選択肢はなかった、そんな言葉で紡がれた詩。ここが2023年の UK の最深部らしい。

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28. Thandi Ntuli with Carlos Niño "Rainbow Revisited"

Nov 17, 2023 / International Anthem

南アフリカ出身のピアニスト/シンガー Thandi Ntuli と、カリフォルニア出身のパーカッション奏者 Carlos Niño によるコラボ作。今作は2019年に行われた二人の即興セッションを基に制作されたとのことだが、他の管弦打楽器とのトラディショナルなアンサンブル形式を主としていた Thandi 、またゲストを多数迎えてのアンビエント/ニューエイジを志向する Carlos の単独作と比べても、今作のシンプルさはかなり異質なものに感じられる。控えめな始まりから徐々に勢いを加速させ、調性を移ろわせながらひとつの歌を紡いでいく Thandi のピアノ弾き語りは、無から有を発生させるときの神々しさにも似た凄みがはっきり表れている。そこに Carlos がシンバルやパーカッションで音響の装飾を加えていき、結果として Thandi の表現に程良い緩急がついて、アルバム作品としての深みが増す結果に。あまりにも生々しい身体性。

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27. Snõõper "Super Snõõper"

Jul 14, 2023 / Third Man

アメリカ・ナッシュビル出身のロックバンド。YouTube で Snõõper の名前を検索してみると、なんか子供や人形とわちゃわちゃしているライブ映像が見つかったりして、こんなにも微笑ましいパンクロックの現場があるのかと衝撃を受けたものだ。早期教育の先生もやっている Blair Tramel をフロントに擁するこのバンドは、パンクの中でも Devo を発端とし、政治性やマッチョ思想から距離を置いたエッグパンクに属するとのことで、とにかく楽しさや愉快さが最優先。バンドサウンドはローファイで厚みはないものの、ショートカットで駆け抜ける切れ味とカラフルなポップさがあり、即効性は申し分なし。それでいて、いわゆる流行りのポップパンクの枠には収まらないインディならではの破天荒さもあり、とにかく愛着が湧いてしまう要素ばかりなのだ。モッシュもダイブもウィンドミルも良いけれど、その前にある楽しさを忘れないでいよう。Henry Rollins のお墨付き

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26. Ethan P. Flynn "Abandon All Hope"

Oct 6, 2023 / Young

イギリス・ロンドン出身のシンガーソングライター。過去に発表した楽曲の歌詞では Beck の代表曲 "Loser" のコーラスの一節を引用したりもしていたので、基本的には皮肉や諧謔が持ち味の人なのだろうとは思う。実際今作においても、牧歌的なフォーク/カントリーと種々の管弦楽器を取り入れたチェンバーポップを組み合わせた楽曲群は、実に軽妙で滋味があり、暖かみと切なさのあるメロディが心地良い。しかしながら、時折それらを突き破るようにして現れるノイズサウンドや、「全ての希望を打ち棄てる」なるアルバム表題に象徴される失望や諦念が、やけに飄々とした歌の端々にどうしようもなくこびりついている。実は奥底にドロドロと流れている激情のマグマが、今にも地表から噴出する寸前のところで踏ん張っている、そんな不穏な緊張感が全体を覆っているのだ。平然としたふりして、実はこの上なく物悲しい音楽。

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25. ML Buch "Suntub"

Oct 27, 2023 / 15 love

デンマーク・コペンハーゲン出身のプロデューサー。新世代の IDM か、もしくはポスト Vaporwave 時代のサイエンティストかというシュールな浮遊感のシンセ音で空間をデザインしたかと思えば、オープンチューニングの7弦ストラトキャスターでフュージョン風の卓越したギタープレイを披露し、さらには伸びやかで清涼感のある歌声が聴き手の警戒心を解いてスルスルと手繰り寄せる。曲によってはリズムレスの不可思議なアンビエントだったり、グランジ/オルタナティブの垢抜けないディストーションを鳴らしたり、または Suzanne Vega のような冷ややかなトーンでフォーキーな側面を打ち出したりもする。スムースなギターの音色を軸に、数多くの音楽ジャンルを同列に連結し、極めてフリーキーで実験的な手法であるにもかかわらず、最終的にはポップソングの地平へと着陸するという…自分はこんな形の歌を今までに聴いたことがなかったかもしれない。

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24. Jorja Smith "falling or flying"

Sep 29, 2023 / FAMM

イギリス・ウェストミッドランズ出身のシンガーソングライター。広く評価された前作 "Lost & Found" には無かった要素として、"Little Things" のスタイリッシュな UK ガラージ、"GO GO GO" のポップパンク、"Feelings" の官能的なダンスホールなんかが挙げられるかと思うが、ほぼ全曲が4分未満の長さに収められ、どっぷり憂いを醸す Jorja の歌唱力で貫かれれば、どれだけ楽曲が音楽ジャンルの百貨店的ショーケースと化していても、総じて彼女のカラーに一様に染まってしまう。決して後ろ向きな内容ばかりではなく、思慮深さや凛々しさを感じる場面も多々あるのだが、それでも彼女の歌はいつの時も寒色の色彩を保ち、確固たる自分の世界というものを離さずに守り続けている。前作から5年のインターバルを挟み、トントン拍子にスターダムを駆け上がることをしなかった彼女は、自分らしい表現とは何であるかを完全に熟知している。それは堂々たる風格だ。

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23. cali≠gari "16"

Jun 21, 2023 / Victor Entertainment

東京出身のロックバンド。聴いていて感慨が込み上げてくる。もちろんバンドが長らく継続していること自体もそうなのだが、あえて劣悪な音質を選択したギターサウンド、普段よりも数割増しのベーススラップ、そして出自のニューウェーブ・シンセポップ要素を発揮しつつ V-ROCK に根差したロックンロールを志向する、つまり結成から現在に至るまで紆余曲折を経てきたカリガリのキャリアが一本に収斂、かつブラッシュアップされた形でここに顕在化しているからだ。コミカルさを含みつつエッジの効いた手付き、あちこちで見られる彼らなりの死生観、そしてクローザー "銀河鉄道の夜" で見せる恒例のポップ路線。どこを切ってもカリガリでしかなく、今なお「有効」なバンドだと感じさせてくれる納得の内容。記憶を風化させないために収められた SOFT BALLET "Engaging Universe" カバーも彼らにしか成し得ないものだろう。

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22. James Blake "Playing Robots Into Heaven"

Sep 8, 2023 / Republic, Polydor

イギリス・ロンドン出身のプロデューサー。作品を出すごとに R&B ボーカリストとしての側面に比重が偏ってきていた彼だが、今作では久しぶりにデビュー当初のエレクトロニック作曲家の立ち位置に回帰。アップリフティングな4分打ちで駆け抜ける "Loading" "Tell Me" 、ハードコアに引き締まったフロアバンガー "Big Hammer" などダンスプロパーな楽曲が明らかに幅を利かせているわけだが、それでも彼はやはり歌心を切り離せない性分なのだろう、自分が初めて "The Wilhelm Scream" を聴いた時のあの感覚、深い溜め息のような哀傷や憂鬱が、ボーカルを引っ込めていてもアルバム全体には相変わらず通底している。ポストダブステップの第一人者ならではの精緻な音響デザイン、洗練されつつ弾力性のあるグルーヴが生み出す熱狂、それらと歌声が醸し出すディープな翳りが真っ向から拮抗し、結果不可思議な温度感が生まれるという。これぞ JB 。

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21. London Brew "London Brew"

Mar 31, 2023 / Concord Jazz

イギリス・ロンドンのジャズミュージシャン12名によって結成されたスーパーグループ。歴史的名作と名高い Miles Davis "Bitches Brew" のリリース50周年を記念して、Nubya Garcia 、Shabaka Hutchings 、Tom Skinner など現代の UK ジャズシーンの第一線を張るメンツが揃い、その "Bitches Brew" を新たに再構築するというのがこのプロジェクトのそもそものコンセプト。だが忠実なカバーというわけではなく、当時の Miles が発揮していた猛々しい野心、ジャズの未開拓地を突き進まんとするアティテュードを継承し、我々も今までにないジャズを生み出してやろうというのが今作の本質だと思う。フリーキーなセッションではあるが緻密な構築性もあり、ワイルドなプレイの肉感的魅力とスピリチュアルな広がりを見せる音像との相乗効果で、ロンドンから大気圏までをブチ抜く圧巻の一大ジャズ絵巻が完成。これこそ真のトリビュート。

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20. John Cale "Mercy"

Jan 20, 2023 / Domino

ウェールズ出身のシンガーソングライター。純粋なオリジナルアルバムとしては約10年ぶりとなる今作を聴いて、自分は David Bowie "Blackstar" を思い出した。8曲目 "Night Crawling" は実際に Bowie との思い出を題材にしていたりするのだが、それよりも、全体に蔓延するダークな虚無感のせいで。ゲストには Laurel Halo や Animal Collective など自分より何世代も下の先鋭を多く起用し、80歳を超えた今でもラディカルな姿勢を崩さずにいる。だが実際にはゲスト陣はがっぷり四つのコラボというよりも、Cale が目指すサウンドを補強するために招聘されたような印象が強く、そのサウンドというのが往年の諸作のようなアートロック/バロックポップではなく、ゆらゆらと虚空を漂うかのごとく幻惑的でアブストラクトな、ともすればゴシックな陰鬱さを孕んだエレクトロニカで、それはまるで…いかにも縁起が悪いので何だが…ちょうど Bowie が死の間際に見せた、この世ならざる謎めいた世界観と直結するような。ある意味ではとても彼らしい極致だとも思う。

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19. Liturgy "93696"

Mar 24, 2023 / Thrill Jockey

アメリカ・ニューヨーク出身のメタルバンド。そもそも Liturgy は2019年リリース作 "H.A.Q.Q." の時点で完全に規格外の存在と化していたのだが、その時に見せていた方向性が全15曲83分のボリュームで大爆発したのが本作。その苛烈な音楽性のみならず、バンマス Haela Ravenna Hunt-Hendrix の持つ哲学的/宗教的な信条、数秘術に基づくものと思われる表題、主権/階層/解放/個体化の全四楽章からなる構成など、どこを取ってもエクストリームな思想の強さで突き抜けまくっている。だが Steve Albini プロデュースによるライブ感を重視したプロダクションや、獣性を露わにするブラストビートやグランジ風のグルーヴィなうねり、何処となくエキゾチックな感触も見せる荘厳なメロディセンス、そして無軌道なグリッチ編集に至るまで、肉感的な即効性を存分に発揮しているのも重要な魅力。同期なし/エフェクター最小限の武骨な爆音で突っ走るライブでも証明されていたが、「超越的」なだけではない、彼女らは真っ当な意味でのヘヴィメタルバンドなのだった。

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18. Sandrayati "Safe Ground"

Mar 17, 2023 / Decca

インドネシア出身のシンガーソングライター。今作のレコーディングのため彼女はアイスランドにまで渡り、公私ともにパートナーであるエレクトロニカ/ポストクラシカルの作曲家 Ólafur Arnalds をプロデューサーに迎え、全面的にバックアップを受けながら制作に臨んだ。その結果生まれたのは、フォーク主体でありながら牧歌的というよりも Sigur Rós や Ásgeir に通じる雄大さや聖性を強く感じさせる、ミステリアスでありつつひどく親密な優しさの歌曲集。歌詞の中には鳥、空、花といったタームが多く目立ち、MV の中でも彼女は開放的な大自然の空気に身を預けながら、ささやかな歌声を紡ぐことに全霊を注いでいる。目に映る全ての光景から豊かなインスピレーションを受け、シンプルな演奏と深い残響音、繊細で包容力のある歌、その響きの隅々に至るまで微細な血脈の暖かみが宿されている。デビュー作にして何という境地だろうか。

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17. Youth Lagoon "Heaven Is a Junkyard"

Jun 9, 2023 / Fat Possum

アメリカ・アイダホ出身のシンガーソングライター。テン年代にローファイ派インディロックの新星としてデビューし、Pitchfork 始め各メディアから賞賛をもって迎えられるも、しばらくは本名名義でのエレクトロポップに路線変更しており、Youth Lagoon 名義としては実に8年ぶりとなる本作。この間に彼は市販薬の副作用で激しい消化器症状に見舞われ、10キロ以上体重を落とし、まともに声も出なくなるという深刻な事態に陥っていたとのこと。そんな経緯を経て完成した今作は、過去のサイケデリック/ドリームポップ要素はかなり後退し、代わりにシンプルなフォーク/カントリーが台頭。自身の抑うつ症状や、この世を去ってしまった友人、酒浸りの父親、故郷アイダホなど、彼を取り巻く環境の様々に対する複雑な心境がシックに描かれる。その声は今にも消え入りそうなほどに弱々しいが、シャープな確信に満ちていて、優しさと強さをジワリと感じさせるもの。

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16. Hinako Omori "stillness, softness…"

Oct 27, 2023 / Houndstooth

横浜出身、ロンドン在住の電子音楽家。前作 "a journey…" では森林浴からインスピレーションを受けて身体にヒーリング効果を及ぼす音の波長域を追求し、緩急のついたフレキシブルなアルバム構成でアンビエントの可能性を模索していた。今作ではそこから一歩踏み出して、自身のボーカルをより前面に据えたポップな仕上がり。シンセサウンドの響きの心地良さを保ちつつ、ともすれば歌謡曲的な情念すら感じさせる "Ember" を筆頭に、ダークで蠱惑的な側面も強調されており、純粋なヒーリングというよりもアンビエントのスタイルを用いながらの彼女なりのアートポップが構築されている。歌モノとインストゥルメンタルが交互に連結された流れの中でディープな内省が行われ、一層彩り豊かになりながらも神秘性と実験性は損なわない、そんなバランス感覚をさらに研ぎ澄ませた野心作。今作で彼女の存在感はますます強まった。

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15. Laufey "Bewitched"

Sep 8, 2023 / AWAL

アイスランド・レイキャビク出身のシンガーソングライター。アルバム冒頭の豊かなハーモニーで歌われる "Let me be a dreamer" の一節、これは甘い恋に耽る歌詞中の主人公の心境であると同時に、聴き手の我々を一様に魅惑せんとするセイレーンのごとき魔性の手招きでもある。まるでディズニー映画のめくるめく寓話の世界のような、あるいは人生の終末を絢爛に飾るララバイのような…ともかく、気品のある美しさで彩られたトラディショナルなボーカルジャズで全編が占められている。場面によってはボサノバ要素が強くなったりもするが、例えばクラブミュージック方面に寄せるとか、音響面に凝って前衛的な側面を打ち出すとか、そういった流行への目配せは一切なく、オールドファッションにこだわった直球勝負のみなのだ。リッチな結晶のようなミッドロウの歌声と、クラシカルで丁寧な演奏。それだけで十二分にユニークな才能。

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14. billy woods & Kenny Segal "Maps"

May 5, 2023 / Backwoodz Studioz

アメリカ・ニューヨーク出身のラッパーとロサンゼルス出身のトラックメイカーのコラボ作。自分は billy woods に関してはここ1~2年ほど前から聴き始めたのだが、昨年多くのメディアで高評価を得ていた "Aethiopes" や、彼の所属する Armand Hammer の諸作にしても、かなり閉塞的でアンダーグラウンドな意向の強い作風で、個人的には正直言ってついていくのがやっとだった。だがそれらに比べると今作は驚くほど聴きやすい。billy woods 自身がポスト・パンデミック・レコードと銘打つ今作は、飛行機からの壮大な眺めを交えながら内省的な心境を綴る "Soft Landing" 、古ぼけたジャズサンプルに乗せて時差ボケの辛さを吐露する "Bad Dreams Are Only Dreams" 、ホテルの一室にてマリファナを吸いながら何千マイルも離れた愛する人へと思いを馳せる "FaceTime" など、コロナ禍を経て世界中の現場を再び飛び回り始めたラッパーの旅情を滲ませた内容。緩急のメリハリのついたトラック群は、緊張感ある場面でも至ってクールで、ともすればポップな印象も。

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13. Puma Blue "Holy Waters"

Sep 1, 2023 / Blue Flowers, PIAS

イギリス・ロンドン出身のシンガーソングライター。風前の灯火のようにか細い歌声は今作でもそのままだが、ここでの彼は決してナイーブに塞ぎ込んでいるばかりではなかった。弾き語りベッドルームポップといった塩梅の前作 "In Praise of Shadows" からライブバンド編成へと移行し、ギターサウンドの空間的な厚みやリズムセクションの強靭さを至ってナチュラルな手つきで取り込み、繊細な歌の情感を損なうことなく、音楽性をさらに奥深く発展させることに成功している。楽曲によっては90年代トリップホップ勢をダイレクトに想起させるものもあったり、生演奏とエレクトロニクスのバランス感覚には Radiohead の遺伝子を見出すこともできるが、青白い炎を静かに燃やすバンドサウンドに促されてか、陰翳礼賛のクールな精神を保ちつつもテンションの昂ぶりを確かに感じ取れる。特に "O, The Blood!" や "Hounds" などの気迫は思わず固唾を飲んでしまうほど。着実な前進を見せた好作。

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12. Skrillex "Quest for Fire" "Don't Get Too Close"

Feb 17, 2023 / OWSLA, Atlantic
Feb 18, 2023 / OWSLA, Atlantic

アメリカ・ロサンゼルス出身のプロデューサー。ブロステップのオリジネイターとして世界中のパーティーピーポーを撃ち抜き続け、すでに中堅~大御所の域に差し掛かっている彼が、フルレンスとしては実に9年ぶりとなるこの連作で音楽性を更新することに成功した。"Quest for Fire" はハードなフロアバンガー、"Don't Get Too Close" は爽やかなエモラップ/ポップ調といった風に方向性が割り振られているが、前者はグルーヴの熱量をガンガンに焚き付けるさすがの剛腕っぷりが発揮されており、後者のスムースに洗練された音像は彼にしてはチャレンジングな印象。ちょうど綺麗に対局を成すこれらの2作は、ブロステップに留まらずハウスやドラムンベースなど巧みにリズムパターンを切り替える柔軟さが活かされ、およそ全てのクラブミュージック愛好家を射程圏内に定めている。アルバム2枚分に渡って収められたメガトン級の熱狂と刹那の感傷。今の自分の人生に足りてないのはこれだ。

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11. Reverend Kristin Michael Hayter "SAVED!"

Oct 20, 2023 / Perpetual Flame Ministries

アメリカ・カリフォルニア出身のシンガーソングライター。Lingua Ignota 時代のクラシカルとノイズ/インダストリアルを交配した圧倒的な音像から、本名名義に切り替えてシンプルな弾き語りフォークやゴスペルにシフトチェンジしたというわけだが、だからと言って彼女が普通の歌を歌うはずはなかった。DV に端を発する自らの心身の傷をあえて見つめ直し、過去と決別して前へ歩を進めるための歌の数々は、オープンリールやカセットデッキ、アナログテープの切り貼りといった極めてアナログな手法にこだわることで異様な生々しさを獲得し、音がすっ飛んだり急に音量が変わったりの劣悪な編集によって悪意が倍加された。例えば Patty Waters や Brigitte Fontaine のようなシンガーが、声を用いてのパフォーマンスの可能性を押し広げるために果敢にアバンギャルド精神を燃やしていた60年代の諸作と、今作は確実に比肩する。クローザー "HOW CAN I KEEP FROM SINGING" での絶唱を果たしてあなたは受け止めきれるか?間違いなく今年一番の怪作。

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10. Zulu "A New Tomorrow"

Mar 3, 2023 / Flatspot

アメリカ・ロサンゼルス出身のロックバンド。彼らの音楽をジャンル分けするならば、ハードコアパンク、その中でも特にファストかつヘヴィな攻撃性に特化したパワーバイオレンスが適切となる。しかし彼らは怒りや破壊衝動ばかりを音に変えているわけではない。Zulu 参上!の高らかな掛け声を合図に、硬く太く鋭く鍛え上がった肉体性がフロアをすぐさま狂乱の渦に落とし込むが、そこから Nina Simone や Curtis Mayfield など偉大な先達からの引用を交え、ソウル由来のメロウな恍惚へと急転直下、またヒップホップ方面からの影響も露わにするなど多くの要素を貪欲に取り込み、多層的な流れはひたすらに加速し続ける。それは抑圧に対する抵抗の姿勢でありつつ、「新しい明日」を手探りで切り拓くための祝祭、創造の音色でもある。パワーバイオレンスと他ジャンルをダイナミックに接続することで黒人音楽の歴史を総括せんとする、パンクのみならず全ての音楽ジャンルにおいて急進的と言える内容が本作なのだ。未来は Zulu の音の中。

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9. Gia Margaret "Romantic Piano"

May 26, 2023 / Jagjaguwar

アメリカ・シカゴ出身のシンガーソングライター。アルバム表題が示す通りにアコースティックピアノが全編の主役となっているのだが、実際には楽曲によって種々の複雑な試みがなされている。ドローン/アンビエント風のささやかなシンセ、管弦楽器、フィールドレコーディングによる鳥のさえずりや子供のはしゃぎ声。聴き手それぞれの中に存在するであろう遠いノスタルジックな情景、その全てに親密に寄り添うような、架空のサウンドトラックとでも呼ぶべき楽曲群。ほとんどの楽曲が1~2分台、トータル29分という短さながら、その鳴らされる音と空気感から描かれる叙情/叙景は、むしろ短いゆえの儚さが手伝って、静かに胸を打ち震わせる美しさを永遠不変のものとしている。そして中詰 "City Song" で不意に顔を出す彼女の歌声。かつてはコンサートツアー中に病に倒れて失われてしまった声が、ここでは夢の淵への導人のようにゆらりと現れ、聴き手をさらなる音の迷宮へと誘う。そこから帰ってこれなくなりそうな、ある意味でひどく魔的な作品。

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8. Y La Bamba "Lucha"

Apr 28, 2023 / Tender Loving Empire

アメリカ・オレゴン出身のラテンバンド。メキシコ系の血を引くボーカリスト Luz Elena Mendoza 率いるこのバンドの音楽は、この世のあらゆる抑圧に抵抗し、同時にこの世のあらゆる相違を甘んじて受け入れる。アルバム表題はスペイン語で「闘い」を意味するのだが、自分自身の内面とそれを取り巻く環境に真っ向から対峙し、未来を切り拓いていくというのが今作のテーマとのこと。すなわち広い意味でのレベルミュージックと呼べるであろうこの楽曲群は、しかしながらその反骨精神とは裏腹に、楽曲には一切を許容するかのごとき包容力があり、深い慈愛を感じさせる。レゲエやクンビア、ボサノバといった南米音楽とサイケデリックフォーク、オルタナティブロックなどの要素を折衷し、レイドバックした音の滋味が五臓六腑に深く染み渡りつつ、一方で実験的な音響性と骨太なグルーヴを有した音楽性で、タフな聴き応えもある。そこには確かな足取りで地を踏みしめて前を行く、凛としたパワーを自分は感じた。

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7. Kara Jackson "Why Does the Earth Give Us People to Love?"

Apr 14, 2023 / September

アメリカ・イリノイ出身のシンガーソングライター。音楽性はフォーク/カントリーで、シンプルなアコースティックギター弾き語りに、素朴なバンドアンサンブルや室内楽アレンジが加わる程度の簡素なものなのだが、どの曲からも非常に強い筆圧を感じる。彼女のボーカルは決して激情を露わにするようなタイプではなく、ミッドロウのハスキーな声質で優しく語りかけるように歌うのだが、短い曲にしても予想外の方向に展開していく長尺曲にしても、最初から最後に至るまで無駄がなくブレない一筆書きの美学、信念の強さを感じるのである。"dickhead blues" で放つ鈍い輝き、"free" で果てしなく広がるスピリチュアルな幽玄の響き、"rat" での不吉な空気を漂わせる弦楽隊の音色、それら全ての中で彼女は「愛」という概念について深く考察し、希求し、かつて自分を抑圧し見下していた恋人に対して明確に NO を突き付ける。彼女の歌が優美な演奏に緊張感を与えており、迷いや痛みを超えて自らの賛美へと至る、その様は強力な筆致ゆえになんとも圧倒的。

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6. Loraine James "Gentle Confrontation"

Sep 22, 2023 / Hyperdub

イギリス・ロンドン出身のプロデューサー。IDM 由来の可変速エレクトロビートは、至って冷徹で、ともすれば獰猛な印象すらあるものだが、楽曲全体から受ける印象はなんとも甘美で親密。自身の父と母についての思いを綴った "2003" はもちろんのこと、"I DM U" や "I'm Trying to Love Myself" のようなインストゥルメンタル曲においても、憂鬱や逡巡といった彼女の内にあるエモーションが痛々しいほどに発露されている。歌うべきところでは歌い、口をつぐむところではつぐむ。楽曲に思いを乗せる際にどういった手法が最も有効であるかを、彼女は理知的かつ本能的に鋭く察知している。またゲスト陣にはバルセロナの実験音楽家 Marina Herlop や、英国ポストパンクの突然変異種 black midi の豪腕ドラマー Morgan Simpson など多彩な顔触れが揃い、それら全てが Loraine の鳴らす音、ベルベットのような優しさと切れ味鋭いビートの双方に寄り添って世界観を拡張する。間違いなくここが彼女の最高到達点。

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5. JPEGMAFIA & Danny Brown "SCARING THE HOES"

Mar 24, 2023 / AWAL, Peggy

ニューヨーク出身のラッパー/トラックメイカー JPEGMAFIA と、デトロイト出身のラッパー Danny Brown によるコラボ作。現行の US ヒップホップ界隈の中でも奇才として名高いこの両者だが、出来上がった代物は至ってプリミティブな快楽原則に忠実な、なんともキャッチーな身体性の強い仕上がりとなった。JPEGMAFIA がコンパクトサンプラー SP-404 のみを用いて作り上げたという本作は、Kelis や Michael Jackson から日本のローカル CM や坂本真綾まで禁じ手一切なしのサンプリングと、粗雑かつパワフルなビートで目まぐるしく展開し、Peggy と Danny の舌鋒鋭いラップの土石流と相まってエッジーな刺激がまるで途切れない。大胆な荒業で最後まで突っ切るスタイルは上品な意味での完成度からは程遠いものかもしれないが、エナジーとセンスを突き合わせて底知れぬ何かを生み出そうとするアティテュードは、きっとヒップホップというジャンルが産声を上げた当初から持ち合わせている魅力そのものなはず。 

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4. BUCK-TICK "異空 -IZORA-"

Apr 12, 2023 / Lingua Sounda, Victor Entertainment

群馬出身のロックバンド。聴いていて何度も胸を締め付けられる。それはボーカリスト櫻井敦司の急逝によるものではない。この作品の本質によるものだ。いまだに出口の見えないロシア/ウクライナ情勢に加え、今年はイスラエル/ガザ情勢も連日報道され、爆音のミサイルや銃声が飛び交い、多くの住民が無残にも命を奪われる様子が嫌でも視界に入るようになった。B-T は今作にて、"さよならシェルター" では極限状態の中での脆弱な愛情を 、"ワルキューレの騎行" では侵攻を命じる支配者の狂気を、そして "太陽とイカロス" では全ての責務から解放されて死に向かう兵士の喜びと悲しみを、シアトリカルに、かつ真に迫った説得力をもって描き切っている。彼らの長いキャリアの中でも1、2を争うくらいに時代性を反映した内容は、結果として彼らが昔からテーマとしている死生観の表現をさらに掘り進め、最新作が最高傑作たる現在進行形のバンドとしての凄みをここに来て新たに更新した。トレインはまだこれからも続く。信じて追い続けよう。

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3. NewJeans "Get Up EP"

Jul 21, 2023 / ADOR

韓国出身のガールズグループ。それは8月のある日のこと。自分はアメリカの Lollapalooza に出演する NewJeans を見ていた。息も絶え絶えになるほどの灼熱地獄であるはずのステージで、その必死さを露ほども見せずに洗練されたパフォーマンスを披露する彼女らの姿に、自分は自ずと魅了されていった。後半からライブバンドが退いて "Get Up EP" の再現セットに入り、いよいよ5人のみの力量が発揮されてくる段になると、肌にジリジリと突き刺さる日差し、涼やかな微風のような歌声、輝かしい青葉の匂いと刹那の狂騒に包まれて、いつしか自分は Minji に、Hanni に、Haerin に、Hyein に、そして Danielle になっていた。あの時自分は確かに、どこまでも広がる異国の空の下、万単位で集結した熱狂的な Bunnies と青春の一時を分かち合い、二度と訪れることのない思い出として脳裏に焼き付けながら、滑走路から翼を広げて離陸するようにスターダムへの道を駆け抜けていた。この先にどれほどの苦悩が待ち受けていたとしても、今この瞬間に巻き起こっていた時代の追い風、上昇気流を受けて美しく華やいだ、掛け替えのないこの経験を自分は決して忘れはしないだろう。そうです、私が NewJeans おじさんです。

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2. jaimie branch "Fly or Die Fly or Die Fly or Die (​(​world war​)​)"

Aug 25, 2023 / International Anthem

アメリカ・ニューヨーク出身のトランペット奏者。残念ながら不慮の事態で昨年8月に急逝してしまった jaimie branch 。残された家族とバンドメイトが完成間近だった今作を、「jaimie が生きていればどうしたか」を最優先事項に掲げ、何とかリリースにまでこぎ着けてくれた。3曲目 "burning grey" において彼女は「私を信じて/未来は私たちの中にある/戦うことを忘れないで」と聴き手を何度も激しく扇動する。そういった直接的なメッセージはもちろんのこと、闇を切り裂くように鳴らされるトランペットの響き、引き締まったリズムセクション、ついでに The Meat Puppets のカバーなんかもあり、ジャズの枠内に身を置きながらも彼女が元来持つパンクスピリットが明確に表出した内容となっている。しかしシリアスな重みばかりに偏っているわけではない。先述の "burning grey" や "take over the world" ではアドレナリンを即時に噴出させる強靭なダンスグルーヴがメッセージと同等の勢いで迫り来るし、"borealis dancing" の土着的かつどこか呪術的な雰囲気を醸し出すファンクビート、"baba louie" の陽気なメロディから妖しいダブ音響へ急転する曲展開など、愛らしくユニークなアイディア、鳴らす音そのものの原初的快楽が大前提にあるのだ。ジャズの可能性を隅々まで突き詰めようとしていた彼女が不在となったのは悲しいことだが、この全方位的にパワフルな作品は確実に聴き手の未来を明るく照らし出してくれる。

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1. KNOWER "KNOWER FOREVER"

Jun 2, 2023 / Self-released

アメリカ・カリフォルニア出身のポップユニット。今年のフジロックのホワイトステージを華々しく飾った Louis Cole と、上にも挙げたソロ作品が充実の出来だった Genevieve Artadi 、それぞれが単独で優れた才能の持ち主であることは重々理解している。だがそれらの才能を100%に生かし切っているのは、タッグを組むことで何倍もの相乗効果を発揮しているこの KNOWER においてだろうと、この新譜を聴いて自分は確信した。洒脱に洗練されたメロディセンス、スリリングなソロ回しを含むジャズプレイヤーとしての高度な演奏スキル、しっかり身体に響くグルーヴを保持しながらユーモラスなヒネリの効いたアレンジ、まさしく心・技・体の3つのバランスが高次元で両立された秀逸ポップナンバーの応酬。Sam Wilkes や Sam Gendel を筆頭に数多くの辣腕ゲストが集結し、さながら US オルタナティブジャズ界隈のオールスター状態と化しているが、その全員が首謀者2人の目指す世界観、すなわちハイブロウとロウブロウの交差の妙技、カラフルで諧謔の効いた「本気の遊び」的なノリに加わり、無邪気にパーティーをエンジョイしている感がこの上なく痛快。グラミー賞ノミネートの経歴もある Louis Cole を筆頭に、すでに十分な評価を確立しているはずのこの集団が、あえて Brainfeeder を介さずに完全自主でこのような傑作をひょっこりリリースしてしまうというフットワークの軽さも含め、その粋な才能に惚れ惚れしてしまう。音を楽しむと書いて音楽、などと言うとひどく陳腐に聞こえてしまうが、彼らがその決まり文句を完璧に体現しているアクトであることは間違いない。

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