20240327

いつだってイヤホンで耳を塞いでいた。部屋の外の物音、足音、窓の外から聞こえる車の音、人の話し声、怒る声、泣いてる声、笑ってる声。造り上げられた仮の場所にばしょだと思うことはできずに、ずっと、ずっと。ねこたちがいない。

気づいたらもうあのひとはいなくて、あの子も、あの人もいなくって、それでぼくは、ぼくのなかから私を取り上げられる、ぼくのなかから僕を作り上げる、ずっと、ずっともう、このからだは、ツギハギのままだ。

一般論なんてどうだってよかったのに、きみがわらってくれるのならそれでわたしはしあわせだったのに、それもだめになって、さいしょからきっとだめで、彼岸花、綺麗だから持って帰っちゃって、また、怒られる。

髪を長く長く伸ばして、ツインテールにしたかった。初音ミクは、自分の中でとても、とても大事な存在だった。黒髪ロングが好きなのは、紫苑寺有子がいたから。ニート探偵のきみがいたから。屋上に温室があったから。あの子が飛び降りてしまったから。モニターがたくさんあったから。高校生だったから。小学生だったから。小学生だったよ。高校生だったよ。中学生になって。なって、いってしまったから。変わっていってしまったから。変わっていってしまうから。きみは喪服のような黒いワンピースを纏って。あるいは野球のバットを持って。いつもパソコンの前にいたから。そこにいたから。きみもわたしもぼくも、人も、ひとも。そこにいたから。そこに、いたのに。いたはずなのに。

ぼくが死んでも、お墓には埋葬しないでほしい。入りたいお墓がないから。どっちがいいのかわからない。わからないでいても時間は流れて。時は過ぎていく。

さよならしたくなかった日々とひととねことわたしとぼくときみたちへ


ぼくが手首を切って血を流しているのを無言で見せてしまったとき、祖母は、何も言わずに消毒をして、包帯を巻いてくれた。
ぼくが2階の窓から飛び降りようとしているのを見せてしまったとき、母は、病院に電話をしてくれた。
ぼくがつくりわらってだいじょうぶなふりをしていたとき、母は、作らなくていいと言ってくれた。
ぼくがつたない絵を描いていたら、祖母は、すごく褒めてくれた。
ぼくが雨の中あの家を飛び出して靴も履かずに走り出してしまったとき、祖父は、追いかけてきてくれた。
ぼくがむりしてだいじょうぶなふりをしていたとき、父は、やさしくせっしてくれた。
ぼくがいえからあの家で住むようになった頃、祖父母には、ぼくのこえが、声が届かなくなったようだった。
ぼくが小さい頃のビデオや写真のデータを父と母と見ていたとき、その中には楽しそうにしている子が写っていた。
ぼくがぼくでいられなくなってしまうとき、ひとには、迷惑と負担ばかりかけてしまうようになってしまった。
時間軸も名前も場所も曖昧になって霧散していくよ。
さよならとはじめましてとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならとさよならばかりの


はたちになるまでに死のうとおもっていた。18になるまでに死のうとおもっていた。何度も何度も何度も何度もしのうとしたりいきようとしたりいそがしい。その度にぼくは。いつも。いつも


もう数えきれない。もう思い出せない。もう視えない。
そこにある。ここにはない。そこにない。ここにもない。


ねこたちのなまえをひっしにおもいかえしてみる


いきをしていたらいいですか
どうやって?


ありがとうを繰り返す

ありがとう、ぼくを見つけてくれて
ごめんね、こんなにんげんで
ありがとう そこにいてくれて
ありがとう


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