インパクト投資のパイオニアAcumenと業務提携。20年の実績を経てなおパワーアップする今日のアキュメンを探る。
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インパクト投資のパイオニアAcumenと業務提携。20年の実績を経てなおパワーアップする今日のアキュメンを探る。

投資や様々な方法で世界の貧困問題に挑んでいるAcumen Fund(本部ニューヨーク)とSIIFはこの度国内の個人投資家におけるインパクト志向のフィランソロピー活動の参加を促す仕組みの構築を目的として業務提携をしたことを受け、担当者のHannah Wheatley氏をお招きして、現在の活動内容についてお伺いしました。


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(中央) Acumen, Head of Business Development Europe, Hannah Wheatley
(右)SIIF 事業本部長代理 藤田淑子
(左)SIIF インパクト・オフィサー小柴優子

小柴 この度SIIFの富裕層向けフィランソロピー事業とアキュメンでパートナーシップ協定を締結しました。アキュメンは20年前からインパクト投資に取り組んでいるインパクト業界のリーダーですが、現在のアキュメンの事業と投資活動について教えてください。

Hannah 私たちは、「すべての人間が機会を得られる、尊厳に基づいた世界」の実現に向けて、主に3つの活動に取り組んでいます。1つ目は貧困問題に取り組む企業への投資活動、2つ目は起業家や道徳的な想像力を持つ未来のリーダーの支援とパイプラインの構築、そして3つ目はインパクト測定などの知見の高度化と普及です。

活動の1つ目の「投資活動」においては、大きく分けて2種類のファンドを運用しています。寄付が原資となる「パイオニア投資」と、社会的リターンと財務リターン両方の創出を目指す「リターナブル・ファンド」の2種類です。いずれのファンドにも共通するのは、「忍耐強い」資本(超長期の回収を前提とした投資)を投じていることです。

「パイオニア投資」(寄付が原資のファンド)は、貧しい人々に基本的な商品やサービスを提供したり、既存のシステムを変えるための新しいイノベーションに取り組んでいる企業に資金を提供しており、このファンドにより発生したリターンは全て同ファンドに再投資されます。投資先は、東アフリカ、西アフリカ、ラテンアメリカ、北米、インド、パキスタンなど。投資分野は、クリーンエネルギー、農業、労働力開発、医療などが主です。過去20年間で1億3700万ドル(約154億円)相当のフィランソロピー資金を132社に提供し、約8000万ドル(約90億円)を株式出資し、5700万ドル(約64億円)を貸付してきました。私たちはパイオニア投資ファンドを通じて、これまでに約4億人に支援を行いました。また、投資先企業が総額7億4,000万ドル(約830億円)以上の外部から資金調達をしたことも確認しています。

もう1つは、アキュメンの子会社であるアキュメン・キャピタル・パートナーズを通じて設立した、社会的リターンと財務的リターンの両方を追及する「リターナブル・ファンド」(投資ファンド)です。今日までに3つ立ち上がりました。リターナブル・ファンドは、世界中の低所得者層の生活を変革するという野心的なインパクト目標と市場競争力のあるリターンを提供することを目的とし、市場の主要なニーズに対応する実証済みのビジネスモデルに成長資金を投資します。その中の1つであるKawasafiというファンドは、東アフリカにおけるクリーンエネルギーの提供に重点を置いています。投資先企業は、一般家庭および商業用の太陽光発電製品、消費者金融、低所得者層への無電化地域におけるエネルギーの提供などの分野で業界をけん引する存在となっています。これまでに約7,400万人、約1,500万世帯に良い影響をもたらし、1,200万トン以上のCO2の排出を回避してきました。

その他に私たちが力を入れているのは、起業家や道徳的な想像力を持つ未来のリーダーのパイプラインの構築です。私たちは、アキュメン・アカデミーを設立し、公正で包括的かつ持続可能な世界を構築するための人格と能力を兼ね備えた新世代の社会的イノベーターとリーダーの育成に取り組んでいます。アキュメン・アカデミーでは、精鋭による12ヶ月間のフェローシップ・プログラムや10~16週間の業種別アクセラレーション・プログラムのほかに、世界中の人々が受講することができる無料のオンライン・コースなどを幅広い層に提供できるプログラムや、受講体制を整えています。また、フェローシップに参加した人たちは、世界9カ国、800人、アクセラレーターを修了したのは199人に上り、これまでに総額400万ドル(約4.5億円)を超える投資額を修了生の経営する会社に実施するなどのサポートを提供してきました。

小柴 私がインパクト投資に興味を持ったのは実はアキュメンの創設者が書いた本がきっかけでした。大学でこの本を読み衝撃を受け、ソーシャルファイナンスを卒業論文のテーマにしました。SIIFにもアキュメンでインターンをしたメンバーがいますし、やはりアキュメンは20年前からインパクト投資に取り組んでいるパイオニアですが、Hannahさんがアキュメンで働き始めたきっかけはなんですか?

Hannah 私は過去12年間、イノベーティブな金融商品のためにフィランソロピー資金を集めるなどのソーシャルイノベーションの分野で働いてきました。アキュメンより大きな組織であったり、伝統的なNGOや非営利団体で働いてきましたが、アキュメンはよりインパクトの創出に焦点を当て、イノベーションや投資、起業家に着目していることから、この仕事にとても惹かれました。

資金調達の仕事では、実に様々な資金提供者と仕事をしてきました。当初機関投資家や政府機関との仕事が中心でしたが、近年、個人富裕層との仕事が増えてきました。個人富裕層と仕事をする最大の魅力は、なんといっても彼らが持つ自律性と、迅速な意思決定力です。また、彼らはリスクに対する許容度が高いのも特長的です。政府機関は、もちろん重要なパートナーであり、イノベーションをとても歓迎してくれます。一方、個人富裕層は個人の財産を個人の判断で実に迅速に資金提供の判断をすることができます。自分や家族に対してのみ責任を負うのでリスクが取りやすくもあります。個人富裕層と協力して、彼ら自身の価値観や寄付の目標を一致させ、インパクトを最も生み出しやすい案件に投資や助成を振り分けるサポートできるのは、素晴らしいことです。

小柴 それはとても興味深いですね。私も今フィランソロピー・アドバイザーとして個人富裕層の社会貢献活動の支援をしていますが、フィランソロピスト(篤志家)の資金にはHannahさんが仰るような可能性が大いにあると感じています。Hannahさんも実際に意思決定のスピードなどの違いを肌で感じられたのですね。

Hannah それは間違いありません。フィランソロピーは個人の信念を反映する活動なので、フィランソロピー資本の配分の決定に関与する人の数は、そうではない資金と比べると明らかに少ないと言えるでしょう。フィランソロピー資金は、情熱を持ってアイデアを生み出し、迅速な投資を行うことができる資金です。

藤田 アキュメンに投資をする個人富裕層は、何を期待しているのでしょう。

Hannah 私たちは、アキュメンの寄付者を「パートナー」と呼んでいますが、パートナーは社会変革のために共に投資する協力者であり、財政的な支援だけでなく、アキュメンに専門知識を提供してくれます。私たちのパートナーは、私たちが向き合う課題や困難も含めてアキュメンの活動を理解し、共に学ぶ機会を得ることを期待しています。

インパクト投資には、財務的リターンを重視したものからインパクトを重視したものまで、さまざまなアプローチがありますが、Acumenは明確にインパクトを重視しています。Acumenの資金提供者の多くは、インパクト投資が人々の貧困からの脱却にどのように貢献できるかを理解するだけでなく、幾重にも重なる複雑なニュアンスについて学ぶことにも興味を持っています。

藤田 インパクト投資をけん引する担い手は誰ですか?この種の活動を支え、推進するのは次世代の若い方々だという話をよく耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか?

Hannah 実際、私たちの経験では、個人の支援者の大半は、50代や60代の方が多いように思います。しかし、そのような方々の多くは、20年前からアキュメンを支援してくれています。私たちを支援し始めたとき、彼らはもっと若かったのですが(笑)。今日、若い世代の富裕層、特にIT系の起業家が増えてきているのも確かです。彼らは、若くして財を成し、どこにどのように寄付すれば良いかに興味を持ち、革新的な活動を支援したいと考えています。私たちは近年、若いリーダーに焦点を当て、実践も兼ねた1年間の「アキュメン・ネクスト」という、新しいプログラムを立ち上げ、インパクト投資をけん引する若い人たちをこの新しいコミュニティに巻き込み始めています。

藤田 それでは最後に、SIIFとのパートナーシップに期待することについて一言お願いします。

Hannah SIIFとのパートナーシップを結んだことをとてもワクワクしています。日本や世界におけるインパクト投資に関する知識のエコシステムをサポートするために、アキュメンでの活動の学びをSIIFのコミュニティと共有する機会を楽しみにしています。


藤田 有難うございます。聞き足りないことがたくさんありましたが、これは来年に企画しているSIIF-アキュメンの共同イベントでお伺いしたいと思います!

企業情報
Acumen Fund Inc (以下、アキュメン)は、企業、リーダー、そしてアイデアに投資することで、世界が貧困に取り組む方法を変え、貧しい人々の生活を変えることを可能にする製品やサービスを生み出す企業にペイシャント・キャピタル(忍耐強い資本)を投じます。
https://acumen.org/


SIIF HP >>こちら

アキュメンとの業務提携に関するプレスリリース >> こちら

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2013年頃より調査研究に着手し、GSG国内諮問委員会設立や賛同メンバーの招集を皮切りに、インパクト投資における提言書や現状を記した報告書の発行。金融庁共催のインパクト投資における勉強会の開催などインパクト投資の推進のための活動をしています。