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休眠預金を使って持続可能な事業を育てる

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SIIF インパクトオフィサー 休眠預金プロジェクト・リーダー 小笠原 由佳

休眠預金等活用法を使った実行団体の公募がいよいよ始まりました。

2018年に施行された休眠預金等活用法は、10年以上取引がない「休眠預金」を民間の公益活動に活用しようという制度です。初年度は、これまで銀行の利益となっていた700億円程度(引当金を除く)といわれている資金のうち、約30億円(最長 3年間)が交付されます。日本で最大の助成財団の年間助成額が約330億円ですから、その1割程度の規模感。非営利団体にとっては少なくない資金が流れ込むことになります。

SIIF(社会変革推進財団)は2019年度、休眠預金を実行団体に振り分ける資金分配団体として22団体のうちの1つに採択されました。

今回、SIIFが行うのは「地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業」です。第一次公募を4月28日に締め切ったところですが、北は北海道から南は熊本まで100を超える団体から問い合わせをいただき、予想以上の手応えを感じています。そのうち60以上の団体とオンラインを使った事前相談を行ってきました。自然エネルギーを活用する事業や古民家を使った街の活性化など、地域活性化に取り組むバラエティに富んだ事業提案が寄せられていて、伴走支援が楽しみでもあります。

 そもそもなぜ今回の資金分配団体にSIIFが手を挙げたのか。その目的は大きく2つあります。1つは休眠預金を「試行的・革新的な取り組みに使う」という基本方針にも共鳴したこと。そのチャレンジを実行団体と一緒に進めていきたいと考えたからです。

もう一つは、休眠預金の活用に「出資」というスタイルを持ち込めないかと考えたこと。われわれが推進するインパクト投資自体も革新的な資金調達、資金供給手法です。SIIFは法案成立過程においても、英国の先行事例に倣って、「革新的資金提供手法」の一つとして休眠預金に出資や融資を活用することを提案してきた経緯があります。今回は、出資や融資を実行する際のルール作りが更に必要であるため、初年度は助成金のみでの実施という形になりましたが、インパクトの創出を目指すという意味では、助成金を通じて、計画当初の事業の目的を達成できるものと考えています。また、将来的には、法律にも出資は認められている手法であり、引き続き革新的資金提供手法が実現するよう努力していきます。

いままで、「地方創生」という名目で、多くの補助金が使われてきました。ただ、地域活性化や人口流出防止という結果にはなかなか結びついていないというのが実際のところではないでしょうか。

鍵となるのは「持続性」と「革新性」。地域に根付いた革新的なソーシャルベンチャーを育てることで持続的にインパクトを創出することができるのではないかと考えています。そのためにSIIFは、地域密着型の非営利の金融機関である信金の系統中央機関である信金中央金庫と包括連携協定を結び、情報を共有しながら事業を育てていく枠組みを作りました。 3年間、休眠預金の支援を受けて事業を行った後、成長が見えた段階で地域密着型の金融機関へとバトンを渡す。助成金を出して終わりではなく、それを肥料として事業が育ち、持続的に成長していくこと、将来的に休眠預金に依存しない事業を育成することを目指しています。

休眠預金等活用法では、資金分配団体が実行団体に対して伴走型支援を行うとともに、成果についてのインパクト評価を行うことが求められています。「地域が活性化する」とはどういうことなのか、どういう指標で測ればいいのか。その評価軸を明確にするという点で、SIIFにとっても新しいチャレンジになるでしょう。

日本が抱える課題を考える上で、地方が自立して、地域循環型で経済を回していくことは不可欠です。今回のコロナ禍では日常生活を支える商品・サービスのサプライチェーンが海外や遠方に依存にしているという問題点が浮き彫りになりました。地域内で出来る限り資源を循環させ、地産地消で生産と消費の距離が縮まり、自立・自走型の経済を育てていくことが、ポストコロナ時代の大きな課題でもあり、その手立ての一つが地域経済の活性化です。今回、応募された事業提案の中には、エネルギーの地産地消や地域資源を商品化する事業など、ポストコロナ時代の課題解決につながる種となりうるソーシャルビジネスも多く見受けられました。

公募は3次(6月30日締め切り)まであります。伴走支援の名の通り、「お金を出す人」「受ける人という対立関係ではなく、地域を活性化するソーシャルベンチャーと、一緒に頭を悩ませながら走っていくチームが作れることを期待しています。


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