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21世紀型組織は「フェイルファースト」がいい【後編】

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SIIF理事長:坂東眞理子

■シリーズ:ESGの一歩先へ 社会的インパクト投資の現場から■

社会変革推進財団(SIIF)は2019年10月、社会的投資推進財団(旧SIIF)と社会変革推進機構(旧IASI)が合併して新しいスタートを切りました。これから新しい組織でそれぞれの強みを生かし、有機的にインパクトの創出を支援していきたいと思っています。

過去を振り返ると、20世紀型の組織は「予算を持っている」「有能な人材をたくさん抱えている」「権限がある」のが強い組織でした。でも新しい組織はそういったものを持たないことの方が多い。

では、21世紀型の新しい組織に必要なことは何か。第一は「明確な目標がある」ことです。さらに、その目標に対してみんなが「共感できる」こと。これは組織の大きな強みになります。組織の中だけでなく、組織の外にも共感され、理解されれば周りにサポートしてくれるネットワークができていきます。目標が共有され、組織のレピュテーションが高まればソフトなサポートの輪が広がるのです。
もう一つは新しい情報がどんどん入ってくる組織であること。古い組織は風通しが悪くなり、新しい情報が入ってこないことが多いのです。この2つが備わった組織であれば、お金も人も、今の力は少なくても、ニーズに応える動きができるようになります。

21世紀型の組織とは、たくさんの人材を抱え込んでフルタイムで定年まで補償するような固まった組織ではなく、むしろテンポラリーで目標のために集まって、また解散して別のチームに加わるような流動性のあるもの。忙しいときは全力投球するとしても、そうでないときは週休3日、4日のようなフレキシブルに働き方を選ぶことも必要です。働く場所も働く時間も自分で選択できる、自分の裁量で決められる組織がこれからは求められていくでしょう。

ただ、そういう流動的な組織ではインプットとアウトカムが必ずしも比例しません。20世紀型組織はたくさんインプットすればたくさんアウトカムがあった。人がたくさんいればたくさんの物が製造できるというように、資源と成果が比例していました。
どうしたら少ないインプットで明確なアウトカムができるか。共通して使えるような公式はどこにもなく、それぞれが試行錯誤していかなくてはいけません。

試行錯誤をするときにアメリカでも中国でも言われたのが、「フェイルファーストであれ」。つまり、「早く失敗しろ」ということです。失敗から学ぶことが一番の経験であり、財産なのです。高度成長期のようにどうしたら成功するかという方程式があるときは、そこから逸脱しないやり方が賢い方法だったでしょうが、今は方程式がありません。どうインプットしたらどれだけアウトカムが得られるか分からないときは、失敗から学ぶことが最も大事なこと。そして、それを続けるために相当のエネルギーが必要です。

私自身、失敗して心が折れそうなときは、「これもいい経験だった」と自分でリフレーミングします。事実は同じでも見方を変える。考え方さえ変えれば、「失敗してこういうことが分かった」と学ぶことができます。

自分だけでなく周りも応援して、励ましてくれる人も必要だと思いますね。失敗したら「あいつはダメだ」とレッテルを貼るのは20世紀まで。これからは失敗したら、そこからみんなで成功を導いていくこと。自分でリフレーミングできそうにないときは、もっとずるい手ですが「先送り」だってありです。本当に立ち直れないときは3日間置いて考える。少し落ち着いて、「さて」と振り返って向き合えばいいのです。小さな失敗と小さな成功、そして大きな成功へ。具体的な事例を積み重ねていくことが大事ですね。試行錯誤を繰り返しながら、小さな成功体験を重ねていくことが、これからの組織の在り方だと思っています。

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