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世界中のインパクト投資家が集まるGIIN Investor Forum2022でインパクト志向金融宣言についてセッションを実施、日本に対する海外の反応

SIIF

世界のインパクト投資家が集まるGIIN Investor Forum2022(10月、12日・13日、オランダ・ハーグ開催)で、「インパクト志向金融宣言と最近の日本におけるインパクト投資の進化」というテーマでGLIN Impact Capital代表、中村将人氏、SIIFのエグゼクティブアドバイザー安間匡明氏、常務理事の工藤七子氏、㈱かんぽ生命保険 野村裕之氏らがセッションを行いました。日本のインパクト投資に対する海外の反応やフォーラムの場で感じたことを振り返ります。


中村将人氏 GLIN Impact Capital代表


安間匡明氏 SIIF エグゼクティブアドバイザー 

民間の金融機関同士が公式に連携する取り組みは海外でも例がない

中村 GIINカンファレンスの中で、インパクト志向金融宣言としてお話をする枠を頂くために、数カ月前からGIIN側と交渉を重ねました。交渉する中で、GIIN側の人事異動等が重なり、一時は立ち消えそうにもなりましたが、「インパクト志向金融宣言」の経緯やユニークさを丁寧に説明し、興味を持ってもらうことができ、最終的にはGIINカンファレンスのスポンサーにならずセッション枠を提供してもらえたんです。
 
安間 インパクト志向金融宣言のように、民間の金融機関同士が横で連携してコラボレーションする公式なイニシアティブは海外でも実例がありません。日本は決してインパクト投資の先進国ではないですが、銀行やアセットマネージャー、VCなど多様な金融機関に連携があるのが特徴的で、この取り組みを発信することは価値があると思いました。40分程度のセッションでしたが、手応えが得られました。
 
中村 最初はGIIN側も日本の取り組みに関心が薄かった様に思いますが、金融機関同士が知見の共有をしながら発展させる取り組みは、インパクト投資が進んでいない他の保守的な国にとっても参考になる、と。日本のインパクト志向金融宣言の面白さを理解してもらえましたね。
 
今回は安間さまからインパクト志向金融宣言の内容と設立のバックグラウンドを解説いただき、SIIFの工藤さまからはインパクト投資のエコシステムの発展、SIIFの果たしてきた役割、そしてアセットオーナーであるかんぽ生命の野村さまの日本のインパクト投資発展のためのお取り組みなど、日本のインパクト投資の現状を紹介できたと思います。
 
安間 まだインパクト投資が発展していない開発途上国の方々の一部は、日本のように官民連携を使ってインパクト投資を進めていくやり方に関心を持ったようですね。多くの先進国では個々の民間金融機関が競争しながら取り組んでいますが、開催前日のメンバーズデーで強調されていたのはインパクト投資の発展のためには金融機関同士の横の連携・協調が大事だということでした。標準的なフレームワークが確立するまでは競争よりも協働が重要です。そういう観点から日本の取り組みは評価されたんじゃないかと思います。
 
一方、欧米でのインパクト投資は、インパクトを出しながらファイナンシャルリターンの実現に実際に結びついているので、推進に迷いがない。だから日本のようにリターンとのトレードオフに悩みながら協調して進めていることを不思議に感じたかもしれません。その温度差は感じました。
 
中村 金融庁と民間金融機関が連携してインパクト投資を進めるというのも、ほかの国ではあまり例のない取り組みだと評価されましたよね。海外の金融機関から、自分たちの知見をインパクト志向金融宣言に提供したいという反応もありました。
 

海外の投資家も日本のインパクトスタートアップに関心を持ち始めている

安間 私がフォーラムで感じたのは日本の個人金融資産への関心の高さです。2,000兆円といわれる個人資産の多くが銀行に預金され、投資に回っていない、その眠れる資産は海外アセットマネージャーからは宝の山に見えるのです。この資金をインパクト投資に使えば世界の社会課題が解決できるという思いがインパクト投資家にはあるようです。だから今、真剣に日本への進出を考え、自分たちがつくったインパクト投資商品を日本の個人投資家や機関投資家にも買ってもらいたいと考えています。その強い意欲を感じました。最近は、中国からの影響で香港の金融センターとしての魅力が落ちているし、シンガポールは人件費の高騰や規制強化の傾向にあります。その次の選択肢として日本進出への関心が高まっているように感じました。日本にエージェントや支社を置きたいという話は非常に多かった。
 
中村 インパクト投資自体が先進国の課題を解決するために急速に広まっています。GIIN参加者の属性も2分されていて、1つは今までのように途上国に対して投資する開発金融系の人たち、もう1つは先進国のアセットオーナーで自国の社会課題に投資している人たち。日本もメンタルヘルスや少子高齢化など多くの先進国としての課題を抱えているので、先進国におけるインパクト投資かと話が合うことが多かったですね。海外のアセットマネージャーの中には、日本のインパクトスタートアップやインパクト企業に興味があり、いい案件があれば共同投資したいという話も聞きました。先進国の社会課題を解決する企業が日本にもあるなら興味があると。ほかの国の資金で日本のスタートアップが成長できるのであれば、ありがたい話だと思います。海外のVCエコシステムは、日本のVCエコシステムの数十・数百倍レベルの資金がありますからね。

リスクを許容する投資がイノベーションをつくる

安間 インパクト投資も洗練されてきています。フォーラムには海外のさまざまなファンドマネージャーが集まっていますが、会った瞬間に”What kind of impact are you interested in?”と聞かれます。つまり、「どんなインパクトを求めているのか」と。ジェンダーに関心があればジェンダーのプロダクトを、ヘルスケアに関心があるならヘルスケアのプロダクトを。非常に産業化されていて、商品が取り揃っています。だから、われわれのようにインパクト投資の普及活動をしてエコシステムをつくる段階ではなく、インパクト市場が成熟している。その差を感じました。SIIFは財団なので単純に投資資金があると思われたのでしょうけど(笑)。
 
海外ではリスクに対応しやすいイクイティファイナンスがインパクト投資の中心です。だからイノベーションに対するリスクを取りながらもハイリターンを目指す好循環が得らやすい。インパクトとリターンが両立する分野にインパクト投資が集中していて、進め方が洗練されていますよね。
 
日本でも金融資本市場がもっと強くなって、リスクがあるものを取り込み、咀嚼して、個人投資家、機関投資家に提供していくことが不可欠です。リスクを回避する性向が強いので、イノベーションを促進する仕組みになっていないのだと思います。そのためには、金融資本市場に関わるアセットオーナー、アセットマネージャー、ベンチャー企業の皆さんがもっと対話して市場をつくっていくことが必要です。日本の経済力が低下している中で、金融資本を強化していくという課題は避けて通れなくなっていると思います。

インパクト投資の進化を実感できた

中村 今回の参加者は約1,600人でした。3年前は600人でしたから、参加者は飛躍的に伸びているし、いわゆるメインストリームの金融機関もスポンサーになっています。インパクト投資がメインストリーム化した印象は受けました。同時に、インパクト投資家同士のコンセンサスビルディングも進んでいる。IMP(Impact Management Project)が作成した「5 dimensions」もかなり浸透しているし、BlueMarkやKPGなどのインパクト第三者認証使われているのを実感しました。手法についての悩みも高次元化してきていますね。
 
安間 ぜひ日本の方々もGIIN Investor Forum のようなイベントに足を運んでほしいですね。日本にいてインパクト投資の手法に悩むのであれば、フォーラムに参加してネットワークをつくったほうが収穫はあると思います。
 
中村 実際に参加して、実務者達と意見交換をして学ぶことが多くありました。インパクト投資は欧米が圧倒的に進んでいるので、そこから学ぶことが多い。例えば5ディメンションズが実際に海外のインパクト投資家の中でどれくらいどう使われているか、行って話してみて初めて実感できます。それに海外の金融市場に向けて日本としてアピールしていくことも重要ですよね。
 
安間 私がインパクト投資に取り組み始めた2017年頃は、まだIFCが主導して作ったインパクト投資の運用原則が発足してなかった。IRIS+や5 dimensionsといったツールがあっても、世界のインパクト投資家が使っているという実感は持てませんでした。それがここ数年、GIINやGSGの関係者とオンライン会議で話をする中で、多くのフレームワークやツールが浸透していったのを感じました。
 
世界との認識のずれを補うためにも海外のフォーラムに参加することは大切なことです。こうしたフレームワークは政府や公的な機関が定めたものではないので、日本人は疑いを持ちやすいですが、世界に冠たる金融機関の人たちが使っているわけです。そのギャップを払拭するにはいい機会です。同じ目的意識を持った複数の専門家たちが利害関係もなく、時間をかけて議論してつくったもので、専門性は高いけど簡単に使えるツールになっているし、だから普及している。
 
中村 エコシステムビルディングのためにつくったものですから、世界のインパクト投資における共通言語ができていますよね。
 
安間 1つ言えることは、インパクト投資はこれからもますます発展するということです。日本では、ウクライナへの侵攻やコロナウイルスの感染拡大によってサステナビリティへの取り組みが後退するのではないかという人もいますが、それは全く逆。むしろ一層加速すると感じました。
 
中村 僕も、ESGには一部でバックラッシュが起きていると言われますが、インパクトにはバックラッシュは起きてない、むしろESGの足りない点を補うために必要だと叫ばれていると感じました。今回はパネルとして発信できましたが、来年以降も日本は課題先進国として発信していかないともったいない。それが日本に投資を呼び込むことにもつながります。


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