シード期の社会起業家が乗り越えるべき3つの課題とは?~SIIFの社会起業家支援への取り組みについてご紹介します~
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シード期の社会起業家が乗り越えるべき3つの課題とは?~SIIFの社会起業家支援への取り組みについてご紹介します~

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SIIF インパクト・オフィサー 加藤有也

はじめに

SIIFでは、創業間もないシード期から成長を目指し始めるアーリー期の社会的企業を主な対象として、様々な支援プロジェクトを行っています。取り組む目的は、社会課題解決を目指し創業した起業家にとって必要な財務・非財務支援のモデルを創出することを通じ、社会課題の解決に貢献することです。
一例として、ハルキゲニアラボ事業休眠預金活用事業「日本財団ソーシャルチェンジメーカーズ」を修了したスタートアップを対象にした創業期の社会起業家支援事業(以下、SCM支援事業)などがあります。なかでもSCM支援事業においてにて財務・非財務支援に取り組む過程で、社会起業家の皆さんが共通して直面する課題がいくつか見えてきました。そこで、今後複数回にわたり、本事業の支援チームのメンバーが気づいたことや、起業家の皆さんにお伝えできるノウハウを発信していきたいと考えています。今回はまず、本事業で取り組んでいる支援の内容をまとめました。

社会起業家が乗り越えるべき3つの課題とは?
SIIFでは、社会起業家が共通して直面しやすい課題は、大きく3つあると考えています。
1点目は、目指すインパクトを戦略的に実現できるか。自社の事業を続けていくことで社会課題は本当に解決・改善できるのか?受益者や社会の何がどう変われば課題は解決に向かっていると言えるのか?こうした問いに答えるためには、事業戦略と同様にインパクト創出の面でも戦略を持ち、中間的な成果を把握しながら取り組むことが必要となります。しかし、思い描く社会の変革と足元で手掛けている事業が繋がっているか確信が持てない、社内のメンバーや取引先、投資家に自分たちの狙いを正確に理解してもらえないといったケースがあります。
2点目は、財務的に持続可能なビジネスを構築できるか。社会課題解決に対する思いが強いあまり、事業の展開や持続に必要な成長や収益化を目指し切れなかったり、資金調達の準備に十分なリソースが配分できなかったりといった事例があります。
最後に、3点目は、創業者個人ではなく組織として事業に当たれるか。起業家が持つ大きなビジョンへの共感で仲間を巻き込める社会的企業だからこそ、あらゆる判断が創業者頼みになり、No.2といえる経営メンバーがいない、事業も社会課題も自分ごとにした上で現場を動かせるミドルマネージャーが育てられないといった例が見受けられます。個人技ではなく組織として課題解決に向かうためのチーム作りは、特に成長期に差し掛かった社会的企業が挑戦し、乗り越えていく課題だと感じます。

いずれも、社会課題の解決を徹底的に目指すからこそ生まれる経営課題です。逆に言えば、この3つの経営課題を乗り越えることができれば、社会的企業であることは強固な企業文化の獲得、共感性の高い顧客との持続的な取引、社会課題解決への貢献度を考慮に入れる事業パートナーや投資家への訴求力の強化など、企業としての優位性に転換する可能性があります。

SIIFの支援チームの取り組み
こうした課題を乗り越えていく主役は、当然ではありますが24時間365日事業に向き合っている経営陣とメンバーの皆さんです。それでは支援者は、その傍らでどのようなことができるのか?創業期の社会起業家支援チームでは、日々移り変わる上記の経営課題に対し、支援に必要なポイントを以下のように整理しています。

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まず、「インパクトの最大化」に関しては、インパクト戦略を可視化し定量的に成果を測る枠組みを構築することにより、SIIFが支援する期間において、取り組む事業が社会課題の解決に持続的に貢献できる(と確信が持てる)状態、いわば「プロダクト・インパクト・フィット(PIF)」を達成することを目指します(※)。
そのためには、取り組む社会課題がこれまで解決されてこなかった本質的な要因を見極める「課題構造分析」、どのようなアプローチをとれば課題の焦点に刺さるのかを探る「事業とインパクトの因果関係の可視化」。そして、何の変化を見れば課題解決が進んだと言えるのかを定量化する「インパクト測定」の設計と実行を支援します。
因果関係の可視化やインパクト測定に関しては、ロジックモデルやセオリーオブチェンジ、5-dimentions frameworkといったグローバルで開発が進む手法を用います。とはいえ、シード~アーリー期では経営資源が限られるため、その中でも継続できる方法と体制を模索します。

※「PIF」は定義が定められた概念ではありませんが、製品やサービスが適切な市場に持続的に受け入れられ始めた状況を表す「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」と同様に、インパクト戦略の実現を目指すうえで最初に達成すべきマイルストーンとして直観的に理解しやすいことから、「PMFのインパクト版」として便宜的に使用しています。

続いて、「財務的な持続可能性」の追求に関しては、3段階のステップを踏んで支援しています。起業の「目的」を社会課題解決に置く起業家にとって、事業の成長や収益性の追求は、より幅広い受益者に深く長期間にわたり価値提供するための「手段」として重要です。さらに、社会課題解決型のスタートアップとしてIPO/M&Aを求める投資家から資金を調達する場合は、社会課題解決と並行して事業の急成長・高収益化の「二兎を追う」ことになります。いずれの場合も、財務的な持続可能性を確保することは必須の条件となります。
具体的な支援としては、まずは「財務管理支援」として、自社の商品・サービスは粗利が出せる構造なのか、そもそも毎月の売上と費用、現預金収支を把握できているか、といった数字の見える化から始めます。そのうえで、顧客ターゲットが求める製品を適切な価格で、自社の強みを損ねない販路網で提供できるか、事業計画は現実的な前提に沿って作れているかといった「収益戦略の構築支援」を行います。そして、先行投資に必要な資金を自社の成長モデルや利益構造に見合った投資家や資金提供者から調達できるよう(場合によってはそもそも外部調達を目指すべきなのか?の検討を交えながら、)事業の進捗に応じた「資金調達支援」を段階的に行っていきます。

最後に、「組織のレジリエンス強化」に関しては、起業家個人の志や経営手腕・人的ネットワークに依存せざるを得ない創業期の段階から、チームとしてより大きな事業と課題解決に向き合える組織に脱皮していくプロセスに伴走します。
組織面での課題は特に小規模な組織では属人的な面が強く共通の解を見出すことは難しいものの、SIIFは非営利団体としての特性を活かし、まずは100%起業家側に立とうと努めています。支援の起点は、「今困っていること」を相談できる壁打ち相手と見ていただくことです。更に組織としての成長が進んでいけば、評価システムや採用プロセスなどハード面での「人材マネジメント支援」に加え、取締役会の設置時期や人選など「ガバナンス支援」の面でも協力していきます。

終わりに
創業期の社会起業家支援事業は総勢7名の多様なバックグラウンドを持つチームで、魅力的な社会起業家やメンバーの皆さんから多くを学びながら、以上のような領域で日々支援に取り組んでいます。
経営のあり方に正解はないのと同様に、支援のあり方にも正解はないものと思っています。その中でも再現性がある手法を見出だし共有していくため、皆さんのご経験や知見からも学ばせてください。ご意見やご感想があれば、ぜひお伺いできれば幸いです。


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日本にインパクト投資が根付いていない2013年頃より調査研究に着手し、GSG国内諮問委員会設立や賛同メンバーの招集を皮切りに、インパクト投資における提言書や現状を記した報告書の発行。金融庁共催のインパクト投資における勉強会の開催などインパクト投資の推進のための活動をしています。