2020年度休眠預金活用の実行団体「Local Life Design」。震災後10年の女川で、創業支援の輪を組織する
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2020年度休眠預金活用の実行団体「Local Life Design」。震災後10年の女川で、創業支援の輪を組織する

SIIFは2020年度休眠預金等活用制度「コレクティブインパクトによる地域課題解決事業」の実行団体の一つとして、NPO法人「Local Life Design」を採択しました。東日本大震災から10年、商工事業者の減少が進む宮城県女川地域で、包括的な創業支援を行う「女川地域創業コンソーシアム」を立ち上げる事業です。代表の厨(くりや)勝義さんに、事業の狙いと将来像を伺います。

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(右)Local Life Design 代表 厨 勝義氏
(左)SIIF専務理事 青柳光昌


10年でハードの復興は一段落。次の10年はソフトの復興が必要だ

青柳 厨さんは、東日本大震災の発生直後から、ボランティアとして復興にかかわってこられました。その後、被災地で自ら創業もなさっています。今、改めて「女川地域創業コンソーシアム」を立ち上げる理由を教えてください。

 これまで10年間復興に携わってきた者として、次の10年を考えずにはいられません。発災からしばらくは、なくなってしまった建物やインフラを建て直す、ハード面の復興が先決でした。それから10年かけてインフラは整い、工場も店舗も住居も出来た。これからは、ソフト面が重要です。住む家が出来たなら、次は“住む理由”が必要になる。選ばれる地域になることが、次の10年の課題です。そのための構想が「女川地域創業コンソーシアム」なんです。

青柳 女川ではこれまでにも、いくつか移住者の創業例がありますね。厨さんご自身が手伝ったものもあると聞いています。

 新しい事業が生まれると、必ずまちのことも報道されるんですよ。創業は、創業者だけでなく、まち全体に良い影響を及ぼしてくれることを、これまでの経験で実感しました。

自然発生的な創業支援のエコシステムを、組織として構築し直す

青柳 女川は、商工会が中心になっていち早く復興協議会を立ち上げ、復興庁の「まちなか再生計画」認定第1号となるなど、もともとソフト面でも進んでいるまちだと思います。それだけではまだ足りないのでしょうか。

 おっしゃる通り、女川は民間のパワーが強いまちで、新しいチャレンジを積極的に応援する気風もあります。私自身が創業したときも、知人の創業を手伝ったときも、必要な情報を提供してもらったり、金融機関を紹介してもらったりと、多くの人から支援をいただきました。ただ、最近ちょっと危機感を感じるのは、その顔ぶれが、10年前からあまり変わっていないことなんですよ。今はまだいいけれど、このまま10年経過したら、果たして次の10年も魅力的でいられるのか。

青柳 新しいプレーヤーにも加わってもらいたいですね。

 ハード面の復興を果たしたおかげで、これまで組織や本業にとらわれずに活動してきた人たちが、もとの場所に戻り始めたという側面もあります。まちについての情報を交換し、共有する機会も減っています。発災後数年の、危機感にかられた熱気はひとまず落ち着いて、集中していたものが散らばっていく。当然の傾向ではあるものの、このまま放置していたら、将来の縮小は免れません。

青柳 だから、かつての女川に自然発生的に存在したコレクティブな創業支援のエコシステムを、改めて組織的な創業コンソーシアムとして構築し直そう、ということですね。女川にはもともと、それを可能にする土壌があるわけです。だから、休眠預金活用事業に採択させていただきました。

 これまでは震災直後は、活動する人同士が自然につながっていましたが、最近は新しく参入しようとする人にとっては、入り口どこでキーマンに会えるのかが分かりにくかったと思うんです。でも、きちんと組織化して明確な窓口をつくれば、外から来た人もコンタクトしやすくなるはずです。


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創業支援と地域課題解決の両輪で、域内の経済循環を目指したい

青柳 組織化したうえで、具体的には何をしようとお考えですか。

 一つは、創業の目的に適う支援者・協力者などとのマッチング、不動産物件探しや資金調達のバックアップなど、包括的な創業支援体制の整備です。創業を志す人が、自分のアイデアをスピーディーに実現できる環境をつくりたい。もう一つは、地域の課題解決につながるような事業の呼び込みです。例えば、予防医療のテストフィールドとして女川を選んでもらうようなことが考えられます。

青柳 これからは、“域内経済循環”も重要なキーワードになるのでは。

 そうですね。人口はどうしても減っていくので、お金を稼ぐだけでなく、まちの外に流出するのを抑えることも大切ですだと思います。例えば女川では、温泉を重油で沸かしているのですが、これを地元の薪に替えれば、そのぶんの売り上げが地域内に戻ります。里山の維持にもつながるし、新たな雇用が生まれるかもしれません。

青柳 エネルギーの地産地消は全国的な課題で、まだまだ実践できているところは多くありません。エネルギーを地域内で循環させる仕組みを確立できれば、いい先例になれるでしょう。

 ほかに地域内交通も課題になっています。こうした地域の課題解決と創業を組み合わせて、地域内の経済循環を強くしていければ理想的なんですが。

青柳 現時点で、プロジェクトはどのぐらい進んでいるんですか。

 お手本になる先行事例がないので、関係者に構想を理解していただくのにも時間がかかります。議論を重ねながら、納得と信用を積み上げていくしかありません。ただ、女川ではみんな、ポジティブに受けとめてくれるのがありがたいですね。おおよそのコンセンサスが得られて、詳細を設計していく段階に入ったところです。

青柳 伴走するSIIFに対して、どんな期待をしていますか。

 自分たちが考えていることが本当に公益に資するのか、独善に陥ってはいないか、外部からパートナーとして見守っていただけることが、とてもありがたいです。客観的な視点に立ちつつも応援してくださるので、いつも勇気づけられています。


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2013年頃より調査研究に着手し、GSG国内諮問委員会設立や賛同メンバーの招集を皮切りに、インパクト投資における提言書や現状を記した報告書の発行。金融庁共催のインパクト投資における勉強会の開催などインパクト投資の推進のための活動をしています。