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社会貢献を始める人を支える専門家、フィランソロピー・アドバイザー


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事業本部長代理 藤田 淑子


昨年発行した、「新しいフィランソロピーを発展させるエコシステムに関する調査」で、SIIFは、社会貢献(フィランソロピー)をしたいと考える個人やファミリーの意志や資産をより効果的に生かすため、専門的知識を持ったフィランソロピー・アドバイザーによる支援の必要性を提案しました。フィランソロピー・アドバイザーは、社会貢献事業や寄付を行う意思を持つ人に対して、社会貢献プロジェクトや団体の運営、目的にあった資金提供の方法などをアドバイスし、フィランソロピーの成果を向上させる役割を担う存在です。

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今、フィランソロピーは、事業と同様に、より効果的に、かつ、持続可能な形で行われる傾向が強まっています。具体的には、社会課題の根本原因に作用する支援を戦略的に企画・実行すること、寄付・助成にとどまらず融資や投資を含む柔軟な資金提供を行うこと、インパクト(成果)を重視することなどが求められています。SIIFは、このようなフィランソロピーの世界の潮流に、日本でもいち早く対応できるよう、米国で確かな実績をもつロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズ(RPA)のノウハウを日本に活用する試みを行っています。

プライベートバンキングのアプローチとの共通性
RPAのアドバイザリースタイルの特長は、まず、顧客を深く理解し、顧客の状況に応じた提案を個別にする点にあります。これは、私が前職で経験した、海外のプライベートバンキング(富裕層向け資産運用管理サービス)のアプローチと極めて強い共通性があります。彼らは顧客を良く理解し、顧客の状況にあったテイラーメイドの提案と資産管理サービスを提供しています。また、提案実施後のモニタリングとレビュー(評価と分析、見直し)を大切にしている点も共通します。

プライベートバンキングのアドバイザリー・ステップ例
1. 顧客を理解する(ニーズ、財務状況、リスク許容度)
2. 顧客だけのソリューションを提供する(運用戦略の立案)
3. 提案の実行・モニタリング・レビューの実施

何代にもわたって顧客の資産を守り育てていく、プライベートバンキングで確立したアプローチが、社会貢献を効果的に継続することにおいても有効であることは、大変納得がいきます。

満足のいくフィランソロピーを始めるためのロードマップを公開
RPAは、これからフィランソロピーを始める人が、動機を大切にし、戦略をもって活動に臨む重要性を示したハンドブック「あなたのフィランソロピー・ロードマップ」を作成し、これをベースに顧客を理解し、顧客のフィランソロピーを支援しています。すでに4か国語に訳され世界中で活用されていますが、この度、SIIFは、日本のフィランソロピストの事例を入れた日本版「あなたのフィランソロピー・ロードマップ」を作成し公開しました。このハンドブックは、次の5つの問いから成り立ちます。

1. なぜ、あなたは社会貢献活動をするのですか。その方が、社会貢献をしようと考えた動機を探り、明確にしていきます。代表的な動機として、自分の信念、経験、家族や親族からの影響、次世代へ承継したいこと、何とかしなければならないと思わせた社会課題についての客観的データ、などがあげられます。
2. 社会貢献活動で、どのようなことをしたいですか。取組む社会課題についての質問です。まず、大きな社会課題領域から入り、徐々に焦点を絞り達成したい成果を決めます。
例えば、まず、大きな領域として「教育」を選んだとします。次に、その領域の構成要素に目を向けます。就学前教育、初等・中等教育、高等教育、リカレント(生涯教育)など、があります。そして、さらに、それら中のトピック(教員育成、教育プログラム)や地域、教育機関の種類などによって、具体化していきます。
取組む課題は1つに絞る必要はなく、複数の分野をどのように組み合わせるかも重要です。
3. 変化はどのように起こると思いますか。活動から目標を達成するまでの道筋を描きます。その方法は、ロジックモデルや変化の理論(Theory Of Change)と呼ばれます。
ロジックモデル例:就学前児童へ、あるプログラムを提供する→子供が非認知能力を身に付ける→子供が生きる力を身に付ける→貧困の連鎖が解消する(実際は、もっと複雑です!)
4. 進歩をどのように評価しますか。社会貢献における評価は、複数の変数が存在する事、原因と結果の因果関係を特定する困難さなどから、たいへん複雑ですが、何を成果とするかを特定し、進行過程や結果における評価を試みることは、満足のいく支援を行うために大切です。
5. 誰と一緒に活動しますか。他者と協働することのメリットとデメリットの検討、活動を行うチームや組織の運営の検討も重要です。

このように、何をモチベーションとし、何を成果として生み出したいのか等、一見、初歩的すぎると思えますが、重要な基本を抑えた入門を、RPAは未来のフィランソロピストに提案しています。

社会課題は、複雑な要因が絡み合って起き、簡単に解決するものでも、短期間で解消するものでもありません。初めは強い動機から取り組み始めた活動でも、時間の経過とともに、自分の支援に無力さを感じたり、効果に疑問を感じることもあるかもしれません。しかし、そのように複雑で困難なことも、フィランソロピー・アドバイザーと共に、これらの問いに立ち返りながら考え実行することで、満足のいく支援が実現する可能性が高まると考えます。このガイドブックが、意志ある方が不安なく社会貢献活動を始めるきっかけとなり、プライベートバンカーや弁護士、会計士、税理士の方々が自信をもってフィランソロピストを支えるための一助なればと願っています。

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<お知らせ>フィランソロピーの事例をセミナーでご紹介します!
RPAのシニアバイスプレジデント、ウォルター・スイーツ氏を招き、オンラインセミナーを行います(同時通訳あり)。RPAがこれらのアプローチをどのように活用してフィランソロピストの意義ある活動を支援しているのか、また、SIIFは日本でどのようなサポートをしているのか、それぞれの事例を交えてお話しします。
是非ご参加ください。
◆ 日時: 5月12日(水)(19:00-20:30)
◆ 形式: オンライン
◆ 参加方法: 以下peatixより事前申し込み(参加料無料)

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日本にインパクト投資が根付いていない2013年頃より調査研究に着手し、GSG国内諮問委員会設立や賛同メンバーの招集を皮切りに、インパクト投資における提言書や現状を記した報告書の発行。金融庁共催のインパクト投資における勉強会の開催などインパクト投資の推進のための活動をしています。